
フラッシュバック:災害と心の傷
過去の記憶がよみがえるとは、過去のつらい出来事が、まるで今まさに起きているかのように鮮明に思い出される現象を指します。この現象は、特に大きな災害を経験した人に多く見られます。災害時の記憶が突然、何かの拍子に蘇ってくるのです。それは、地震の激しい揺れかもしれませんし、津波の濁流にのまれる恐怖、あるいは火災の熱気と煙かもしれません。こうした恐ろしい体験が、突然脳裏によみがえり、強い不安や恐怖に襲われます。まるで、再び災害の現場に戻されたかのような感覚に苦しめられるのです。
この現象は、フラッシュバックと呼ばれています。フラッシュバックを引き起こすきっかけは様々です。音や匂い、景色など、私たちの五感を刺激するものが引き金となることが多いです。例えば、救急車のサイレンを聞いて、災害時の緊迫した状況を思い出したり、煙の匂いで火災の恐怖が蘇ったり、工事現場の騒音で地震の揺れを再び感じたりするなど、日常生活の些細な出来事がフラッシュバックの引き金になり得ます。楽しかったはずの日常の中で、突如として過去の悪夢に苛まれる苦しみは、計り知れません。まるで心が締め付けられるような苦痛を感じ、呼吸が苦しくなったり、動悸が激しくなったり、めまいや吐き気などの身体症状が現れることもあります。また、フラッシュバックを恐れるあまり、災害を連想させる場所や状況を避けるようになることもあります。こうした症状が長く続く場合は、専門家の支援が必要となることもあります。