エンドトキシン

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救命治療

エンドトキシンと健康への影響

エンドトキシンは、グラム陰性桿菌という種類の細菌が持つ細胞壁の一部です。この細菌は、棒のような形をした細菌で、細胞壁の構造が特殊なため、染色の方法によって陰性という結果が出ます。この細胞壁には、リポ多糖と呼ばれる物質があり、これがエンドトキシンです。リポ多糖は、糖と脂質がくっついた複雑な構造をしています。細菌が生きている間は、細胞壁の中に隠れていますが、細菌が死ぬか壊れると、外に出てきます。 私たちの体は、細菌などの異物が入ってくると、それらを排除するために免疫という仕組みが働きます。通常、免疫は体を守ってくれる大切な働きをしていますが、エンドトキシンに対しては過剰に反応してしまうことがあります。エンドトキシンが血液中に入ると、免疫の細胞が過剰に活性化され、体に悪影響を与える物質が大量に作られます。これが、発熱や炎症といった症状を引き起こす原因となります。軽い症状では、風邪のような症状が出ますが、大量のエンドトキシンが体内に入ると、敗血症性ショックという重い状態になることもあります。敗血症性ショックは、血圧が急激に下がり、臓器の機能が低下する危険な状態で、命に関わることもあります。 エンドトキシンは、医療現場でも注意が必要な物質です。注射液や点滴液などにエンドトキシンが混入していると、患者さんに悪影響を与える可能性があります。そのため、医薬品や医療機器の製造過程では、エンドトキシンをできるだけ取り除くための対策がとられています。また、水道水や食品などにもエンドトキシンが含まれていることがありますが、通常はごく微量なので、健康に影響を与える心配はありません。エンドトキシンによる影響を正しく理解することは、感染症対策や健康を守る上でとても重要です。