メトヘモグロビン血症:酸素を運べない血液
私たちの体の中には、酸素を全身に運ぶ役割を担う血液が流れています。この血液の中には、赤血球と呼ばれる細胞があり、その中にヘモグロビンというタンパク質が含まれています。ヘモグロビンは酸素と結びつき、肺から取り込んだ酸素を体の隅々まで送り届けるという、大変重要な役割を担っています。このヘモグロビンの中には鉄が含まれており、通常は還元型と呼ばれる状態で存在しています。しかし、様々な要因によってこの鉄が酸化型に変化してしまうことがあります。この酸化型のヘモグロビンはメトヘモグロビンと呼ばれ、酸素と結びつくことができず、酸素を運ぶことができなくなってしまいます。
メトヘモグロビン血症は、このメトヘモグロビンが血液中に増加し、体内の組織に必要な酸素が十分に供給されなくなることで起こる病気です。血液中のメトヘモグロビンの割合が少し増えただけでは、目立った症状が現れないこともあります。しかし、メトヘモグロビンの量が増えるにつれて、皮膚や粘膜が青紫色に変色するチアノーゼと呼ばれる症状が現れます。さらに、酸素不足が深刻になると、頭痛やめまい、息切れ、動悸、意識障害などの症状が現れ、重症化すると命に関わることもあります。
メトヘモグロビン血症は、特定の薬剤の服用や、硝酸塩や亜硝酸塩などを含む食品の摂取、遺伝的な要因など、様々な原因で発生する可能性があります。乳児は特にメトヘモグロビン血症になりやすく、注意が必要です。井戸水に含まれる硝酸塩が原因で、乳児がメトヘモグロビン血症を発症するケースも報告されています。そのため、乳児には井戸水ではなく、硝酸塩濃度が低いとされる水道水を使用することが推奨されています。