体液管理

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救命治療

輸液とリフィリング現象:知っておくべき注意点

災害という非常時には、医療の提供にも様々な制約が伴います。中でも、怪我や病気による体液の喪失に対する適切な対応は、生死を分ける重要な要素となります。この体液の補充には、点滴による輸液療法が欠かせませんが、不適切な管理を行うと、逆に命を脅かす危険性があることを忘れてはなりません。輸液療法は、体内の水分や電解質のバランスを整え、循環機能を維持するために極めて重要です。しかし、過剰な輸液は、肺に水が溜まる肺水腫をはじめとする様々な合併症を引き起こす可能性があります。 災害医療の現場では、リフィリング現象と呼ばれる現象に特に注意が必要です。リフィリング現象とは、血管の外に漏れ出ていた体液が、輸液によって血圧が回復するにつれて血管内に戻ってくる現象のことです。出血や脱水などによって血管外の組織に体液が溜まっている状態から、輸液によって循環機能が改善されると、血管外に溜まっていた体液が血管内に戻ってきます。これがリフィリングです。一見すると体液量が回復しているように見えますが、過剰な輸液を行うと、この戻ってくる体液と相まって体内の水分量が過剰になり、肺水腫などの合併症を引き起こす危険性があります。 災害時の医療現場では、限られた資源と情報の中で迅速な判断が求められます。輸液療法を行う際には、患者の状態を注意深く観察し、適切な輸液量と速度を慎重に判断する必要があります。具体的には、患者の脈拍、血圧、呼吸状態、意識レベルなどを定期的に確認し、必要に応じて輸液量や速度を調整することが重要です。また、尿量や皮膚の turgor(張り)なども重要な指標となります。これらの徴候を綿密に観察することで、リフィリング現象を見極め、合併症の予防に努めることが、災害医療においては不可欠です。