
気づかぬ脅威:不顕性感染とは
病気の原因となる小さな生き物が私たちの体の中に入ってきたとしても、必ずしも熱が出たり、咳が出たりといった分かりやすい変化が現れるとは限りません。自覚できる症状がないにもかかわらず、体の中に病気の原因となる小さな生き物がいる状態を不顕性感染と言います。これは、ちょうど水面下にある大きな氷山のように、感染している本人も気づかないうちに、周りの人たちに病気を広げてしまう可能性があるため、感染症対策を考える上でとても重要な考え方です。
例えば、風邪のようなありふれた病気でも、実は症状が出ていないだけで、ウイルスが体の中に潜んでいる場合があります。このような場合、くしゃみや咳をしないため、一見健康そうに見えますが、知らず知らずのうちに周りの人にウイルスをうつしてしまうかもしれません。また、症状が出る人と出ない人の割合は、それぞれの病気によって大きく異なります。症状が出やすい病気もあれば、ほとんどの人が症状を出さないまま、病気を広げてしまう病気もあります。
このような不顕性感染の厄介な点は、感染に気づきにくく、対策が遅れがちになることです。熱や咳などの症状があれば、すぐに病院に行ったり、家で安静にしたりするなど、自分で対応できます。しかし、症状がない場合は、自分が感染していることに気づかず、普段通りの生活を送ってしまうため、結果的に感染を広げてしまうリスクが高まります。
感染症の流行を防ぐためには、目に見える症状があるかないかに関わらず、一人ひとりが感染対策をしっかりと行うことが大切です。こまめな手洗いとうがいはもちろんのこと、人が集まる場所ではマスクを着用する、定期的に換気を行うなど、基本的な対策を徹底することで、自分自身と周りの人を守ることができます。特に、流行の規模が大きい場合や、感染力が強い病気の場合は、これらの対策をより一層意識する必要があります。