引き抜き損傷

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救命治療

引き抜き損傷:知っておきたい知識

損傷とは、身体の一部が、外からの強い力や衝撃などによって、その本来のはたらきを失ってしまうことを指します。損傷には様々な種類があり、その程度も軽傷から重傷まで様々です。ここでは、特に「引き抜き損傷」と呼ばれる、腕や手に影響を及ぼす重度の損傷について詳しく説明します。 引き抜き損傷は、腕が強い力で引っ張られることで起こります。腕や手の感覚や運動をつかさどる神経の束は、首の骨と胸の骨から出ている複数の神経が合わさってできています。この神経の束は、腕神経叢と呼ばれています。引き抜き損傷では、この腕神経叢の根元が、脊髄から引き抜かれてしまうのです。例えるなら、植物の根が地面から引き抜かれてしまうような状態です。そのため、従来は回復が難しい損傷とされてきました。 引き抜き損傷の主な原因は、交通事故、特にオートバイや自転車の事故です。また、高所からの転落や、スポーツ中の事故などでも起こることがあります。比較的若い世代に多く見られる損傷です。 引き抜き損傷の程度は、引き抜かれた神経の数や範囲によって大きく変わります。軽い場合は、腕や手のしびれなど、一時的な症状で済むこともあります。しかし、重症の場合、腕や手が全く動かなくなったり、感覚がなくなったりするなど、深刻な後遺症が残る可能性があります。日常生活に大きな支障をきたす場合もあります。 引き抜き損傷は、早期の診断と適切な治療が非常に重要です。もしも事故などで腕に強い力が加わった場合は、速やかに医療機関を受診し、専門医の診察を受けるようにしてください。早期に適切な治療を開始することで、後遺症を最小限に抑えることができる可能性が高まります。