水分補給

記事数:(2)

救命治療

気づかぬ水分喪失:不感蒸泄

私たちは生きている限り、常に体から水分を放出しています。のどが渇いたと感じて水を飲む以外にも、皮膚や呼吸を通して、気づかないうちに水分が失われています。これは不感蒸泄と呼ばれ、目に見えない水蒸気が空気中に放出される現象です。まるで、体からゆっくりと湯気が立ち上っている様子を想像してみてください。 この不感蒸泄は、大きく分けて二つの経路があります。一つは皮膚からの蒸発です。汗とは異なり、私たちは常に皮膚の表面から水分を蒸発させています。これは、体の表面を覆う薄い膜を通して、体内の水分が水蒸気として空気中に放出されるためです。もう一つは呼吸による蒸発です。息を吸い込む空気は、肺の中で温められ、水分を含みます。そして、息を吐き出す際に、その水分が水蒸気となって体外へ放出されます。冬に吐く息が白く見えるのは、この水蒸気が冷やされて小さな水滴に変わるためです。 不感蒸泄は、通常は無意識のうちに起こるため、水分を失っていることに気づきにくいです。しかし、この不感蒸泄によって、一日に約500ミリリットルから800ミリリットルの水分が失われていると言われています。これは、大きな湯呑みで3、4杯分に相当する量です。気がつかないうちにこれだけの水分が失われているとは驚きです。 不感蒸泄は、体温調節にも重要な役割を果たしています。汗と同じように、水分が蒸発する際には体の熱が奪われるため、体温が上がりすぎるのを防いでくれます。私たちは、この不感蒸泄のおかげで、常に一定の体温を保つことができているのです。また、皮膚を適切な湿度に保つことで、皮膚の健康維持にも貢献しています。 健康な毎日を送るためには、失われた水分をこまめに補給することが大切です。特に、暑い時期や運動をしている時は、不感蒸泄の量が増えるため、意識的に水分を摂るように心がけましょう。
救命治療

脱水への備え:命を守るための知識

私たちの体は、ほとんどが水でできており、体温を一定に保ったり、体に必要な栄養を運んだり、不要なものを体の外に出したりと、生きていく上で欠かせない働きをしています。この大切な水の量が減ってしまうことを脱水といいます。体の中の水の量は、汗や尿、呼吸などによって常に変化しており、そのバランスが崩れ、体内の水分が不足することで、脱水状態になります。 脱水症の症状は、その程度によって様々です。軽い脱水の場合、まず感じるのは口の渇きです。また、体がだるく感じたり、頭が痛くなったりすることもあります。さらに、めまいや立ちくらみがする、体が熱っぽく感じる、皮膚の弾力がなくなる、尿の量が減る、尿の色が濃くなるといった症状も現れます。 脱水が進むと、症状はさらに悪化します。倦怠感が強まり、意識がぼーっとしたり、混乱したりすることがあります。脈拍が速くなる、呼吸が速くなる、血圧が下がるといった症状も現れ、最悪の場合、意識を失ったり、ショック状態に陥ったりすることもあります。重度の脱水は命に関わる危険な状態です。 特に、乳幼児や高齢者は脱水になりやすいため、注意が必要です。乳幼児は体が小さく、体内の水分量が少ないため、少しの水分不足でも脱水になりやすいです。また、高齢者は体の水分量が少なくなりがちで、のどが渇いたという感覚も鈍くなってくるため、水分を十分に摂らないまま脱水に陥ってしまうことがあります。暑い時期や運動時、発熱や下痢、嘔吐がある時などは、こまめに水分を摂るように心がけ、脱水を予防することが大切です。 もしも脱水の症状が現れたら、涼しい場所に移動し、衣服をゆるめて楽な姿勢で休みましょう。そして、少しずつ水分を補給していきます。スポーツ飲料や経口補水液は、水分と同時に塩分や糖分も補給できるため、効果的です。ただし、重度の脱水症状が見られる場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。