甲状腺被曝

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防災用品

安定ヨウ素剤:放射線事故から身を守る備え

原子力発電所で事故が起きた時、放射性物質が放出されることがあります。その中には、放射性ヨウ素という物質が含まれています。この放射性ヨウ素は、呼吸によって吸い込んだり、食べ物を通して体の中に入ったりすることで、甲状腺という臓器に集まりやすい性質を持っています。甲状腺は、のどぼとけの下にある小さな臓器で、体の新陳代謝などを調整する大切なホルモンを作っています。もし、放射性ヨウ素が甲状腺にたくさん集まると、甲状腺の細胞が傷つけられ、将来、甲状腺がんになる危険性が高まることが知られています。特に、子どもは大人に比べて放射線の影響を受けやすいので、甲状腺がんのリスクはより高くなります。 そこで、放射性ヨウ素による甲状腺への影響を防ぐために、安定ヨウ素剤というものがあります。安定ヨウ素剤に含まれるヨウ素は、私たちが普段、海藻などから摂取しているヨウ素と同じもので、放射線を出さない安全なものです。安定ヨウ素剤を飲むと、甲状腺はヨウ素でいっぱいになります。そうすると、たとえその後、放射性ヨウ素を吸い込んだり食べたりしても、甲状腺はこれ以上ヨウ素を取り込むことができなくなります。つまり、安定ヨウ素剤は、あらかじめ甲状腺をヨウ素で満たすことで、放射性ヨウ素の取り込みを防ぎ、甲状腺を守る薬なのです。家の戸締りをしておくことで泥棒の侵入を防ぐのと似ています。ただし、安定ヨウ素剤は、専門家の指示に従って正しく服用することが大切です。勝手に服用すると、体に思わぬ悪い影響が出ることもあります。
緊急対応

ヨウ素131と防災対策

放射性ヨウ素は、ヨウ素の仲間のうち、放射線を出す性質を持つ物質です。自然界には存在せず、原子力発電所などで人工的に作られます。代表的なものにヨウ素131がありますが、これはウランの核分裂によって生成されます。放射線は目に見えず、臭いもしません。そのため、気づかないうちに体内に取り込んでしまう危険性があります。 放射性ヨウ素は、主に呼吸や食べ物から体内に取り込まれます。空気中に漂う放射性ヨウ素を吸い込んだり、放射性ヨウ素で汚染された食品を摂取することで、体内に蓄積されます。ヨウ素は甲状腺という臓器に集まりやすく、放射性ヨウ素も同様に甲状腺に集中的に取り込まれます。甲状腺に集まった放射性ヨウ素は、放射線を出し続けるため、甲状腺の細胞を傷つけ、将来的に甲状腺がんになるリスクを高める可能性があります。特に子どもは大人に比べて甲状腺への影響を受けやすいので、より注意が必要です。 原子力発電所の事故などで放射性ヨウ素が放出された場合、安定ヨウ素剤を服用することで、甲状腺への放射性ヨウ素の取り込みを阻害することができます。安定ヨウ素剤は、放射性ヨウ素が放出される前に服用することで効果を発揮します。ただし、安定ヨウ素剤は医師の指示に従って服用することが重要です。自己判断で服用すると、副作用が出る可能性があります。 普段の生活で放射性ヨウ素に接する機会はほとんどありません。しかし、原子力災害のような万が一の事態に備えて、放射性ヨウ素の性質や人体への影響、そして安定ヨウ素剤について理解しておくことは大切です。正しい知識を持つことで、不必要な不安を抱えることなく、適切な行動をとることができるようになります。