神経ショックと脊髄ショック
神経ショックは、胸の上部よりも高い位置にある脊髄が損傷することで起きる危険な状態です。交通事故などで脊髄を強く損傷すると、自律神経の働きが乱れてしまいます。自律神経は、心臓の動きや血管の収縮・弛緩など、体の機能を自動的に調節する大切な神経です。この神経の働きが乱れると、血管が広がって血液が体の中心部に集まりにくくなり、全身に十分な血液が巡らなくなります。これを血液分布異常性ショックといい、神経ショックはこの一種です。
神経ショックになると、何よりもまず血圧が下がります。これは、血管が広がって血液が体全体に行き渡らなくなるためです。また、脈拍も遅くなります。通常、血圧が下がると脈拍は速くなるものですが、神経ショックでは自律神経の乱れによって脈拍が遅くなるという特徴があります。さらに、皮膚、特に手足の先の皮膚は温かく、乾燥しているのも特徴です。これは、血管が広がって血流が滞っているにもかかわらず、皮膚に近い血管には血液が流れているためです。
神経ショックは、多くの場合、交通事故などの外傷に伴って起こります。そのため、診断が難しく、他のショック状態、特に失血によるショックと見分けることが非常に重要です。失血によるショックでは、皮膚は冷たく、湿っているのに対し、神経ショックでは温かく、乾燥しているという点に違いがあります。迅速で正確な診断と適切な治療が、救命に不可欠です。脊髄損傷が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診することが大切です。