神経伝達物質

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救命治療

悪性症候群:知っておくべき注意点

悪性症候群は、こころの病気を治す薬によって引き起こされる重い病気です。この病気は、薬を使い始めた時、薬をやめた時、あるいは薬を再び使い始めた時などに起こることがあります。かつては原因が分からず、亡くなる方が多かったため、フランス語で「悪性の症候群」という意味の言葉から名前が付けられました。 高い熱、意識がぼんやりとする、筋肉が硬くなる、筋肉が壊れるといった深刻な症状が現れます。筋肉が壊れると、筋肉に含まれる物質が血液中に流れ出し、腎臓に負担をかけ、場合によっては腎不全を引き起こすこともあります。 この病気は、こころの病気を治す薬だけでなく、パーキンソン病の治療薬、特に動きを良くする薬を減らしたり、中断したりした場合にも発症しやすいことが知られています。これは、脳の中で情報を伝える物質であるドパミンと他の物質とのバランスが急に崩れることが原因だと考えられていますが、詳しい仕組みはまだ分かっていません。 悪性症候群かどうかを判断するには、高い熱、筋肉の硬直、CK値の上昇といった主な症状と、脈が速くなる、呼吸が速くなる、血圧の異常、意識の変化、汗をたくさんかく、白血球の増加といった補助的な症状、そして色々な検査の結果を合わせて判断します。主な症状が3つ、または主な症状が2つと補助的な症状が4つ以上見られる場合に、悪性症候群と診断されます。早期発見と適切な治療が非常に重要です。少しでも異変を感じたら、すぐに医師に相談することが大切です。
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知られざる守護者:一酸化窒素合成酵素

私たちの体の中は、無数の小さな工場が休みなく稼働する、驚くべき世界です。まるで精巧な機械仕掛けのように、様々な物質が作られ、運ばれ、分解されています。その中でも、一酸化窒素合成酵素と呼ばれる酵素は、特に重要な役割を担っています。この酵素は、例えるなら、体内の様々な機能を調整する小さな司令塔のような存在です。 一酸化窒素合成酵素は、エル-アルギニンと呼ばれる物質を材料に、一酸化窒素という物質を作り出します。一酸化窒素は、血管を広げ、血液の流れをスムーズにする働きがあります。これにより、体の隅々まで酸素や栄養が行き渡り、健康な状態を保つことができるのです。また、一酸化窒素は、免疫システムにおいても重要な役割を果たしています。体内に侵入してきた細菌やウイルスを攻撃し、排除するのに役立っているのです。 この一酸化窒素合成酵素は、1988年に発見されました。発見以来、研究が進められ、現在までにNOS-1、NOS-2、NOS-3の三種類があることが分かっています。これらは、まるで工場の部署のように、それぞれ異なる役割を担っています。NOS-1は、主に神経系で働き、記憶や学習に関わっています。NOS-2は、免疫系で働き、炎症反応を制御しています。NOS-3は、血管の内皮細胞に存在し、血管の健康を維持する働きをしています。 このように、一酸化窒素合成酵素は、体にとってなくてはならない、重要な役割を担っています。それぞれの種類が、それぞれの場所で、それぞれの役割を果たすことで、私たちの体は健康に保たれているのです。まるで、たくさんの小さな工場が協力し合って、大きな街を支えているかのようです。今後、更なる研究によって、この小さな司令塔の働きがより詳しく解明され、様々な病気の治療や予防に役立つことが期待されています。