災害時の通信確保:輻輳への対策
混雑、密集を意味する「輻輳(ふくそう)」とは、限られた資源に過剰な負担がかかり、本来の働きができなくなる状態のことを指します。道路や鉄道における交通渋滞をイメージすると分かりやすいでしょう。限られた道路や線路に多くの車が集中することで、スムーズな移動ができなくなります。これと同様に、通信回線においても、多くのアクセスが集中することで輻輳が発生します。
災害発生時は、この通信回線の輻輳が大きな問題となります。大きな地震や台風などの災害が発生すると、多くの人が家族や友人の安否確認をしたり、災害の情報収集をしようとします。そのため、電話やインターネットへのアクセスが集中し、回線がパンク状態になるのです。普段は問題なく利用できる電話が繋がらない、インターネットにアクセスできないといった事態が発生します。これは単に不便なだけでなく、緊急の連絡や情報伝達が滞るという深刻な事態に繋がりかねません。例えば、119番通報が繋がらず、必要な救助要請ができない、あるいは避難情報が伝達されず、避難が遅れるといったことが考えられます。
このような事態を避けるためには、日頃から輻輳への理解を深め、適切な対策を講じておくことが重要です。例えば、災害用伝言ダイヤルや災害用伝言板といった、輻輳しにくい通信手段の利用方法を把握しておきましょう。また、家族や友人との連絡方法を事前に決めておくことも大切です。災害発生直後は、安否確認のための連絡が集中し、回線が繋がりにくくなります。そのため、災害発生直後は緊急時以外の連絡を控えるといった心がけも重要です。一人ひとりが輻輳に対する理解と協力を深めることで、災害時の混乱を軽減し、円滑な情報伝達に繋げることができるのです。