脊髄損傷

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脊髄損傷:知っておくべき基礎知識

脊髄損傷とは、背骨の中を通る神経の束である脊髄が、何らかの原因で傷ついてしまうことを指します。この脊髄は、脳からの指令を全身に伝え、また、全身からの感覚情報を脳に伝えるという、大変重要な役割を担っています。そのため、脊髄が損傷すると、体に様々な影響が現れます。 脊髄損傷の主な原因としては、交通事故や高所からの転落、スポーツ中の事故などが挙げられます。強い衝撃が体に伝わることで、脊髄が圧迫されたり、断裂したりすることがあります。また、病気によって脊髄が損傷するケースも稀にあります。 脊髄が損傷すると、損傷を受けた部位より下の神経の働きが失われ、運動機能や感覚機能に障害が現れます。例えば、手足の麻痺やしびれ、感覚の低下や消失などが起こります。損傷の程度が重い場合は、排泄機能や呼吸機能にも影響が出ることがあります。 脊髄損傷の症状は、損傷の程度や部位によって大きく異なります。損傷が軽度であれば、後遺症が残らずに回復する可能性も高く、適切なリハビリテーションを行うことで、日常生活への復帰も期待できます。しかし、重度の損傷の場合は、長期的な治療や介護が必要となることもあります。 脊髄損傷は、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性のある深刻な怪我です。早期の診断と適切な治療、そして継続的なリハビリテーションが、回復への鍵となります。また、事故の予防も重要です。交通事故や転倒などに注意し、スポーツをする際は、安全に配慮した行動を心がけることが大切です。
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神経ショックと脊髄ショック

神経ショックは、胸の上部よりも高い位置にある脊髄が損傷することで起きる危険な状態です。交通事故などで脊髄を強く損傷すると、自律神経の働きが乱れてしまいます。自律神経は、心臓の動きや血管の収縮・弛緩など、体の機能を自動的に調節する大切な神経です。この神経の働きが乱れると、血管が広がって血液が体の中心部に集まりにくくなり、全身に十分な血液が巡らなくなります。これを血液分布異常性ショックといい、神経ショックはこの一種です。 神経ショックになると、何よりもまず血圧が下がります。これは、血管が広がって血液が体全体に行き渡らなくなるためです。また、脈拍も遅くなります。通常、血圧が下がると脈拍は速くなるものですが、神経ショックでは自律神経の乱れによって脈拍が遅くなるという特徴があります。さらに、皮膚、特に手足の先の皮膚は温かく、乾燥しているのも特徴です。これは、血管が広がって血流が滞っているにもかかわらず、皮膚に近い血管には血液が流れているためです。 神経ショックは、多くの場合、交通事故などの外傷に伴って起こります。そのため、診断が難しく、他のショック状態、特に失血によるショックと見分けることが非常に重要です。失血によるショックでは、皮膚は冷たく、湿っているのに対し、神経ショックでは温かく、乾燥しているという点に違いがあります。迅速で正確な診断と適切な治療が、救命に不可欠です。脊髄損傷が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診することが大切です。
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知っておきたい神経因性膀胱

神経因性膀胱とは、脳と膀胱の間で尿の貯留や排出をコントロールする神経の働きに問題が生じ、膀胱の機能がうまく働かなくなる状態です。健康な状態では、膀胱に尿がたまると脳に信号が送られ、私たちは尿意を感じます。そして、排尿するタイミングで脳から膀胱に指令が送られ、膀胱の筋肉が収縮し、尿道括約筋が弛緩することで尿が排出されます。しかし、神経因性膀胱では、この一連の神経伝達がうまくいかなくなるため、様々な排尿障害が現れます。 神経因性膀胱の原因は様々です。交通事故などによる脊髄損傷は、脳と膀胱をつなぐ神経経路を直接的に損傷するため、神経因性膀胱の代表的な原因の一つです。また、加齢に伴う神経系の変化や、脳卒中、多発性硬化症、パーキンソン病などの脳神経系の病気も原因となります。さらに、糖尿病も神経障害を引き起こし、神経因性膀胱につながることがあります。その他、骨盤内の手術や出産が原因となる場合もあります。 神経因性膀胱の症状は、尿がうまく出せない、尿が漏れてしまう、尿意を感じにくい、あるいは全く感じないなど、人によって様々です。尿がうまく出せない状態が続くと、膀胱内に尿が過剰にたまり、膀胱が膨れ上がってしまうことがあります。また、腎臓に尿が逆流し、腎臓に負担がかかり、腎機能の低下を招く危険性もあります。尿漏れに関しても、常に少量の尿が漏れてしまう場合や、急に大量の尿が漏れてしまう場合など、症状は多岐にわたります。これらの症状は、日常生活に大きな支障をきたし、生活の質を低下させる可能性があります。 排尿に何らかのトラブルを感じたら、すぐに医療機関を受診し、専門医の診察を受けることが重要です。適切な診断と治療によって、症状の改善や進行の抑制が期待できます。早期発見、早期治療が大切です。