脳波

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救命治療

バーストサプレッション:脳波の嵐

私たちの脳は、休むことなく常に活動しています。そして、その活動は微弱な電気信号として捉えることができます。この電気信号を頭皮上に置いた電極で記録したものが脳波です。脳波は、脳の活動状態を映し出す鏡のようなもので、様々な情報を読み解くことができます。 健康な大人が安静にして目を閉じている時、脳波にはα波と呼ばれる比較的規則正しい波形が多く見られます。α波は、リラックスした状態を示す脳波で、8~13ヘルツの周波数帯域を持っています。ところが、目をあけるとα波は減少し、β波と呼ばれる速い波形に変わります。β波は、覚醒して活動している状態を示す脳波で、14ヘルツ以上の周波数を持っています。 眠くなると、α波に混じってθ波と呼ばれる4~7ヘルツのゆっくりとした波形が現れ始めます。そして、深い眠りに入るとδ波と呼ばれるさらに遅い、0.5~3ヘルツの波形が主になります。このように、脳波は意識の状態によって変化します。 脳波検査は、頭に電極を付けるだけで痛みを伴わず、体に負担が少ない検査です。そのため、乳幼児から高齢者まで、幅広い年齢層で利用できます。脳波検査は、てんかんや睡眠障害などの診断に役立ちます。また、意識障害の程度を評価したり、脳死判定にも用いられます。脳の活動を電気信号として捉えることで、私たちは脳の健康状態を調べることができるのです。
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脳死:その定義と法的・臨床的側面

脳死とは、人の全ての脳の働きが完全に、そして永久に失われた状態のことを指します。脳は、私たちの体全体の機能を調節する司令塔のような役割を担っており、呼吸や心臓の拍動、体温の調節など、生命を維持するために欠かせない機能も脳によって制御されています。そのため、脳が完全に機能しなくなると、これらの機能も止まり、自力で生命を維持することができなくなります。 脳死は、単なる意識がない状態とは大きく異なります。意識がない状態とは、脳の一部が損傷を受けたことで意識を失っている状態であり、回復する可能性も残されています。しかし、脳死は脳全体が機能を失っており、二度と回復することはありません。つまり、不可逆的な状態なのです。脳死状態では、人工呼吸器などの医療機器によって心臓が動いている状態を保っているだけで、機器を取り外すと心臓も停止します。 脳死の原因は様々ですが、交通事故などによる頭部への強い衝撃や、病気による脳への酸素供給不足などが主な原因として挙げられます。脳死と診断されるためには、厳格な検査が行われます。深い昏睡状態、自発呼吸の消失、脳幹反射の消失といった臨床症状に加え、脳波検査や脳血流検査などの精密検査の結果を総合的に判断し、最終的に医師複数名によって判定されます。脳死は人の死を判定する上で重要な概念であり、臓器移植の可否を判断する上でも重要な基準となります。