腹部コンパートメント症候群

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救命治療

腹部コンパートメント症候群:緊急事態への対処

お腹の病気の中で、腹部コンパートメント症候群は命に関わることもある危険な状態です。この病気は、お腹の中、つまり腹腔と呼ばれる部分の圧力(腹腔内圧)が異常に高くなることで起こります。まるで風船のように、お腹の中がパンパンに張ってしまうのです。 この圧力の高まりは、様々な原因で引き起こされます。例えば、交通事故などでお腹に強い衝撃を受けたり、お腹の手術後に出血が止まらなかったり、腸が何らかの原因で腫れ上がったりするなどが考えられます。お腹の中で出血したり、臓器が腫れたりすると、その分、お腹の中の容積が減ってしまい、圧力が高まるのです。 腹腔内圧の上昇は、お腹の中の臓器、特に肺や心臓、腎臓などに大きな負担をかけます。横隔膜が圧迫され、肺に十分な空気が入らなくなるため、呼吸が苦しくなります。また、心臓に戻る血液の流れが悪くなり、全身に必要な酸素が行き渡らなくなります。腎臓への血流も悪くなり、尿が作られにくくなるため、老廃物が体内に溜まってしまう危険性も高まります。 早期発見と迅速な対応がこの病気を克服するための鍵です。お腹が膨らんでいる、脈拍が速い、息苦しい、尿が出ない、などの症状が見られたら、すぐに医療機関を受診する必要があります。医療現場では、腹腔内圧を測定したり、画像検査を行ったりして診断を確定します。治療としては、お腹の中の圧力を下げるために、点滴で水分や電解質を補給したり、場合によってはお腹を切開して圧力を逃がす手術を行うこともあります。 腹部コンパートメント症候群は、迅速な対応が必要な病気です。少しでも異変を感じたら、躊躇せずに医療機関に相談することが大切です。