オーバートリアージ:過剰な判定とその影響
大規模な災害が発生すると、想像をはるかに超える数の負傷者が発生し、地域の医療機関は通常の対応能力をはるかに超えた事態に陥ります。病院のベッド数や医療従事者の数、医療機器や医薬品など、あらゆる医療資源が絶対的に不足する状況です。このような極限状態において、限られた資源を最大限に活用し、一人でも多くの命を救うためには、負傷者の重症度に応じて治療の優先順位を決定する必要があります。この優先順位付けをトリアージと呼びます。
トリアージは、刻一刻と変化する災害現場で、迅速かつ正確な判断が求められる極めて重要なプロセスです。限られた時間の中で、多数の負傷者の状態を的確に評価し、適切な治療の優先順位を決定しなければなりません。この判断の良し悪しが、その後の救命率に大きく影響します。トリアージにおいては、一人ひとりの状態を丁寧に観察し、的確な判断を行う熟練した医療従事者の存在が不可欠です。
トリアージには様々な方式が存在しますが、いずれにおいても重要なのは、限られた医療資源を最も効果的に活用することです。その中で、オーバートリアージは、本来よりも重症度を高く判定してしまうことを指します。例えば、軽傷の負傷者を中等症と判断してしまう、あるいは中等症の負傷者を重症と判断してしまうといったケースです。オーバートリアージが行われると、実際には優先度の低い負傷者にも高度な医療処置が提供されることになります。これは、限られた医療資源を本当に必要な重症者に届けることを阻害し、結果として救命率の低下につながる可能性があります。そのため、トリアージ担当者は、冷静かつ的確な判断を下し、オーバートリアージを最小限に抑えるよう努めなければなりません。適切なトリアージの実施は、災害医療において、非常に重要な課題と言えます。