
原子力発電と臨界:安全な運転の仕組み
原子炉における臨界とは、核分裂反応が一定の割合で継続する状態を指します。この状態を理解するには、まず核分裂そのものについて知る必要があります。核分裂とは、ウランやプルトニウムといった特定の物質の原子核が中性子を吸収すると、原子核が分裂し、さらに複数の中性子を放出する現象です。
この新たに放出された中性子が、また別の原子核に吸収されると、さらに核分裂が起こり、これが繰り返されることで連鎖反応が生まれます。臨界状態では、新たに発生する中性子の数と、他の原子核に吸収されたり原子炉から外部へ漏れ出したりする中性子の数がちょうど釣り合っている状態です。このバランスが保たれていることで、核分裂反応は一定の速度で持続し、原子力発電所は安定した熱エネルギーを生み出すことができます。
しかし、もし新たに発生する中性子の数が、吸収や漏出によって失われる中性子の数よりも多くなると、連鎖反応は加速度的に増加します。この状態は超臨界と呼ばれ、制御できない状態に陥る危険性があります。これがいわゆる暴走状態です。反対に、発生する中性子の数が吸収や漏出する中性子の数よりも少なくなると、連鎖反応は徐々に減衰し、最終的には停止してしまいます。この状態は未臨界と呼ばれます。
原子力発電所では、常に臨界状態を維持することが安全な運転に不可欠です。そのため、中性子の数を精密に制御するための様々な装置やシステムが備えられています。これらの装置によって、中性子の吸収量を調整し、連鎖反応の速度を制御することで、安定した運転と安全性の確保が実現されているのです。