脈がない?無脈性電気活動とは
無脈性電気活動(PEA)は、心臓の電気的な活動は認められるにも関わらず、その活動が効果的な血液循環を生み出していない重篤な状態です。心電図モニター上では、心臓の電気信号を示す波形が観察されますが、これらの信号は心臓の筋肉を十分に収縮させることができません。結果として、心臓は血液を全身に送り出すことができず、脈拍が触れられなくなります。
血液の流れが止まるということは、生命維持に欠かせない酸素や栄養素が体の各臓器に届かないことを意味します。これは迅速な対処が必要な緊急事態です。放置すれば、臓器への酸素供給が絶たれ、深刻な機能障害や死に至る可能性があります。
かつては、同様の状態を指す用語として「電動収縮解離(EMD)」が用いられていました。EMDは、心臓の筋肉の収縮が完全に失われた状態を指しますが、PEAはより広範な状態を包含します。具体的には、心筋の収縮が微弱ながら残存している場合や、収縮はしているものの主要な動脈で脈拍が触知できない場合もPEAに含まれます。つまり、EMDはPEAの一つの形態と捉えることができます。
このように、PEAはEMDよりも広い概念であり、臨床現場での診断により適した、より実践的な基準となっています。PEAの原因は多岐にわたり、適切な治療を行うためには、その原因を特定することが重要です。そのため、医療従事者は心電図の波形パターンや患者の状態を注意深く観察し、迅速な原因究明と適切な治療の開始に努めなければなりません。