在宅酸素療法と災害への備え
在宅酸素療法とは、自宅で酸素吸入を行う治療法のことです。慢性閉塞性肺疾患(肺気腫や慢性気管支炎など)や肺結核の後遺症、肺が硬くなってしまう肺線維症、肺がんといった肺の病気が原因で、慢性的に呼吸が苦しい状態になった方々にとって、在宅酸素療法は大切な治療法の一つです。また、生まれつき心臓に病気を持つチアノーゼ型心疾患や、肺の血管の圧力が高くなる特発性肺高血圧症なども、在宅酸素療法が必要となる場合があります。日本では在宅酸素療法を「在宅酸素療法」と呼びますが、「HOT(ホット)」と略されることもあります。
この治療では、細い管である鼻カニューレを用いて、酸素を鼻から体内に取り込みます。肺の病気によって肺の血管の圧力が高くなる状態を肺高血圧症と言いますが、この肺高血圧症は心臓にも負担をかけ、右心不全につながる危険性があります。在宅酸素療法は肺高血圧症の進行を抑え、心臓を守る効果が期待できます。特に、一日に15時間以上といった長時間、酸素吸入を行うことで、生存率の改善に繋がることが知られています。
酸素を供給する装置には、空気中から酸素を集めて濃縮する機械と、液体酸素を使う機械があります。近年では持ち運びできる小型の装置も開発されており、外出時にも酸素吸入を続けることが可能になりました。これにより、患者さんの生活の質の維持向上に役立っています。