Kussmaul徴候

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救命治療

命に関わる心タンポナーデ

心臓は、体中に血液を送るポンプの役割を果たしており、生命維持に欠かせない重要な臓器です。この心臓は、心膜という薄い膜でできた袋に包まれています。通常、この心膜腔には少量の液体が含まれており、心臓の動きを滑らかにする潤滑油のような役割を担っています。しかし、様々な原因によってこの心膜腔に過剰に液体、血液、あるいは空気が溜まってしまうことがあります。これが心タンポナーデと呼ばれる危険な状態です。 心膜腔に溜まった液体や空気の圧力により、心臓は外部から圧迫を受けます。心臓は、筋肉が収縮と拡張を繰り返すことで血液を送り出していますが、圧迫されると十分に拡張することができなくなり、心臓の中に十分な血液を取り込めなくなります。結果として、心臓から送り出される血液の量が減少し、全身の臓器、特に脳や腎臓など、酸素を多く必要とする臓器に十分な血液が供給されなくなります。 心タンポナーデの症状は、息苦しさ、胸の痛み、動悸、めまい、意識の低下など様々です。症状の進行は急激な場合もあれば、ゆっくりとした場合もあり、原因や個人差によって異なります。心タンポナーデは、放置するとショック状態に陥り、死に至る可能性もあるため、緊急性の高い病態です。 心タンポナーデの原因としては、外傷、感染症、悪性腫瘍、自己免疫疾患など様々なものが考えられます。また、心臓手術やカテーテル検査などの医療行為の合併症として発生する場合もあります。迅速な診断と適切な治療が不可欠であり、心エコー検査や胸部レントゲン検査などを行い、心膜腔への液体の貯留や心臓の圧迫の有無を確認します。治療としては、心膜腔に溜まった液体や空気を排出する心膜ドレナージが最も有効な方法です。