pH

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アルカローシス:体の酸と塩基のバランス

私たちの体は、健康を保つために、体の中の酸と塩基の微妙な釣り合いを保つ必要があります。この釣り合いは、血液の酸性度を示す数値(水素イオン指数pH)で測られ、通常は7.35から7.45という狭い範囲に保たれています。この釣り合いが崩れると、様々な健康上の問題が起こることがあります。 アルカローシスは、体の酸と塩基の釣り合いが塩基側に傾き、血液の酸性度を示す数値が7.45を超えた状態を指します。これは、体内で塩基(重炭酸イオンなど)が過剰に蓄積される、あるいは酸(二酸化炭素など)が過剰に失われることで起こります。酸性よりアルカリ性の方が体に良さそうに思われがちですが、釣り合いが崩れると体に悪い影響を及ぼします。適切な酸と塩基の釣り合いは、体内の化学反応を促す物質の働きや、神経の情報伝達、筋肉の収縮など、多くの重要な体の機能に欠かせません。 アルカローシスは、大きく分けて、呼吸性アルカローシスと代謝性アルカローシスに分けられます。呼吸性アルカローシスは、過換気などによって二酸化炭素が過剰に排出されることで起こります。高地への順応ができていない状態で登山すると、酸素不足を補おうとして過呼吸になり、この状態に陥ることがあります。代謝性アルカローシスは、嘔吐や下痢などで胃酸や水分が過剰に失われたり、利尿薬の使用などにより体内の電解質のバランスが崩れたりすることで起こります。 アルカローシスは、放置すると深刻な合併症を引き起こす可能性があるため、適切な診断と治療が重要です。症状としては、めまい、手足のしびれ、筋肉のけいれん、意識障害などがあらわれます。治療としては、原因となっている病気を治療すること、電解質のバランスを正常化すること、呼吸性アルカローシスの場合は二酸化炭素を体内に補充することなどが行われます。日頃から、バランスの良い食事を摂り、適度な運動をすること、過呼吸にならないように注意することなどが、アルカローシスの予防につながります。
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酸素供給とボーア効果:体の巧妙な仕組み

わたしたちは、生きていくために欠かせない空気の中から酸素を取り込んでいます。この酸素は、体中の細胞に届けられ、活動の源となるエネルギーを生み出すために使われます。では、どのようにして酸素は体中に行き渡るのでしょうか。この酸素の運び屋として活躍しているのが、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンというたんぱく質です。 ヘモグロビンは、肺の中で酸素と結びつき、全身を巡る血液の流れに乗って体の隅々まで酸素を運びます。そして、酸素を必要としている細胞の近くにくると、酸素を解き放ちます。まるで宅配便のように、必要な場所に酸素を届けているのです。驚くべきことに、ヘモグロビンはただ酸素を運ぶだけでなく、周りの環境に応じて酸素を運ぶ能力を変化させることができます。例えば、運動などで活発に活動している筋肉は、多くの酸素を必要とします。このような場所では、ヘモグロビンは酸素をより多く解き放つのです。 これは、活動している筋肉では二酸化炭素や熱が多く発生し、周りの環境が酸性に傾くためです。ヘモグロビンは、酸素の少ない、二酸化炭素の多い、そして温度の高い環境では、酸素との結びつきが弱くなり、酸素を放出しやすくなります。反対に、肺の中のように酸素が多く、二酸化炭素が少ない環境では、酸素との結びつきが強くなり、効率よく酸素を取り込むことができます。この、周りの環境に応じて酸素の運搬能力を変化させるヘモグロビンの性質を「ボーア効果」といいます。 まるで、周りの状況を判断して、酸素の供給量を調整する賢いシステムのようです。このボーア効果のおかげで、わたしたちは激しい運動をした後でも、体中に酸素を効率よく供給することができるのです。今回は、この巧妙な仕組みであるボーア効果を中心に、ヘモグロビンの酸素運搬の働きについて詳しく説明していきます。
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アシドーシスと酸塩基平衡

私たちの体は、驚くほど精巧な仕組みによって、常に一定の酸性度を保っています。まるで、綱渡りのように絶妙なバランスの上に成り立っていると言えるでしょう。このバランスこそが、健康を維持するために非常に重要なのです。体液の酸性度はペーハーと呼ばれる数値で表され、通常は7.35から7.45の狭い範囲に保たれています。この範囲は中性である7.0よりわずかにアルカリ性に傾いており、私たちの生命活動はこのわずかな範囲の中で維持されているのです。 このバランスが崩れると、体内の様々な機能に影響を及ぼし、不調が現れることがあります。ペーハーが7.35より酸性側に傾く状態を酸性過剰、反対に7.45よりアルカリ性側に傾く状態をアルカリ性過剰と呼びます。酸性過剰はさらに、血液の酸性度が上がりすぎることで起こる酸血症と呼ばれる状態を引き起こす可能性があり、これは命に関わる危険な状態となることもあります。 では、私たちの体はどのようにしてこの微妙なバランスを保っているのでしょうか?主な役割を担っているのは呼吸と腎臓です。呼吸によって二酸化炭素を排出することで酸を体外へ排出し、腎臓は尿中に酸やアルカリを排出することで体液のペーハーを調整しています。まるでシーソーのように、これらの器官が巧みに連携することで、私たちの体は常に最適な酸性度を保っているのです。この働きのおかげで、私たちは健康な毎日を送ることができるのです。しかし、過度な運動や特定の病気などによって、このバランスが崩れることがあります。日頃からバランスの取れた食事や適度な運動を心がけ、健康な体を維持することが大切です。
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呼吸性アシドーシス:命に関わる危険な状態

呼吸性アシドーシスとは、体の酸と塩基のバランスが崩れた状態、つまり酸塩基平衡障害の一つです。私たちの体は、常に弱アルカリ性に保たれるよう精巧に調整されています。しかし、肺の働きが弱まり、体内の二酸化炭素をうまく排出できなくなると、このバランスが崩れ、血液が酸性に傾いてしまうのです。これが呼吸性アシドーシスです。 私たちの体は、活動エネルギーを生み出す過程で、二酸化炭素という老廃物を作り出します。通常、この二酸化炭素は血液によって肺に運ばれ、呼吸によって体外へ排出されます。ところが、肺炎や気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)といった病気、あるいは薬物中毒や胸部の外傷などによって肺の機能が低下すると、二酸化炭素を十分に排出することができなくなります。すると、血液中に二酸化炭素が過剰に蓄積し、血液の酸性度が高くなってしまうのです。 血液が酸性に傾くと、体内の様々な臓器の働きに悪影響を及ぼします。初期症状としては、頭痛やめまい、倦怠感などが現れます。さらに症状が進むと、意識障害や呼吸抑制といった重篤な状態に陥ることもあります。呼吸性アシドーシスは命に関わる危険な状態であるため、早期発見と適切な治療が非常に重要です。根本原因である肺の機能低下を改善する治療を行うとともに、酸素吸入や、重症の場合には人工呼吸器を用いた治療が行われます。また、血液の酸性度を調整する薬物療法なども行われることがあります。 日常生活では、禁煙を心がけ、呼吸器系の感染症にかからないように注意することが大切です。もし呼吸が苦しい、息切れがするなどの症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。