来院時心肺停止:救命の最前線
防災を知りたい
先生、「来院時心肺停止」って、病院に着いたときには、もう心臓も肺も止まっているっていうことですよね?
防災アドバイザー
そうだね。病院に着いたとき、心臓と肺のどちらか、あるいは両方が止まっている状態のことを指すよ。重要なのは、病院に着くまでに心臓マッサージなどの処置を受けていたかどうかは関係ないということだね。
防災を知りたい
なるほど。でも、昔はDOAって言ってましたよね?
防災アドバイザー
うん。「到着時死亡」を意味するDOAという言葉が使われていた時期もあったね。でも、今は「来院時心肺停止」を使うんだ。なぜなら、到着時に心臓と肺が停止していても、その後の処置で回復する可能性があるからだよ。
来院時心肺停止とは。
病院に着いた時に、心臓と肺のどちらか、または両方が止まっている状態を「来院時心肺停止」と言います。病院に着くまでに心臓マッサージなど蘇生を試みたかどうかは関係ありません。心臓と肺が止まっているかどうかは、①深い昏睡状態、②自発呼吸がない、③首の動脈(乳児の場合は腕の動脈)の脈拍がない、④心電図モニターで、心臓が完全に止まっている(心静止)、心臓が細かく震えている(心室細動)、脈のない速い心拍(無脈性心室頻拍)、または脈のない電気活動、この4つの項目で判断します。以前は「来院時死亡」という言葉が使われていました。
関連する言葉として、「院外心肺停止」は病院の外で心臓と肺のどちらか、または両方が止まっている状態です。「来院直後心肺停止」は病院に着いた直後に心臓と肺のどちらか、または両方が止まっている状態です。「瀕死状態で来院」といった表現は使いません。
来院時心肺停止とは
来院時心肺停止とは、読んで字のごとく、医療機関に到着した時点で、心臓と呼吸の働きが止まっている状態のことです。病院に到着した時が判断の基準となるため、救急車で搬送される途中に心臓や呼吸が止まった場合でも、病院に着いた時点で心臓と呼吸が再び動き出していれば、来院時心肺停止には当てはまりません。また、心臓と呼吸の両方が停止している場合だけでなく、心臓が動いていても呼吸が止まっている場合や、呼吸はしていても心臓が止まっている場合も、来院時心肺停止に含まれます。
この状態は、様々な原因で引き起こされます。例えば、心臓の病気(心筋梗塞や不整脈など)や、呼吸器系の病気(肺炎や喘息発作など)、脳卒中、事故による外傷、中毒などが挙げられます。来院時心肺停止の状態では、一刻も早く救命処置を開始することが重要です。医療機関に到着した時点で既に心肺停止の状態であるため、既に危険な状態にあると言えます。
救命処置としては、まず人工呼吸と心臓マッサージを行い、心臓と呼吸の働きを再開させようと試みます。同時に、心電図モニターで心臓の状態を確認し、必要に応じて電気ショックや薬剤を投与します。これらの処置は迅速かつ正確に行われなければならず、医療従事者の高度な技術と連携が求められます。来院時心肺停止から回復できるかどうかは、心肺停止していた時間の長さや、原因となった病気、患者の年齢や持病など、様々な要因が影響します。残念ながら、多くの場合、来院時心肺停止から社会復帰できるまで回復するのは難しいのが現状です。だからこそ、日頃から健康に気を付け、病気の予防に努めることが大切です。また、周りの人が突然倒れた場合、ためらわずに119番通報し、救急隊員の指示に従って応急処置を行うことが重要です。
項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 医療機関到着時点で心臓と呼吸の働きが止まっている状態 |
基準 | 病院到着時が判断基準(搬送中に停止し到着時に回復していれば該当しない) |
条件 | 心臓と呼吸の両方が停止、またはどちらか一方が停止している状態 |
原因 | 心臓病(心筋梗塞、不整脈など)、呼吸器系疾患(肺炎、喘息発作など)、脳卒中、外傷、中毒など |
救命処置 | 人工呼吸、心臓マッサージ、心電図モニター、電気ショック、薬剤投与 |
予後 | 心肺停止時間、原因、年齢、持病など様々な要因が影響。社会復帰は難しい場合が多い |
予防と対応 | 日頃からの健康管理、病気の予防。周囲の人が倒れた場合は119番通報と応急処置 |
診断の基準
心肺機能停止成人の診断は、以下の四つの大切な点を確認することで行います。どの点も欠かすことなく、全てを満たす場合にのみ、心肺機能停止成人だと診断されます。一つ一つ丁寧に確認し、迅速かつ確実な診断を行い、一刻も早い救命処置につなげることが重要です。
第一に、深い昏睡状態であるかを確認します。呼びかけや刺激に全く反応を示さない状態です。軽く触れたり、大きな声で呼びかけたりしても、目を開けたり、手足を動かしたり、声を出したりするなどの反応が一切見られない状態です。
第二に、自発的な呼吸がないかを確認します。自発的な呼吸とは、自分の意思で呼吸をしている状態のことです。胸やお腹の動きを観察したり、聴診器で呼吸音を聞いたりして、呼吸の有無を確かめます。人工呼吸器を使用している場合は、人工呼吸器を外した状態で確認する必要があります。かすかな呼吸や、不規則な呼吸も認められない状態が、自発呼吸なしの状態です。
第三に、首の頸動脈で脈拍が触れないことを確認します。頸動脈は首の側面にある太い血管で、心臓から脳へ血液を送る重要な血管です。人差し指と中指の腹を当てて、脈の有無を確かめます。乳児の場合は、腕の上腕動脈で脈拍を確認します。数秒間かけて注意深く触れ、脈拍が全く感じられないことを確認します。
最後に、心電図モニターを用いて、心臓の状態を確認します。心静止、心室細動、無脈性心室頻拍、無脈性電気活動のいずれかの状態が認められる必要があります。心電図モニターは心臓の電気的な活動を波形で表示する医療機器で、心臓の活動状態を詳しく把握できます。これらの状態は、いずれも心臓が血液を送り出す機能を失っている状態を示しており、迅速な処置が不可欠です。
診断項目 | 詳細 |
---|---|
深い昏睡状態 | 呼びかけや刺激に全く反応を示さない。目を開ける、手足を動かす、声を出すなどの反応が一切ない。 |
自発呼吸なし | 胸やお腹の動き、呼吸音がない。人工呼吸器使用時は外して確認。かすかな呼吸や不規則な呼吸も認められない。 |
頸動脈の脈拍なし | 首の頸動脈で脈拍が触れない。乳児は上腕動脈で確認。数秒間かけて注意深く触れ、脈拍が全く感じられない。 |
心電図モニターでの確認 | 心静止、心室細動、無脈性心室頻拍、無脈性電気活動のいずれかの状態。 |
関連用語との違い
病院到着時心肺停止(CPAOA)は、似た言葉と混同されやすいので、違いをはっきりさせることが大切です。CPAOAとは、読んで字のごとく、患者が病院に到着した時点で、すでに心臓と肺の働きが止まっている状態を指します。
似た言葉に、院外心肺停止と来院直後心肺停止があります。院外心肺停止とは、病院以外の場所で、例えば自宅や路上などで心臓と肺の働きが止まった状態です。救急隊員などが病院へ搬送するケースがこれに当たります。搬送中に心臓マッサージなどの救命措置が行われることもあります。
一方、来院直後心肺停止は、患者が病院に到着した直後に心臓と肺の働きが止まった状態です。ここでの「直後」の時間の範囲ははっきりとは決められていません。数分後なのか、数十分後なのか、明確な基準がないため、CPAOAと来院直後心肺停止を区別することは難しい場合もあります。例えば、病院の受付を済ませた後、待合室で心肺停止した場合、到着「直後」と言えるのか、判断が難しいところです。CPAOAの場合は、到着時点で既に心肺停止しているため、このようなあいまいさは生じません。
また、以前は到着時死亡(DOA)という言葉がよく使われていました。DOAは、患者が病院に到着した時点で死亡している状態を意味しますが、必ずしも心肺停止状態を指しているとは限りません。例えば、すでに明らかな死亡の徴候(死後硬直など)が見られる場合もDOAと判断されます。そのため、心肺停止状態に限定したCPAOAという言葉が現在では広く使われるようになっています。CPAOAを用いることで、より正確に患者の状態を伝えることができます。
用語 | 説明 | 場所 | 心肺停止のタイミング | 死亡の徴候 |
---|---|---|---|---|
CPAOA (病院到着時心肺停止) | 病院に到着した時点で心肺停止している状態 | 病院 | 到着時 | 限定されない |
院外心肺停止 | 病院以外の場所で心肺停止している状態 | 病院外 (自宅、路上など) | 病院外 | 限定されない |
来院直後心肺停止 | 病院到着直後に心肺停止している状態 | 病院 | 到着直後 (明確な基準なし) | 限定されない |
DOA (到着時死亡) | 病院到着時点で死亡している状態 | 病院 | 到着以前 | 死後硬直など、明らかな死亡の徴候を含む |
救命処置の重要性
突然、心臓や呼吸が止まってしまうことは誰にでも起こりうる深刻な事態です。このような状態は、心肺機能停止と呼ばれ、一刻も早く適切な処置をしなければ、命に関わる重大な事態に陥ってしまいます。救命処置は、心肺機能が停止した人の命を救うための重要な手段です。医学用語では心肺蘇生法と呼ばれ、これは心臓マッサージと人工呼吸を組み合わせた応急手当です。
心肺機能停止の主な原因の一つに、心臓のポンプ機能が正常に働かなくなる状態、つまり心室細動があります。この場合、心臓はけいれんしたような動きになり、血液を送り出すことができなくなります。このような状態に陥った場合、電気ショックを与える自動体外式除細動器(AED)を使用することで、心臓の動きを正常に戻すことが期待できます。AEDは、一般の人でも使用できるよう、操作方法が簡略化されています。
救命処置が必要な状態では、一分一秒を争う非常に緊迫した状況です。救命できる可能性は時間とともに低下していくため、迅速な対応が求められます。心肺蘇生法を開始するまでの時間が短いほど、救命率は高くなります。救急隊が到着するまでの間、一般の人でも心肺蘇生法を行うことで、救命に大きく貢献できる可能性があります。
医療従事者は、専門的な知識と技術に基づき、心肺蘇生法、薬物投与、気道確保など、あらゆる手段を講じて救命に最善を尽くします。また、医療機関では、より高度な救命処置を行うための設備が整えられており、専門の医療チームが24時間体制で対応しています。
一般の人々も、心肺蘇生法を学ぶことで、いざという時に救命に貢献できる可能性が高まります。地域の消防署などで、心肺蘇生法の講習会が定期的に開催されています。これらの講習会に参加することで、救命に必要な知識や技術を習得することができます。日頃から救命処置に関する知識を身につけておくことは、自分自身や周りの人の命を守る上で非常に大切です。
項目 | 内容 |
---|---|
心肺機能停止 | 心臓や呼吸が突然停止する深刻な状態。一刻も早く適切な処置が必要。 |
救命処置(心肺蘇生法) | 心臓マッサージと人工呼吸を組み合わせた応急手当。心肺機能停止した人の命を救うための重要な手段。 |
心室細動 | 心臓のポンプ機能が正常に働かなくなる状態。心臓がけいれんし血液を送り出せなくなる。AEDの使用が有効。 |
AED(自動体外式除細動器) | 心室細動時に電気ショックを与え、心臓の動きを正常に戻すための機器。一般の人でも使用可能。 |
救命処置の重要性 | 救命できる可能性は時間とともに低下するため、迅速な対応が必要。救急隊到着までの間、一般の人でも心肺蘇生法を行うことで救命に貢献できる。 |
医療従事者の役割 | 専門的な知識と技術に基づき、心肺蘇生法、薬物投与、気道確保など、あらゆる手段を講じて救命に最善を尽くす。 |
心肺蘇生法の学習 | 一般の人も心肺蘇生法を学ぶことで、いざという時に救命に貢献できる。地域の消防署などで講習会が開催されている。 |
まとめ
心臓や肺の働きが突然止まることを心肺機能停止といいます。心肺機能停止は、いつどこで誰にでも起こりうる緊急性の高い状態です。医学用語ではCPAOAと呼ばれ、命に関わる重大な事態を引き起こします。心肺機能が停止すると、全身への酸素供給が途絶え、脳を含む臓器に深刻なダメージを与えます。一刻も早い適切な処置が生死を分けるため、迅速な対応が求められます。
医療現場では、心肺機能停止に遭遇した場合、医師や看護師はただちに救命処置を開始します。まず、心臓マッサージを行い、血液循環を維持します。同時に、人工呼吸を行い、肺に酸素を送り込みます。そして、電気ショックや薬剤投与など、高度な医療技術を駆使して心臓の動きを正常に戻そうとします。これらの処置は、医療従事者の高い専門知識と技術、そして冷静な判断力によって支えられています。医療現場での迅速かつ的確な救命処置は、患者の生存率向上に大きく貢献しています。
救命処置は医療従事者だけのものではありません。一般の人々も心肺蘇生法を学ぶことで、救命の輪を広げることができます。心肺蘇生法は、特別な道具を使わずに、胸骨圧迫と人工呼吸によって心臓と肺の働きを補助する技術です。近年では、人工呼吸を省略した胸骨圧迫のみの心肺蘇生法も推奨されています。市民による心肺蘇生法の実施は、救急隊が到着するまでの時間を有効に使い、救命率の向上に繋がることが多くの研究で明らかになっています。
心肺機能停止は、決して他人事ではありません。家庭や職場、学校など、日常生活のあらゆる場面で起こりうる可能性があります。いざという時に適切な行動をとるためには、日頃から防災意識を高め、救命に関する知識を身につけておくことが重要です。地域の防災訓練に参加したり、応急手当講習会を受講したりすることで、いざという時に冷静な判断と行動ができるよう備えましょう。また、AED(自動体外式除細動器)の設置場所や使用方法を把握しておくことも大切です。一人ひとりが救命の意識を持つことで、多くの命を救うことができるのです。
項目 | 内容 |
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心肺機能停止とは | 心臓や肺の働きが突然止まること。CPAOAとも呼ばれる。誰にでも起こりうる緊急性の高い状態。 |
心肺機能停止の危険性 | 全身への酸素供給が途絶え、脳を含む臓器に深刻なダメージを与える。 |
医療現場での対応 | 医師や看護師による迅速な救命処置(心臓マッサージ、人工呼吸、電気ショック、薬剤投与など)。 |
一般市民ができること | 心肺蘇生法(胸骨圧迫、人工呼吸)を学ぶ。胸骨圧迫のみの心肺蘇生法も推奨。AEDの設置場所や使用方法を把握。 |
心肺蘇生法の効果 | 救急隊到着までの時間を有効に使い、救命率の向上に繋がる。 |
心肺機能停止への備え | 防災意識を高め、救命に関する知識を身につける。地域の防災訓練、応急手当講習会への参加。 |