脊髄損傷:知っておくべき基礎知識
防災を知りたい
先生、『脊髄損傷』って災害時に起こるんですか?どんな怪我なのでしょうか?
防災アドバイザー
はい、災害時にも起こります。高い所から落ちたり、交通事故にあったりした時に、背骨の中の神経の束である脊髄が傷つく怪我です。脊髄は脳からの指令を体へ伝える大切な役割をしているんですよ。
防災を知りたい
神経が傷つくとどうなるんですか?
防災アドバイザー
脊髄が傷ついた場所より下の部分が麻痺してしまう可能性があります。手足が動かなくなったり、感覚がなくなったりするんですね。重症の場合は呼吸ができなくなることもあります。だから、災害時は特に注意が必要なんですよ。
脊髄損傷とは。
災害時に起こる怪我の一つに『せきずいそんしょう』というものがあります。これは、背骨の中を通る神経の束である脊髄が傷つくことです。高い所から落ちたり、交通事故などで起こります。せきずいそんしょうは、背骨そのものが傷つく『せきついそんしょう』に伴って起こることが多いですが、背骨に異常がなくても脊髄だけが傷つくこともあります。特に首の部分の脊髄が傷つきやすいです。首の5番目と6番目の骨のあたり、もしくは胸と腰の境目のあたりがよく傷つきます。首の脊髄で重い損傷が起こると、傷ついた場所よりも下の部分で、手足の動きや感覚だけでなく、神経の反射も全てなくなってしまいます。これを『せきずいショック』と呼びます。麻痺の程度によって『完全麻痺』と『不完全麻痺』に分けられ、損傷を受けた高さによって、手足全てが麻痺する『四肢麻痺』と、左右どちらかの手足が麻痺する『対麻痺』に大きく分けられます。最初の治療では、呼吸と血の巡りを管理することがとても大切です。首の上の方の脊髄が傷ついた場合は、すぐに細い管を使って気管に管を入れ、呼吸器をつけなければなりません。神経の働きが乱れて血圧が下がる場合は、点滴と血圧を上げる薬を使います。以前は、怪我をしてから8時間以内に特定の薬を使うことが勧められていましたが、現在ではその効果について議論があります。怪我をした直後から、頭を引っ張って固定する方法などで治療を始め、できるだけ早く手術で骨を固定します。
脊髄損傷とは
脊髄損傷とは、背骨の中を通る神経の束である脊髄が、何らかの原因で傷ついてしまうことを指します。この脊髄は、脳からの指令を全身に伝え、また、全身からの感覚情報を脳に伝えるという、大変重要な役割を担っています。そのため、脊髄が損傷すると、体に様々な影響が現れます。
脊髄損傷の主な原因としては、交通事故や高所からの転落、スポーツ中の事故などが挙げられます。強い衝撃が体に伝わることで、脊髄が圧迫されたり、断裂したりすることがあります。また、病気によって脊髄が損傷するケースも稀にあります。
脊髄が損傷すると、損傷を受けた部位より下の神経の働きが失われ、運動機能や感覚機能に障害が現れます。例えば、手足の麻痺やしびれ、感覚の低下や消失などが起こります。損傷の程度が重い場合は、排泄機能や呼吸機能にも影響が出ることがあります。
脊髄損傷の症状は、損傷の程度や部位によって大きく異なります。損傷が軽度であれば、後遺症が残らずに回復する可能性も高く、適切なリハビリテーションを行うことで、日常生活への復帰も期待できます。しかし、重度の損傷の場合は、長期的な治療や介護が必要となることもあります。
脊髄損傷は、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性のある深刻な怪我です。早期の診断と適切な治療、そして継続的なリハビリテーションが、回復への鍵となります。また、事故の予防も重要です。交通事故や転倒などに注意し、スポーツをする際は、安全に配慮した行動を心がけることが大切です。
項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 背骨の中を通る神経の束である脊髄が傷つくこと。脳からの指令伝達や、全身からの感覚情報伝達という役割を担う。 |
原因 | 交通事故、高所からの転落、スポーツ中の事故など。強い衝撃による脊髄の圧迫や断裂。稀に病気の場合も。 |
影響/症状 | 損傷部位より下の神経の働きが失われ、運動機能や感覚機能に障害が現れる。
症状は損傷の程度や部位によって大きく異なる。 |
治療と回復 | 軽度:後遺症が残らず回復の可能性が高い。適切なリハビリで日常生活への復帰も期待できる。 重度:長期的な治療や介護が必要な場合も。 早期の診断と適切な治療、継続的なリハビリテーションが重要。 |
予防 | 事故の予防が重要。交通事故や転倒などに注意。スポーツ時は安全に配慮。 |
脊髄損傷の種類
脊髄損傷は、その症状の程度によって大きく完全麻痺と不完全麻痺の二種類に分けられます。完全麻痺とは、損傷を受けた部位よりも下の部分の感覚や運動機能が完全に失われた状態を指します。具体的には、損傷を受けた部位より下の部分で、温かさや冷たさ、痛みなどの感覚を感じることができなくなったり、手足を自由に動かすことができなくなったりします。一方、不完全麻痺では、損傷を受けた部位よりも下の部分でも、一部の感覚や運動機能が残存しています。例えば、右半身の感覚は残っているものの左半身の感覚が失われている、といった状態です。
また、脊髄損傷は損傷を受けた部位によっても症状が異なります。頸髄、つまり首の部分の脊髄が損傷を受けた場合は、四肢麻痺、つまり両腕両脚に麻痺が生じる可能性があります。一方、胸や腰の部分の脊髄が損傷を受けた場合は、対麻痺となることがあります。対麻痺とは、両脚に麻痺が生じる状態です。
さらに、脊髄損傷は損傷の程度によって脊髄振盪、脊髄圧迫、脊髄挫傷といった分類もされます。脊髄振盪は、脊髄が一時的にその機能を失う状態ですが、時間の経過とともに回復していくことが一般的です。脊髄圧迫とは、脊髄が何らかの原因で圧迫されることで、神経の通り道が阻害された状態を指します。この圧迫を取り除くことで、神経機能が回復する可能性があります。脊髄挫傷とは、脊髄の組織の一部が損傷を受けた状態を指し、重度の後遺症が残る可能性が高い損傷です。このように脊髄損傷は、損傷の程度や部位、種類によって症状や予後が大きく異なります。そのため、適切な診断と治療が非常に重要となります。
分類 | 説明 | 症状 |
---|---|---|
麻痺の程度による分類 | 完全麻痺 | 損傷部位より下の感覚・運動機能が完全に失われる |
不完全麻痺 | 損傷部位より下の感覚・運動機能の一部が残存 | |
損傷部位による分類 | 頸髄損傷 | 四肢麻痺(両腕両脚に麻痺) |
胸髄・腰髄損傷 | 対麻痺(両脚に麻痺) | |
損傷の程度による分類 | 脊髄振盪 | 脊髄機能の一時的な喪失、回復傾向 |
脊髄圧迫 | 圧迫による神経伝達阻害、圧迫除去で回復の可能性 | |
脊髄挫傷 | 脊髄組織の損傷、重度後遺症の可能性 |
発生しやすい部位
脊髄損傷は、体のどこでも起こりうるものですが、特定の部位で発生しやすいことが知られています。その中でも特に注意が必要なのが、首の部分にある第五頸椎と第六頸椎の間、そして背中の下部にあたる胸椎と腰椎の移行部です。
第五頸椎と第六頸椎の間は、ちょうど首の付け根にあたり、頭を支える重要な役割を担っています。この部位は、構造上、比較的可動性が高い一方、外部からの衝撃を吸収しにくいという特徴があります。そのため、交通事故などで強い力が加わると、この部分が損傷しやすく、手足の麻痺やしびれといった重篤な症状が現れる可能性があります。
また、胸椎と腰椎の移行部は、上半身と下半身の境目に位置し、体の重みを支えるとともに、前後左右に体を曲げる際に重要な役割を果たしています。この部位も同様に、外部からの衝撃に弱く、高所からの転落や落下物による衝撃などで損傷しやすい傾向があります。損傷した場合には、下半身の麻痺や排尿・排便障害といった深刻な後遺症が残る可能性も懸念されます。
これらの部位は、脊髄の構造上、外部からの力に脆弱であるため、損傷のリスクが高いと言えるでしょう。脊髄損傷は、日常生活に大きな支障をきたす重篤なものです。交通事故や転倒事故など、強い衝撃を受ける可能性のある場面では、より一層の注意を払い、安全な行動を心がけることが大切です。
部位 | 特徴 | 損傷原因 | 症状 |
---|---|---|---|
第五頸椎と第六頸椎の間(首の付け根) | 頭を支える、可動性が高い、外部からの衝撃を吸収しにくい | 交通事故など | 手足の麻痺やしびれ |
胸椎と腰椎の移行部(上半身と下半身の境目) | 体の重みを支える、前後左右に体を曲げる、外部からの衝撃に弱い | 高所からの転落、落下物など | 下半身の麻痺、排尿・排便障害 |
初期治療の重要性
災害時における怪我の中でも、脊髄損傷は生命に関わる重篤な状態を引き起こす可能性があります。初期治療の良し悪しは、その後の人生を大きく左右すると言っても過言ではありません。適切な処置を早期に行うことで、後遺症を軽くし、社会復帰への道筋を作る第一歩となるのです。
脊髄損傷では、呼吸機能と血液循環の維持が最優先事項となります。特に頸髄の高い位置が損傷した場合、呼吸をつかさどる筋肉が麻痺し、自力で呼吸することが困難になる場合があります。このようなケースでは、気管に管を挿入して人工呼吸器を装着するなどの処置が必要不可欠です。また、神経原性ショックと呼ばれる状態にも注意が必要です。これは、損傷によって神経の働きが乱れ、血管が広がり血圧が急激に低下する現象です。脈拍が遅くなる、意識が薄れるなどの症状が現れ、生命の危機に直結するため、迅速な輸液や昇圧剤の投与といった処置が必要です。
これらの初期治療は、現場での応急処置と医療機関での専門的な治療の両方で重要です。救急隊員による適切な体位保持や酸素投与などの応急処置は、病院に到着するまでの時間を繋ぎ、容態の悪化を防ぎます。その後、医療機関においては、損傷部位の特定や神経機能の評価に基づき、より専門的な治療が行われます。初期治療の適切な実施は、後遺症を最小限に抑え、寝たきりや車椅子生活を避ける可能性を高めるだけでなく、患者さんの社会復帰の可能性を広げることにも繋がります。一刻も早い医療機関への搬送と、適切な初期治療こそが、脊髄損傷の患者さんの未来を守る上で最も大切な要素と言えるでしょう。
手術療法と保存療法
脊髄損傷は、交通事故や転落事故など、強い衝撃によって脊髄が傷つくことで起こり、手足の麻痺やしびれ、排尿・排便障害といった重い後遺症を残す可能性のある深刻な怪我です。治療には大きく分けて手術療法と保存療法の二つの方法があります。保存療法は、手術を行わずに薬物療法や理学療法、装具療法などを用いて症状の改善を目指す治療法です。脊髄損傷の場合、損傷部位を安定させ、脊髄への負担を軽減するために、まずは安静を保つことが重要になります。具体的には、頭蓋骨にピンを挿入し、牽引装置を用いて頭部を固定することで、脊髄のずれや圧迫を防ぎます。これは、損傷直後や手術が難しい場合に特に有効な方法です。また、損傷の程度に応じて、コルセットや装具を用いて脊柱を外部から固定し、安定性を高めることもあります。これらの保存療法は、主に損傷の程度が軽く、手術の必要がない場合や、全身状態が悪く手術に耐えられない場合に選択されます。
一方、手術療法は、外科的に脊髄の状態を改善する治療法です。脊髄損傷の場合、脊椎の骨折や脱臼を治し、脊髄への圧迫を取り除くために手術が行われます。具体的には、金属製のプレートやネジなどを用いて、不安定な脊椎を固定する手術が行われます。これにより、脊髄の更なる損傷を防ぎ、神経の回復を促すことが期待できます。手術の時期は、損傷の状態だけでなく、患者の年齢や合併症の有無など、全身状態を総合的に判断して決定されます。損傷が重度の場合や、保存療法で効果が見られない場合は、手術療法が選択されることが多いです。保存療法と手術療法のどちらを選択するかは、損傷の程度、患者の状態、医療機関の設備などを考慮して、医師とよく相談の上で決定されます。早期に適切な治療を開始することで、後遺症を最小限に抑えることができるため、脊髄を損傷した可能性がある場合は、速やかに専門の医療機関を受診することが非常に重要です。
治療法 | 概要 | 具体的な方法 | 適用 |
---|---|---|---|
保存療法 | 手術を行わずに症状の改善を目指す | ・薬物療法、理学療法、装具療法 ・頭蓋骨牽引:損傷部位の安定、脊髄への負担軽減 ・コルセットや装具:脊柱の固定 |
・損傷が軽く、手術の必要がない場合 ・全身状態が悪く、手術に耐えられない場合 |
手術療法 | 外科的に脊髄の状態を改善する | 金属製のプレートやネジなどを用いて脊椎を固定:脊髄への圧迫除去、神経回復促進 | ・損傷が重度の場合 ・保存療法で効果が見られない場合 |
薬物療法
脊髄損傷は、神経に大きな損害を与えるため、後遺症に苦しむ方も少なくありません。そのため、様々な治療法が研究、開発されています。その一つに薬物による治療があります。かつては、メチルプレドニゾロンという薬を大量に使う治療法が広く行われていました。これは、損傷した脊髄の炎症を抑え、神経の保護効果を期待したものです。しかし、近年の研究では、その効果に疑問が投げかけられており、現在では、必ずしも第一選択の治療法とはみなされていません。
薬を使う治療は、患者の状態や、脊髄の損傷具合によって、それぞれ適切な方法が選択されます。例えば、損傷直後には、炎症や腫れを抑える薬が使われます。また、損傷後しばらく経ってからは、痛みやしびれ、筋肉の硬直といった後遺症に対する薬が使われることもあります。具体的には、痛みを抑える薬、筋肉の硬直を和らげる薬、膀胱や腸の機能を調整する薬など、様々な種類の薬が用いられます。
薬物療法は、あくまでも損傷した脊髄を直接治すものではなく、痛みや麻痺などの症状を和らげたり、合併症を防いだりする対症療法です。脊髄損傷の治療においては、薬物療法だけでなく、リハビリテーションや手術など、様々な治療法を組み合わせて、患者さん一人ひとりに合った最適な治療を提供することが重要です。近年では、再生医療や神経保護薬など、新たな治療法の開発も進んでおり、今後の発展が期待されています。
種類 | 内容 | 備考 |
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薬物療法 | 損傷直後の炎症・腫れを抑える薬、痛み・しびれ・筋肉の硬直を抑える薬、膀胱や腸の機能を調整する薬など | 対症療法であり、脊髄を直接治すものではない。 |
かつての薬物療法 | メチルプレドニゾロン大量投与 | 神経保護効果を期待したが、現在は疑問視されている。 |
その他の治療法 | リハビリテーション、手術、再生医療、神経保護薬 | 薬物療法と組み合わせて、患者ごとに最適な治療を行う。 |