地震波の基礎知識：種類と特徴

地震波の基礎知識：種類と特徴

地震波とは

地震とは、地球内部の岩盤が急にずれ動くことで大地が揺れる現象です。この時、ずれ動いた場所から四方八方に振動の波が伝わります。これが地震波です。地震波は、まるで池に石を投げ込んだ時に広がる波紋のように、震源からあらゆる方向へ広がっていきます。

地震波は、伝わる道筋によって大きく２種類に分けられます。一つは地球の内部を伝わる実体波です。実体波はさらに、伝わり方の違いから縦波と横波の２種類に分けられます。縦波は、波の進む方向と地面の揺れる方向が同じ波で、別名Ｐ波とも呼ばれます。Ｐ波は伝わる速度が速く、地震発生時に最初に到達する波です。一方、横波は波の進む方向と地面の揺れる方向が直角に交わる波で、別名Ｓ波とも呼ばれます。Ｓ波はＰ波より伝わる速度が遅く、Ｐ波の後に到達します。Ｓ波は地面を上下左右に大きく揺らすため、建物の被害に大きく影響します。

もう一つは地球の表面に沿って伝わる表面波です。表面波もまた、揺れ方の違いからラブ波とレイリー波の２種類に分けられます。ラブ波は、地面を水平方向に揺らす波です。レイリー波は、地面を円を描くように揺らす波です。表面波は、実体波よりも伝わる速度は遅いですが、揺れの範囲が広く、大きな被害をもたらすことが多いです。

私たちが実際に感じる地震の揺れは、これらの様々な種類の地震波が複雑に組み合わさったものです。震源からの距離や地盤の硬さ柔らかさなどによって、それぞれの波の伝わる速度や揺れの大きさが変化するため、同じ地震でも場所によって揺れ方が異なります。また、地震の規模を示すマグニチュードも地震波の大きさから計算されます。

実体波：P波とS波

地震が発生すると、大地は激しく揺れます。この揺れは地震波と呼ばれる波によって伝わります。地震波には大きく分けて実体波と表面波の二種類があります。実体波は地球の内部を伝わる波で、P波とS波の二種類があります。

P波は、波の進む向きと同じ向きに地面が振動する波です。これを縦波とも言います。ばねを想像してみてください。ばねを縮めて手を離すと、縮んだ部分が順番に伝わっていきます。P波も同じように、地面が押したり引いたりしながら早く伝わります。音も空気の振動が伝わる縦波なので、P波も音と同じように固体、液体、気体のすべてを伝わることができます。

一方、S波は、波の進む向きと垂直な向きに地面が振動する波です。これを横波とも言います。縄跳びを思い浮かべてください。縄を上下に振ると、波が横方向に伝わっていきます。S波も同じように地面が上下左右に揺れながら伝わります。ただし、S波は固体の中だけを伝わることができます。液体や気体の中では伝わりません。

地震が発生すると、まずP波が伝わってきて、小さな揺れを感じます。これを初期微動と言います。少し遅れてS波が到達すると、大きな揺れを感じます。これが主要動です。P波はS波よりも速く伝わるため、この時間差を利用して緊急地震速報が発信されます。また、S波はP波よりも揺れが大きいため、建物などに被害をもたらす主な原因となります。P波とS波の伝わる速さや伝わる物質の違いを調べることで、地球の内部構造を理解する重要な手がかりを得ることができます。

表面波：レイリー波とラブ波

地震は大地を揺るがし、様々な種類の波を発生させます。これらの波の中で、表面波と呼ばれるものは、地表に沿って伝わり、私たちの生活に大きな影響を及ぼします。表面波には、レイリー波とラブ波の二種類があり、それぞれ異なる揺れ方を示します。

レイリー波は、地面を上下に揺らしながら、波の進行方向とは逆向きに回転する動きをします。池に石を投げ込んだ際に広がる波紋を想像してみてください。水面が上下に動きながら、波紋の中心から外側へ広がる様子と似ています。レイリー波は、表面波の中で最も進む速度が遅く、揺れの周期が長いため、ゆったりとした大きな揺れを感じさせます。このため、建物は大きく揺さぶられ、倒壊などの被害を受けやすくなります。

一方、ラブ波は、地面を水平方向に揺らす波で、S波と呼ばれる地震波の一種です。S波は、ねじれの動きを伝える波で、ラブ波はこの動きが地表付近に限定されたものと考えられています。ラブ波はレイリー波よりも速く伝わり、高層ビルのような高い建物に大きな影響を与えます。高い建物は、特定の周期で揺れやすい性質があり、ラブ波の周期と建物の揺れやすい周期が一致すると、共振と呼ばれる現象が起こります。共振が起こると、建物の揺れは増幅され、大きな被害につながる可能性があります。

これらの表面波は、震源から遠く離れた場所でも大きな揺れを発生させる特徴があります。地震の発生場所から遠く離れていても油断せず、家具の固定や避難経路の確認など、日頃からの備えが重要です。

地震波の速度と揺れの大きさ

地震が発生すると、大地を揺るがす波、すなわち地震波が四方八方に広がっていきます。この地震波の速度と揺れの大きさには、様々な要因が複雑に関係しています。

まず、地震波の種類によって速度が大きく異なります。初期微動を起こすP波は、縦波と呼ばれ、物体を押したり引いたりしながら伝わる性質を持っています。このP波が最も速く、コンクリートの中では秒速数キロメートルもの速度で伝わります。次に速いのがS波で、これは横波と呼ばれ、物体を横に揺らしながら伝わる性質を持っています。P波に遅れて到達し、主要動と呼ばれる大きな揺れをもたらします。そして、最も遅いのが表面波です。表面波は、地面の表面に沿って伝わる波で、地面を上下左右に大きく揺らし、建物を大きく揺さぶるため、被害を大きくする原因となります。

地震波の伝わる速度は、地盤の硬さにも大きく左右されます。硬い岩盤の中では地震波は速く伝わりますが、柔らかい堆積層の中では遅くなります。同じ地震でも、岩盤の上にある建物と、砂地の上に建っている建物では、揺れの大きさが全く異なる場合があります。さらに、震源からの距離も揺れの大きさに影響を与えます。震源から遠いほど、地震波は広範囲に拡散し、エネルギーが減衰するため、揺れは小さくなります。

このように、地震波の種類、地盤の性質、震源からの距離など、様々な要因が複雑に絡み合い、私たちが感じる揺れの大きさが決まります。ですから、同じ規模の地震であっても、場所によって揺れ方が大きく異なるのです。自分の住んでいる地域の地盤の性質を理解し、地震への備えを万全にしておくことが大切です。

地震波の活用

地震が起きた際に発生する波、地震波は、私たちの暮らしを守る上で、そして地球の謎を解き明かす上で、様々な形で役立てられています。まず、地震発生直後の速報に欠かせないのが地震波です。世界中に張り巡らされた地震計のネットワークが、常に地面の揺れを監視しています。地震が起きると、この地震計が捉えた地震波の情報が瞬時に集められ、地震の規模や震源地が計算されます。この情報は、緊急地震速報として私たちに伝えられ、身を守る貴重な時間を稼ぐことができます。

また、地震波は地球の内部構造を調べるための、いわば「地球のレントゲン写真」のような役割も担っています。地震波には、押し波であるＰ波と、揺れ波であるＳ波の二種類があり、これらの波は伝わる速度が違います。さらに、Ｓ波は液体の中を伝わりません。この性質を利用することで、地球内部の層構造や、それぞれの層が固体なのか液体なのかを推定することができるのです。地球の中心部に液体状の外核が存在することを明らかにしたのも、地震波の研究の成果です。

さらに、地震波は資源探査にも役立っています。人工的に小さな地震を起こし、その際に発生する地震波が地下でどのように反射したり屈折したりするかを調べます。これを人工地震探査と呼びます。地下の構造によって地震波の伝わり方が変化することを利用して、地下資源のありかや埋蔵量を推定することができるのです。このように、地震波は地震災害の軽減に役立つだけでなく、地球科学の研究や資源探査など、様々な分野で私たちの暮らしを支えています。