偶発性低体温症:命を守る知識

偶発性低体温症:命を守る知識

防災を知りたい

先生、『偶発性低体温症』って、ただ寒いところにいると起こるものなんですか?

防災アドバイザー

いい質問だね。ただ寒いところにいるだけとは限らないんだ。例えば、水難事故にあったり、お酒を飲みすぎたり、怪我をした時にも起こることがあるんだよ。

防災を知りたい

え、そうなんですか? なんで怪我で体温が下がるんですか?

防災アドバイザー

怪我や病気で体の機能が弱まると、体温を保つのが難しくなるからなんだ。他にも、高齢の方や小さな子供も体温調節が苦手なので、なりやすいんだよ。

偶発性低体温症とは。

事故や思いがけない出来事で体温が下がることを『偶発性低体温症』と言います。体温が35度以下になると低体温症になりますが、麻酔などで意図的に体温を下げる場合と区別するために、偶発性という言葉を使います。体温が下がる原因は、寒い場所にいる、熱が逃げる、熱を作れない、体温調節がうまくいかないなどがあり、これらが一つ、あるいはいくつか重なって起こります。山で遭難した時や水難事故、お酒に酔いすぎた時、薬物中毒、脳の血管の病気、頭のけが、小さな子供や高齢の方、路上生活をしている方、広い範囲のやけど、皮膚の病気、ホルモンを作る臓器(甲状腺、脳下垂体、副腎など)の働きが落ちた時、血糖値や栄養状態が悪い時などになりやすいです。体温の低さで35度から32度を軽度、32度から28度を中等度、28度以下を高度と分けます。軽度の低体温症では、筋肉が震えますが、中等度では震えが止まり、高度になると筋肉が硬くなります。体温が下がると、神経はぼんやりした状態から意識がなくなる状態になり、呼吸は速い呼吸からゆっくりした呼吸、そして呼吸が止まる状態になり、血液の流れは速い脈からゆっくりした脈になり、そして心臓が止まるというように、どれも働きが抑えられます。心電図では、T波の逆転、PQ・QR・QTSの延長、色々な不整脈などが見られますが、特にQRS群の終わりに出る陽性動揺はJ波(オズボーン波)としてよく知られています。30度以下になると心臓の筋肉が刺激にとても敏感になり、命に関わる不整脈が起こりやすくなるため、患者さんを扱う時は細心の注意が必要です。

低体温症とは

低体温症とは

低体温症とは、体の奥深くの体温、具体的には直腸や食道で測る体温が35度より低くなった状態のことを指します。健康な人の体温は、通常36度台後半から37度台前半で維持されていますが、様々な要因でこの体温が低下し、35度を下回ると低体温症と診断されます。体温が下がると、体の様々な機能が正常に働かなくなります。

低体温症は、大きく分けて二つの種類があります。一つは医療行為として意図的に体温を下げる場合で、心臓手術など特定の医療行為において用いられます。もう一つは、事故や予期せぬ出来事によって体温が低下する「偶発性低体温症」です。この偶発性低体温症は、登山中の遭難や水難事故といった状況で起こりやすく、屋外で長時間寒さにさらされることで発症リスクが高まります。

また、屋外だけではなく、室内でも低体温症になる可能性があります。特に、暖房の効きが悪い部屋で薄着で過ごしたり、冷たい水に濡れたまま放置されたりすると、体温が奪われ低体温症を引き起こすことがあります。さらに、泥酔状態や薬物中毒、脳卒中、頭部の怪我なども、体温調節機能の低下を招き、低体温症の要因となることがあります。

乳幼児や高齢者は、体温調節機能が十分に発達していない、あるいは衰えているため、低体温症になりやすい傾向があります。また、路上生活を送っている方々は、寒さにさらされる時間が長く、栄養状態も悪いことが多いため、低体温症のリスクが非常に高くなります。このような人々に対しては、周囲の特別な配慮と注意が必要です。普段から周りの方の様子に気を配り、少しでも異変を感じたら、すぐに対応することが大切です。

分類 説明 要因 リスクの高い人々
低体温症 直腸や食道で測る体温が35度より低くなった状態 様々な要因で体温が低下 乳幼児、高齢者、路上生活者
種類 医療行為による低体温症 心臓手術など特定の医療行為
偶発性低体温症 事故や予期せぬ出来事によって体温が低下 登山中の遭難、水難事故、屋内外での寒さ、泥酔、薬物中毒、脳卒中、頭部外傷

低体温症の段階

低体温症の段階

低体温症は、体の内部の温度が下がることで起こる危険な状態です。体温の低下具合によって、軽度、中等度、高度の三段階に分類され、それぞれの段階で異なる症状が現れます。

まず、軽度の低体温症では、体温が35度から32度くらいまで下がります。この段階では、体が震えるのが特徴的な症状です。これは、筋肉を動かすことで熱を作り出し、体温を維持しようとする体の自然な反応です。その他、皮膚の色が青白くなる、唇や指先がしびれる、といった症状が現れることもあります。

次に、中等度の低体温症では、体温が32度から28度くらいまで下がります。軽度で見られた震えは止まり、意識がはっきりしなくなります。判断力が鈍り、正常な行動がとれなくなるため、周囲の助けが必要になります。また、脈拍や呼吸が遅くなり始め、体の動きも緩慢になります。

最後に、高度の低体温症では、体温が28度以下まで低下します。この段階では、意識を失い筋肉が硬直します。脈拍や呼吸はさらに弱まり、心臓が停止する危険性も高まります。生命に関わる深刻な状態であり、一刻も早く医療機関での治療が必要です。

このように、低体温症は体温の低下が進むにつれて症状が悪化し、最終的には死に至る可能性もあります。早期発見と適切な処置が非常に重要です。特に、寒冷地での活動や水に濡れた状態での長時間の滞在は、低体温症のリスクを高めるため注意が必要です。

段階 体温 症状
軽度 35℃〜32℃ 震え、皮膚の蒼白、唇や指先のしびれ
中等度 32℃〜28℃ 震えの停止、意識混濁、判断力低下、脈拍・呼吸の低下、動作緩慢
高度 28℃以下 意識消失、筋肉硬直、脈拍・呼吸の著しい低下、心停止の危険性

低体温症の原因

低体温症の原因

低体温症は、体の深部体温が35度未満に低下した状態を指し、生命に危険が及ぶこともあります。その原因は大きく分けて四つあります。

一つ目は、寒冷な環境への曝露です。冬の屋外はもちろん、夏でも冷房の効いた室内や、水温の低いプールなどで長時間過ごすことで体温が奪われ、低体温症になる危険性があります。特に、気温が氷点下の環境では、短時間でも低体温症に陥ることがあります。また、風があると体感温度が下がるため、より注意が必要です。

二つ目は、水濡れや風の影響です。衣服が濡れると、乾いた状態に比べて熱が奪われやすくなります。雨や汗で体が濡れたまま活動すると、低体温症のリスクが高まります。さらに、風が吹くと、体の周りの暖かい空気が吹き飛ばされ、熱が奪われる速度が速まります。そのため、水濡れと風の組み合わせは、低体温症の大きな原因となります。

三つ目は、体内の熱生産量の低下です。人間は、食べ物から得た栄養をエネルギーに変換することで熱を生み出しています。そのため、栄養不足や低血糖の状態では、十分な熱を産生することができず、低体温症になりやすくなります。また、高齢者や乳幼児は、体温調節機能が未発達、あるいは低下しているため、熱を生み出す能力が低い傾向にあります。

四つ目は、体温調節機能の障害です。人間の体は、自律神経系や内分泌系によって体温を一定に保つよう調節しています。しかし、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能低下症などの内分泌疾患、あるいは一部の薬の副作用によって、この体温調節機能がうまく働かなくなることがあります。その結果、体温が下がりやすく、低体温症を起こしやすくなります。これらの原因は単独で、あるいは複数組み合わさって低体温症を引き起こすため、日頃から注意が必要です。

低体温症の原因

低体温症の症状

低体温症の症状

低体温症は、体の内部の温度が35度未満に下がった状態を指し、様々な段階の症状が現れます。初期症状として、強い寒気や震えが起こります。これは、体が熱を作りだそうと懸命に働いている証拠です。同時に、皮膚の表面の血管が縮んで血流が減るため、皮膚は青白くなり、特に唇や爪は紫色に変色することがあります。

体温がさらに下がると、体の機能に様々な障害が現れ始めます。まず、脳の働きが鈍くなり、意識がぼんやりしてきます。正しい判断ができなくなり、周囲の状況を理解することが難しくなります。また、ろれつが回らなくなり、言葉が不明瞭になることもあります。さらに、脈拍と呼吸の数は減少し、血圧も低下していきます。

重症の低体温症になると、意識を完全に失い、反応がなくなります。脈拍や呼吸は非常に弱くなり、もはや確認するのが難しい場合もあります。そして、最終的には心臓が停止してしまう危険性があります。医療機関では、心電図検査を行うことで、低体温症特有の波形を確認できることもあり、迅速な診断に役立ちます。特に体温が30度以下になると、心臓は非常に敏感な状態になります。わずかな刺激、例えば不用意な体位変換などで、容易に心停止を誘発する可能性があります。そのため、患者の搬送や処置を行う際には、細心の注意を払う必要があります。

体温 症状
35度未満 低体温症
初期段階 強い寒気、震え、皮膚の青白化(唇、爪は紫色)
中期段階 意識障害、判断力低下、ろれつ困難、脈拍・呼吸数減少、血圧低下
重症段階 意識消失、脈拍・呼吸微弱、心停止の危険
30度以下 わずかな刺激で心停止の可能性あり

低体温症の予防

低体温症の予防

冬の厳しい寒さや、思いがけない天候の急変、また、空調設備の故障などで、私たちの体は冷え込み、低体温症になってしまう危険性があります。低体温症とは、体の深部体温が35度以下に低下した状態を指し、意識障害や心肺停止など、命に関わる深刻な事態を引き起こす可能性があります。そうならないために、低体温症の予防策をしっかりと理解し、実践することが重要です。

まずは、寒さへの備えが大切です。外出時には、重ね着をして空気の層を作り、保温性を高めるようにしましょう。特に、手袋、帽子、マフラーなどで、末端からの放熱を防ぐことは効果的です。また、衣服が雨や汗で濡れてしまうと、気化熱によって体温が奪われてしまいます。濡れた服はすぐに乾いたものに着替え、常に体を乾いた状態に保つように心掛けましょう。山や海など、天候が変わりやすい場所へ行く時は、天気予報をよく確認し、防寒着や雨具を忘れずに持って行きましょう。急な天候の変化に対応できるよう、準備を怠らないことが重要です。

体の内側からの対策も重要です。普段からバランスの良い食事を摂り、十分な睡眠を取ることで、体温調節機能を正常に保ちましょう。また、寒い時期は、温かい飲み物をこまめに飲んで体を温めるのも良いでしょう。ただし、アルコールの摂取は、一時的に体が温まったように感じますが、実際には体温を下げてしまうため、寒い場所での飲酒は避けましょう。

特に注意が必要なのは、高齢者や乳幼児、持病のある方です。高齢者は体温調節機能が低下しやすく、乳幼児は体が小さく、体温が変化しやすい傾向にあります。持病のある方も、病状によっては体温調節が難しい場合があります。周りの人は、これらの点に気を配り、声かけや室温管理など、適切な配慮を行いましょう。こまめに室温計を確認し、暖房器具を適切に使用することで、部屋を暖かく保ち、低体温症を予防しましょう。

カテゴリ 対策 詳細 対象者
服装による対策 重ね着 空気の層を作り保温性を高める 全員
手袋、帽子、マフラー 末端からの放熱を防ぐ
濡れた服は着替える 気化熱による体温低下を防ぐ
環境対策 天気予報の確認 急な天候の変化に対応
防寒着、雨具の準備 山や海など天候が変わりやすい場所へ行く時
体の内側からの対策 バランスの良い食事と睡眠 体温調節機能の維持
温かい飲み物 体を温める
その他 アルコール摂取の注意 一時的に温まるが、実際は体温を下げる 全員(特に寒冷地)
周囲の配慮 声かけ 状態確認 高齢者、乳幼児、持病のある方
室温管理、暖房器具の適切な使用 部屋を暖かく保つ

低体温症の対処法

低体温症の対処法

低体温症は、体温が著しく低下することで、生命に危険を及ぼす状態です。一刻も早い適切な処置が重要になります。もし、低体温症の疑いがある人を発見したら、以下の手順に沿って対処しましょう。

まず、安全な場所に移動させましょう。風雨や雪から守れる屋内や、風の当たらない場所が理想です。次に、濡れた衣服は体温を奪うため、速やかに乾いた衣服に着替えさせましょう。着替えさせる際は、できるだけ体を動かさないように配慮し、心臓への負担を最小限に抑えることが大切です。乾いた毛布やタオル、保温シートなどで体を包み、保温に努めましょう。

温かい飲み物を少しずつ与えることも有効です。砂糖を少量加えた温かい紅茶や、スポーツドリンクなどが適しています。ただし、アルコールは厳禁です。アルコールは一時的に温かさを感じさせますが、血管を拡張させてしまい、かえって体の中心部の熱を奪ってしまう危険性があります。また、意識がない場合は、吐瀉物などで窒息しないよう、回復体位をとらせ、呼吸と脈拍定期的に確認しましょう。必要であればためらわずに心肺蘇生法を開始してください。

体温を上げる際は、急激な温度変化を避け、ゆっくりと温めるように注意しましょう。熱い風呂にいきなり入れる、湯たんぽを直接当てるといった行為は、かえって症状を悪化させる可能性があります。また、摩擦によって体を温めるのも、皮膚を傷つける恐れがあるため、避けましょう。

最も重要なのは、一刻も早く救急車を呼ぶことです。上記の応急処置を行いながら、119番通報し、救急隊の到着を待ちましょう。救急隊員には、発見した時の状況や、行った処置について正確に伝えましょう。到着するまでの間、患者の移動は最小限に留め、安静を保つよう努めてください。落ち着いて行動し、適切な処置を行うことで、救命率を高めることができます。

低体温症の対処法