アダムス・ストークス症候群:突然の意識消失に注意
防災を知りたい
先生、「アダムス・ストークス症候群」って、災害時に起こりやすいんですか?
防災アドバイザー
いい質問だね。アダムス・ストークス症候群自体は、災害が直接の原因で起こるわけではないんだ。これは、心臓の拍動のリズムが乱れることで、脳への血流が一時的に減って、めまいや意識を失ったりする病気なんだよ。
防災を知りたい
なるほど。でも、災害とは関係ないんですね?
防災アドバイザー
うん、直接的な原因ではないけれど、災害時のストレスや、避難生活による疲労、睡眠不足、脱水などが、心臓のリズムを乱しやすくする可能性はあるから、間接的には関係あると言えるかもしれないね。だから、災害時は体調管理に気を付けて、少しでも異変を感じたら、すぐに周りの人に相談することが大切だよ。
アダムス・ストークス症候群とは。
災害時における健康被害として、脈の乱れが原因で起こる『アダムズ・ストークス症候群』について説明します。この病気は、心臓から送り出される血液の量が急に減ることで、脳への血流が不足し、めまいや意識を失ったり、痙攣などの症状が一時的に現れることを指します。病名は、1800年代前半にアダムス氏とストークス氏という二人の医師が、脈が遅いことで意識を失う発作の症例を報告したことに由来しています。昔は、心臓の上部と下部の間の電気信号の伝わりが完全に遮断されることで起こる意識消失や痙攣発作に対してのみ使われていましたが、現在では、脈が遅くなるタイプの様々な脈の乱れに加えて、脈が速くなるタイプの脈の乱れや、脈が遅くなったり速くなったりする混合型の脈の乱れが原因の場合も含まれています。
症状の特徴
アダムス・ストークス症候群は、突然意識を失うことを主な特徴とする病気です。まるで電源が急に切れるように、意識が突然なくなってしまいます。この意識消失は数秒から数分続き、多くの場合、失神の前に何らかの前触れがあります。例えば、立ちくらみを感じたり、体がふらついたり、吐き気がするといった症状が現れることがあります。また、意識を失っている間、体の一部または全身がけいれんを起こすこともあり、この様子はまるでてんかんの発作のように見えるため、周囲の人が誤解してしまうこともあります。意識が戻った後も、しばらくの間は頭がぼーっとしたり、強い疲れが残る場合もあります。
症状の重さや続く時間の長さは、心臓から送り出される血液の量と脳への血流がどの程度、そしてどのくらいの時間減っているかによって大きく変わってきます。軽い場合は、短時間の意識消失だけで済むこともありますが、重い場合は、意識消失が長時間続き、後遺症が残ってしまうこともあります。後遺症としては、記憶障害や運動障害などが考えられます。
このように、アダムス・ストークス症候群は放っておくと重大な事態につながる可能性があります。そのため、もし突然意識を失った場合は、たとえ短時間であっても、すぐに医療機関を受診することが大切です。速やかに医療機関を受診することで、根本的な原因を調べ、適切な治療を受けることができます。早期発見、早期治療によって重症化を防ぎ、健康な生活を取り戻すことが期待できます。
項目 | 内容 |
---|---|
病気の名前 | アダムス・ストークス症候群 |
主な特徴 | 突然の意識消失(数秒~数分) |
前触れ | 立ちくらみ、ふらつき、吐き気 |
意識消失中の症状 | 体の一部または全身のけいれん(てんかん発作に似ている) |
意識回復後の症状 | 頭がぼーっとする、強い疲れ |
症状の重さ | 心臓から送り出される血液の量と脳への血流の減少量と減少時間による |
軽症の場合 | 短時間の意識消失 |
重症の場合 | 長時間の意識消失、後遺症(記憶障害、運動障害など) |
注意点 | たとえ短時間でも、すぐに医療機関を受診 |
発症の仕組み
アダムス・ストークス症候群は、心臓の鼓動のリズムが乱れる不整脈によって起こる突然の意識消失発作です。健康な心臓は規則正しく収縮と拡張を繰り返し、全身に血液を送っていますが、不整脈が起こるとこのリズムが崩れ、心臓がうまく血液を送り出せなくなります。この状態を心拍出量の低下といいます。
心拍出量が低下すると、脳に十分な血液が供給されなくなります。脳は血液によって酸素や栄養を受け取って機能しているため、血流が不足すると酸素欠乏状態、いわゆる脳虚血に陥り、正常に働かなくなります。これがアダムス・ストークス症候群で意識消失が起こるメカニズムです。意識消失は数秒から数分続き、多くの場合自然に回復しますが、繰り返し起こる場合は根本的な原因の治療が必要です。
アダムス・ストークス症候群を引き起こす不整脈には、大きく分けて心拍数が遅くなる徐脈と、心拍数が速くなる頻脈の二種類があります。徐脈は、心臓の鼓動が遅すぎるために十分な血液を送り出せない状態です。洞不全症候群や房室ブロックなどが代表的な例です。一方、頻脈は、心臓が異常に速く鼓動するため、心臓が十分に血液を満たす間もなく収縮してしまい、結果として心拍出量が低下する状態です。心室頻拍や心室細動などがこの状態を引き起こす可能性があります。いずれの場合も、脳への血流が不足することで、めまい、ふらつき、失神などの症状が現れます。
このように、アダムス・ストークス症候群は心臓の不整脈が根本原因であり、脳への血流不足によって引き起こされる意識消失発作です。症状が起きた場合は速やかに医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが重要です。
主な原因
アダムス・ストークス症候群の主なきっかけは、心臓の拍動のリズムが乱れることです。これは不整脈と呼ばれ、いくつかの種類があります。
まず、洞不全症候群について説明します。心臓には、洞結節という部位があり、規則正しいリズムで電気信号を発生させて、心拍を作り出しています。洞不全症候群では、この洞結節のはたらきが弱くなってしまい、電気信号がうまく発生しなくなります。その結果、心拍の数が少なくなる、あるいは一時的に心拍が止まってしまうことがあります。
次に、房室ブロックについて説明します。心臓は、心房と心室という部屋に分かれており、心房で発生した電気信号が心室に伝わって、心室が収縮することで血液を送り出します。房室ブロックでは、心房から心室へ電気信号が伝わる経路が遮断されてしまいます。そのため、心室が収縮する回数が減り、心拍が遅くなります。
さらに、心室頻拍という不整脈もあります。これは、心室で異常に速いリズムで電気信号が発生し、心室が細かく収縮してしまう状態です。心室が速く収縮しすぎると、全身に血液を十分に送り出すことができなくなり、めまいや失神などを引き起こします。最悪の場合、心臓が停止してしまうこともあります。
これらの不整脈は、なぜ起こるのでしょうか。主な原因としては、加齢や高血圧、心筋梗塞、心臓弁膜症といった心臓の病気が挙げられます。また、特定の薬の副作用で不整脈が起こることもあります。
診断方法
アダムス・ストークス症候群と診断するには、いくつかの段階を踏みます。まず、患者さんからお話を伺い、意識がなくなった時の様子や、過去の病気などを詳しく調べます。いつ、どこで、どのくらいの時間、意識がなかったのか、その前後でどのような症状があったのかなどを丁寧に確認します。また、これまでに心臓の病気にかかったことがあるか、他の病気で治療を受けているかなども把握することで、診断の手がかりを集めます。
次に、心臓の電気的な活動を記録する心電図検査を行います。この検査によって、心臓のリズムが乱れていないか、もし乱れているとしたらどのような種類の不整脈かを確認します。ただし、意識消失の発作が起きている時に心電図検査を行わないと、不整脈を捉えられないことがあります。症状が現れるのは一瞬である場合も多いので、発作が起きた時にたまたま心電図検査をしているとは限りません。
そこで、ホルター心電図やイベントレコーダーといった、長時間心臓の電気的な活動を記録できる装置を使います。ホルター心電図は小型の記録装置を体に装着し、24時間から48時間連続で心電図を記録する方法です。イベントレコーダーは、患者さん自身がボタンを押して記録を開始する装置で、数週間から数ヶ月にわたって記録が可能です。これらの装置によって、発作時の心臓の状態を正確に把握することができます。
さらに、心臓超音波検査や心臓カテーテル検査なども行うことがあります。心臓超音波検査では、超音波を使って心臓の大きさや動き、弁の状態などを調べます。心臓カテーテル検査では、カテーテルと呼ばれる細い管を血管から心臓まで通し、心臓の内部の圧力や血流などを測定します。これらの検査によって、心臓の構造や機能に異常がないかを詳しく調べます。
最終的には、これらの検査結果と患者さんからの聞き取り情報を総合的に判断して、アダムス・ストークス症候群かどうかを診断します。それぞれの検査は単独ではなく、組み合わせて行うことで、より正確な診断につながります。
治療方法
心臓の拍動のリズムが乱れる病気を不整脈といいます。脈が異常に遅くなる徐脈と、異常に速くなる頻脈があり、アダムス・ストークス症候群は、この不整脈が原因で、脳への血液の流れが一時的に悪くなり、めまいや失神などの症状を引き起こす病気です。治療の中心は、この不整脈を抑えることにあります。
どのような治療を行うかは、不整脈の種類や程度、そして患者さんの体の状態によって、それぞれに合った方法を選びます。まず、薬を使って不整脈を治そうとする方法があります。体に負担の少ない治療法ですが、薬が効きにくい場合もあります。
薬だけでは不整脈が治まらない場合は、小さな装置を体の中に埋め込む手術を行うこともあります。この装置には二つの種類があり、一つはペースメーカーと呼ばれるものです。ペースメーカーは、心臓が規則正しく動くように、電気刺激を与えて拍動のリズムを整えます。脈が遅すぎる徐脈に効果があります。もう一つは、植え込み型除細動器(ICD)と呼ばれる装置です。ICDは、心臓が痙攣を起こしたように細かく震え、血液をうまく送り出せなくなる心室頻拍などの危険な不整脈が起こった時に、電気ショックを与えて正常なリズムに戻します。ICDは、突然死を防ぐ効果が高いとされています。
どの治療法が最適かは、専門の医師が患者さんとよく相談して決めます。疑問や不安があれば、遠慮なく医師に相談することが大切です。
不整脈の種類 | 症状 | 治療法 | 治療法の詳細 |
---|---|---|---|
徐脈 | めまい、失神など (アダムス・ストークス症候群) | 薬物療法 | 体に負担が少ないが、効果がない場合もある |
ペースメーカー | 心臓に電気刺激を与え、拍動のリズムを整える | ||
頻脈 (心室頻拍など) |
薬物療法 | 体に負担が少ないが、効果がない場合もある | |
植え込み型除細動器(ICD) | 電気ショックで正常なリズムに戻す。突然死を防ぐ効果が高い |