窒息時の対処法:命を守るための基礎知識

窒息時の対処法:命を守るための基礎知識

防災を知りたい

先生、『気道異物』って、食べ物などが喉に詰まることですよね?

防災アドバイザー

そうです。食べ物はもちろん、おもちゃや小さなものなど、色々なものが喉に詰まる可能性があります。窒息する危険があるので、とても注意が必要なんですよ。

防災を知りたい

喉に何か詰まったらどうすればいいんですか?

防災アドバイザー

咳をすることで自然に出る場合もありますが、出ない場合は、周りの人に助けを求めましょう。大人の場合は、お腹を圧迫する『腹部突き上げ法』などが有効です。乳児の場合は方法が異なるので、年齢に応じた適切な処置が必要です。また、窒息サインも覚えておくと、周りの人に異変を伝えられます。

気道異物とは。

事故や災害などで、食べ物が気管に入ってしまうことを『気道異物』といいます。気管に入った異物によって息ができなくなり、最悪の場合、死に至ることもあります。息ができない人は、自分の喉を親指と人差し指でつかむ仕草をします。これは世界共通のサインで「窒息サイン」と呼ばれています。もし、声がでない、咳が弱い、息を吸うときにヒューヒューと音がする、または全く音がしない、息苦しさがひどくなる、顔色が悪くなるといった症状が見られたら、すぐに処置が必要です。異物を吐き出させるための緊急処置として「腹部突き上げ法」があります。これは、後ろから両腕を回し、おへその上のあたりで握りこぶしを作って突き上げる方法です。子供や大人にはこの方法を使えますが、1歳未満の赤ちゃんには行いません。1歳未満の赤ちゃんの場合には、腕に抱いて背中を叩いたり、胸を押し上げる方法をとります。もし意識を失ってしまった場合には、すぐに救急車(119番)を呼び、心臓マッサージと人工呼吸を始めましょう。その際、異物があれば取り除きます。また、ピーナッツなどの小さなもので片方の気管が詰まった場合、症状が出ない場合もあるので注意が必要です。

気道異物とは

気道異物とは

気道異物とは、食べ物や小さな玩具、硬貨など、本来入るべきでないものが誤って気管に入り込んでしまう状態を指します。気管は、空気の通り道であるため、異物が入り込むと呼吸が困難になります。軽度の場合、咳き込むことで異物が自然に排出されることもありますが、重症の場合、窒息状態となり、生命に関わる危険な状態に陥ることがあります。特に、小さなお子さんや高齢者の方は注意が必要です。

小さなお子さんは、好奇心が旺盛で、何でも口に入れてしまう傾向があります。また、食べ物をよく噛まずに飲み込んだり、遊びながらものを口に入れたりすることも多く、気道に異物が入り込みやすいのです。保護者は、お子さんの手の届く範囲に小さなものを置かない、食事中は落ち着いてよく噛んで食べるように指導するなど、日頃から気を配ることが重要です。

一方、高齢者の方は、飲み込む機能や咳をする力が低下している場合があり、異物を排出することが難しくなります。また、入れ歯を使用している高齢者では、入れ歯が外れて気管を塞いでしまうこともあります。高齢者自身は、食事はゆっくりと食べ物を小さく切って食べる、入れ歯がしっかり固定されているか確認するなどの注意が必要です。周囲の人は、食事中にむせないか息苦しそうにしていないかなど、いつもと様子が違う点がないか注意深く観察することが大切です。異物誤飲が疑われる場合、直ちに医療機関を受診するか、救急車を呼ぶなどの迅速な対応が必要です。普段から窒息時の対処法を学んでおくことも重要です。

対象者 原因・特徴 予防策 周囲の人の対応
小さなお子さん 好奇心が強く何でも口に入れる。食べ物をよく噛まずに飲み込む。遊びながらものを口に入れる。 小さなものを手の届く範囲に置かない。食事中は落ち着いてよく噛んで食べるように指導する。 食事中にむせないか、息苦しそうにしていないかなど、いつもと様子が違う点がないか注意深く観察する。
高齢者 飲み込む機能や咳をする力が低下している。入れ歯が外れて気管を塞ぐ場合もある。 食事はゆっくりと、食べ物を小さく切って食べる。入れ歯がしっかり固定されているか確認する。 食事中にむせないか、息苦しそうにしていないかなど、いつもと様子が違う点がないか注意深く観察する。異物誤飲が疑われる場合、直ちに医療機関を受診するか、救急車を呼ぶ。

窒息の兆候

窒息の兆候

食べ物が気管につまって呼吸ができなくなる窒息は、命にかかわる危険な状態です。窒息は、食事中に起こることが多く、特に高齢者や乳幼児は注意が必要です。窒息が始まると、まず表情に変化が現れます。苦しそうに顔を歪めたり、目は大きく見開き顔色は次第に青白くなります(チアノーゼ)。呼吸が困難になるため、胸や腹部の動きが激しくなり、肩で息をするようになります。窒息している人は、声を出せない咳をする力も弱くなります。息を吸う時に「ヒューヒュー」という笛のような音(喘鳴)が聞こえることもあります。また、喉につまった異物を取り除こうとして、自分の喉を手で掴む仕草(窒息サイン)をすることもあります。このサインは窒息の重要な合図なので、見逃さないようにしましょう。窒息の状態が続くと、酸素不足から意識が薄れ、最悪の場合、心停止に至ることもあります。窒息は時間との勝負です。少しでも異変に気づいたら、ためらわずに周囲の人に助けを求め救急車を要請しましょう。窒息に対する応急手当の方法を学ぶことも重要です。普段から周りの人に気を配り、窒息のサインを見逃さないようにすることで、大切な命を守ることができます。

症状 詳細
表情の変化 苦しそうな表情、目を見開く、顔色が青白くなる(チアノーゼ)
呼吸困難 胸や腹部の激しい動き、肩で息をする
発声・咳 声が出せない、咳をする力が弱い
喘鳴 息を吸う時に「ヒューヒュー」という笛のような音
窒息サイン 喉につまった異物を取り除こうとして、自分の喉を手で掴む仕草
意識消失 酸素不足により意識が薄れる
心停止 最悪の場合、心停止に至る

緊急処置の方法:腹部突き上げ法

緊急処置の方法:腹部突き上げ法

食べ物が喉に詰まって息ができない状態は、一刻を争う緊急事態です。このような時、周囲の人が適切な処置をすることで、命を救える可能性があります。その有効な方法の一つが、腹部突き上げ法です。別名、ハイムリック法とも呼ばれています。

まず、窒息している人の様子をよく観察し、本当に窒息しているのかを確認しましょう。咳をしている場合は、まだ自力で呼吸ができる状態です。むやみに腹部突き上げ法を行うと、かえって状況を悪化させる恐れがあります。咳き込んでいる場合は、自然に異物が排出されるのを待ちましょう。ただし、咳き込んでいるうちに顔が青ざめてきたり、呼吸が弱くなってきたりする場合は、すぐに腹部突き上げ法に移行しましょう。

窒息している人が立っている、または座っている場合は、背後から両腕を回し、みぞおちの少し上に片方の拳を当てます。この時、親指は肋骨に当てないように注意しましょう。みぞおちとは、胸骨の下端にある、肋骨が左右に分かれる部分です。次に、もう一方の手で拳を握り込み、肘を伸ばしたまま、素早く内側上方向に突き上げます。この時、お腹を絞るように力を入れるのがポイントです。まるで詰まったものを押し出すように、力強く行いましょう。

この動作を、異物が排出されるまで、または意識を失うまで繰り返します。もし意識を失った場合は、すぐに心肺蘇生法を開始し、救急車を呼びましょう

腹部突き上げ法は、妊婦や乳幼児には行うことができません。妊婦の場合は胸部突き上げ法を、乳幼児の場合は背部叩打法と胸部突き上げ法を組み合わせた方法を行います。これらの方法は、腹部突き上げ法とは異なるため、別途正しい手順を学ぶ必要があります。

腹部突き上げ法は非常に効果的な方法ですが、強い力を加えるため、内臓を損傷したり、肋骨を骨折したりする可能性もあります。安全に行うためには、正しい知識と技術を身につけておくことが大切です。日頃から訓練をしておくと、いざという時に落ち着いて行動できます。

乳児への対処法

乳児への対処法

まだ言葉を話せない一歳未満の赤ちゃんが、食べ物やおもちゃなどを喉に詰まらせて窒息している場合、大人のように腹部を圧迫する方法は大変危険です。まだ内臓が未発達で柔らかく、圧迫によって内臓を傷つけてしまう恐れがあるからです。そのため、一歳未満の赤ちゃんには、背部叩打法と胸部突き上げ法を組み合わせて行います。

まず、窒息した赤ちゃんを腕の上にうつ伏せに乗せます。この時、赤ちゃんの顎をしっかりと支え頭が体よりも低い位置になるように傾けて支えることが大切です。赤ちゃんの背中の肩甲骨の間を、手のひらで5回ほど叩きます。叩く強さは、赤ちゃんを落とさない程度にしっかりとした力で、しかし決して乱暴にならないように注意が必要です。

次に、赤ちゃんを仰向けにします。この時も頭は体よりも低い位置になるようにします。そして、乳頭と乳頭を結んだ線上、胸の真ん中人差し指と中指の2本5回ほど突き上げます。突き上げる深さは、胸の厚さの3分の1程度を目安とし、強く押しすぎないように注意します。

これらの背部叩打法と胸部突き上げ法を繰り返し行いながら、赤ちゃんの口の中を確認し、異物が見えていれば指で取り除きます。異物が出てこない、または呼吸が再開しない場合は、救急車を呼びながら、これらの処置を救急隊員が到着するまで続けます。日頃から人形を使って練習しておくと、いざという時に落ち着いて行動できます。また、救急救命講習を受講して、正しい知識と技術を身につけることも重要です。

対象 方法 手順 注意点
1歳未満の乳児 背部叩打法 1. 乳児を腕の上にうつ伏せに乗せ、顎を支え頭を体より低くする
2. 背中の肩甲骨の間を手のひらで5回叩く
・乳児を落とさない程度の力で叩く
・乱暴に叩かない
胸部突き上げ法 1. 乳児を仰向けにし、頭を体より低くする
2. 乳頭と乳頭を結んだ線上、胸の真ん中を人差し指と中指の2本で5回突き上げる
・突き上げる深さは胸の厚さの1/3程度
・強く押しすぎない
・背部叩打法と胸部突き上げ法を繰り返し行う
・異物が見えていれば指で取り除く
・異物が出てこない、または呼吸が再開しない場合は、救急車を呼びながら救急隊員が到着するまで続ける
・日頃から人形を使って練習しておく
・救急救命講習を受講して正しい知識と技術を身につける

意識がない場合の対処法

意識がない場合の対処法

人が急に倒れ、意識がない状態に遭遇したら、まずは落ち着いて状況を把握することが大切です。大声で呼びかけたり、肩を軽くたたいたりして、反応があるか確認しましょう。呼びかけに反応せず、意識がないと判断した場合は、直ちに助けを求めなければなりません。携帯電話等で救急車を要請(119番)し、できるだけ早く現場に駆けつけてもらえるように手配します。救急隊員には、発生場所や状況、傷病者の状態などを正確に伝えましょう。

救急要請と並行して、気道の確保を試みます。あごを持ち上げ、頭を後ろに傾けることで気道を確保し、呼吸の道を開きます。異物(食べ物や嘔吐物など)が喉に詰まっている場合は、指で取り除くか、背中を叩くなどの方法で除去を試みます。気道が確保できたら、正常に呼吸をしているか確認します。胸やお腹の動き、呼吸音、吐息の有無などを確認し、呼吸が不規則、もしくは呼吸が停止している場合は、ためらわずに心肺蘇生を開始します。心肺蘇生は、心臓マッサージと人工呼吸を繰り返す応急処置です。心臓マッサージは、胸の真ん中を強く、一定のリズムで圧迫することで、血液を循環させることを目的としています。人工呼吸は、肺に空気を送り込み、酸素を供給するために行います。これらの処置は、救急隊員が到着するまで、絶え間なく続けることが重要です。

周囲に自動体外式除細動器(AED)があれば、すぐに使用しましょう。AEDは、心臓の異常な動きを電気ショックで正常に戻す医療機器です。音声ガイダンスに従って操作すれば、特別な知識がなくても使用できます。AEDの使用と心肺蘇生を組み合わせることで、救命の可能性をさらに高めることができます。これらの応急処置は、定期的な講習会などで学ぶことができます。いざという時に適切な処置を行うためには、正しい知識と技術を身につけておくことが不可欠です。日頃から積極的に学ぶ姿勢を持つように心がけましょう。

意識がない場合の対処法

片側気管閉塞への注意

片側気管閉塞への注意

小さな物が片側の気管支に詰まることを片側気管閉塞と言います。特に、豆やピーナッツなどの小さな食べ物は、気管に入り込みやすく、窒息事故の原因となることがあります。乳幼児や小さな子供は、気管の直径が大人よりも狭いため、閉塞しやすく、また症状をうまく言葉で伝えることができないため、周囲の大人の注意深い観察が必要です。

片側気管閉塞の場合、完全に空気が通らなくなる両側閉塞とは異なり、呼吸困難などの分かりやすい症状が現れにくいという特徴があります。そのため、異物が詰まったことに気づかず、発見が遅れてしまうケースも少なくありません。閉塞した側の肺は十分に空気が入らなくなるため、炎症を起こしたり、感染症を引き起こす可能性があります。初期には乾いた咳や再発性の肺炎、喘鳴(ぜいめい)などが見られることがあります。また、異物が詰まったまま時間が経つと、慢性的な咳や痰、発熱などの症状が現れることもあります。

子供が急に咳き込み始めたり、呼吸音がいつもと違う、ゼーゼーといった音がする、断続的に咳が続く、ミルクの飲みが悪くなった、機嫌が悪いなど、普段と様子が違うと感じたら、些細なことでも医療機関を受診することが大切です。

特に、ピーナッツや豆類、おもちゃの小さな部品などを口にする可能性がある環境では、子供から目を離さないように注意し、窒息事故のリスクを理解しておく必要があります。また、食事中は落ち着いてよく噛んで食べるように指導することも重要です。

早期発見、早期治療のためには、定期的な健康診断も有効です。健康診断では、呼吸器系の検査も行われ、異変を早期に発見できる可能性があります。日頃から子供の健康状態に注意を払い、少しでも異変を感じたら、ためらわずに医師に相談しましょう。

項目 内容
病名 片側気管閉塞
原因 豆、ピーナッツなどの小さな異物(食べ物、おもちゃの部品など)の吸入
リスクの高い年齢層 乳幼児、小さな子供(気管が狭く、症状を伝えられないため)
特徴 呼吸困難などの分かりやすい症状が現れにくい。発見が遅れるケースも少なくない。
症状 初期:乾いた咳、再発性の肺炎、喘鳴(ぜいめい)
慢性:咳、痰、発熱
その他:急な咳、いつもと違う呼吸音、ゼーゼー音、断続的な咳、ミルクの飲みが悪い、機嫌が悪い
合併症 閉塞した側の肺の炎症、感染症
予防 子供から目を離さない、口にする可能性があるものを置かない、よく噛んで食べるように指導する
早期発見 定期的な健康診断、日頃の観察、異変を感じたら医師に相談