外傷重症度スコア:ISSとその重要性

外傷重症度スコア:ISSとその重要性

防災を知りたい

先生、「外傷重症度スコア」って一体何ですか?難しそうな言葉がたくさんあってよく分かりません。

防災アドバイザー

そうだね、少し難しいね。簡単に言うと、事故などでケガをした人のケガの重さを数字で表す方法だよ。この数字を「外傷重症度スコア(ISS)」と言うんだ。体の6つの場所に分けて、それぞれケガの重さを点数でつけて、一番ひどいケガの3箇所の点数を計算して全体の重症度を決めるんだよ。

防災を知りたい

なるほど。体の6つの場所ってどこですか?それに、点数を計算するって、具体的にどうやるんですか?

防災アドバイザー

6つの場所は、頭と首、顔、胸、お腹と骨盤の中の臓器、手足と骨盤、そして皮膚だよ。点数の計算は、それぞれの場所で最もひどいケガの点数を2乗して、上位3つの合計を出すんだ。例えば、頭が3点、胸が5点、お腹が2点で他が0点だとすると、3の2乗+5の2乗+2の2乗で9+25+4で38が全体の重症度になるんだよ。このスコアが高いほど、ケガが重いことを表すんだ。

外傷重症度スコアとは。

けがのひどさを点数で表す『外傷重症度スコア』について説明します。これは1974年にベイカーさんたちが、たくさんのけがをした人の状態を評価するために考え出した方法です。けがのひどさを表すAISという指標をもとに計算されます。まず、けがをした場所を、頭と首、顔、胸、お腹と骨盤の中の臓器、手足と骨盤、皮膚の6つの場所に分けます。それぞれの場所で最もひどいけがのAISスコアを見つけ、その中で高い方から3つを選びます。選ばれた3つのスコアのそれぞれを2乗して、合計したものがISSという点数になります。今は1998年に新しくなったAIS-90Update98を使って計算しています。ISSは、いくつかの場所でけがをしたときのひどさを、体の構造の面から評価した点数で、亡くなる確率と深い関係があります。また、ISSは亡くなる確率だけでなく、入院する日数とも関係があり、社会のいろいろな場面で広く使われています。防げたはずのけがによる死亡を客観的に評価するためにチャンピオンさんたちが提案したTRISSという方法では、生き残る確率を計算するのにISSが重要な項目として使われていて、最近ではますます広く使われるようになっています。(出典:J Trauma 1990;30:1356)

多発外傷と重症度評価

多発外傷と重症度評価

交通事故や地震、津波といった自然災害など、様々な原因によって一度に体の複数の部位が損傷を受ける状態を多発外傷と言います。多発外傷は、それぞれの損傷が重なり合って生命に関わる重篤な状態を引き起こす可能性があるため、迅速かつ適切な治療が求められます。適切な治療を行うためには、損傷の程度を正確に評価し、重症度を客観的に判断することが非常に重要です。

そのため、医療現場では客観的な指標に基づいて重症度を評価する様々な方法が開発されてきました。これらの方法は、体の様々な部位の損傷の程度を数値化し、それらを組み合わせることで全体の重症度を算出します。具体的には、意識レベル、呼吸状態、血圧、脈拍といった生命兆候に加えて、損傷を受けた部位の種類や程度、骨折の有無、出血量などを総合的に評価します。これにより、治療の優先順位を決定し、適切な医療資源を配分することが可能となります。

多発外傷患者の重症度を評価する上で重要な役割を果たしている指標の一つに、外傷重症度スコア(ISSInjury Severity Score)があります。ISSは、人体を6つの領域(頭部・頸部、顔面、胸部、腹部、四肢・骨盤、体表)に分け、それぞれの領域で最も重症な損傷に対して1から5までの点数を付けます。そして、点数が高い3つの領域の点数の2乗を合計することで、ISSを算出します。ISSの範囲は0から75点で、点数が高いほど重症度が高いことを示します。ISSを用いることで、客観的に患者の状態を把握し、治療方針の決定や予後の予測に役立てることができます。また、ISSは国際的に広く用いられており、異なる医療機関間での情報共有や研究にも役立っています。

項目 内容
多発外傷の定義 様々な原因で体の複数の部位が損傷を受けた状態
多発外傷の特徴 損傷が重なり合って生命に関わる重篤な状態を引き起こす可能性がある
治療の重要性 迅速かつ適切な治療が必要
重症度評価の重要性 損傷の程度を正確に評価し、重症度を客観的に判断することが重要
重症度評価の方法 体の様々な部位の損傷の程度を数値化し、それらを組み合わせることで全体の重症度を算出

具体的には、意識レベル、呼吸状態、血圧、脈拍、損傷部位、骨折の有無、出血量などを総合的に評価
外傷重症度スコア(ISS) 人体を6つの領域(頭部・頸部、顔面、胸部、腹部、四肢・骨盤、体表)に分け、それぞれの領域で最も重症な損傷に対して1から5までの点数を付け、点数が高い3つの領域の点数の2乗を合計することで算出(0~75点)
ISSの役割 客観的に患者の状態を把握し、治療方針の決定や予後の予測に役立てる
ISSの利点 国際的に広く用いられており、異なる医療機関間での情報共有や研究にも役立つ

外傷重症度スコアの概要

外傷重症度スコアの概要

けがの深刻さを測る方法の一つに、外傷重症度スコア(ISS)というものがあります。これは1974年にベイカーさんたちが考え出した方法で、体のいくつかの部分に分けて、それぞれのけがの程度を数値で表し、全体の深刻さを計算するものです。

具体的には、体を六つの部分に分けます。頭と首、顔、胸、お腹と骨盤の中にある臓器、手足と骨盤、そして皮膚です。それぞれの部分のけがの程度は、簡略損傷尺度(AIS)を使って調べます。AISは、それぞれのけがに対して1から6までの点数をつけ、6が一番重いけがであることを示します。

ISSの計算方法は少し特殊です。六つの部分の中で、一番ひどいけがをしている三つの部分を選び、それぞれのAISの点数を二乗して、それを合計します。例えば、胸にAIS3、お腹にAIS4、頭にAIS5のけがをしている場合、3×3+4×4+5×5で9+16+25を計算し、合計50がISSになります。このように計算することで、重いけがほど全体の点数に大きく影響するように工夫されているのです。

このISSは、けがの深刻さを客観的に評価できるため、治療方針の決定や病院の受け入れ態勢の判断などに役立ちます。また、多くのけが人を同時に診なければならない災害時などには、誰がより緊急な治療を必要としているかを迅速に判断するための重要な指標となります。けがの程度を数値化することで、医療現場での混乱を防ぎ、より適切な治療を提供することにつながるのです。

項目 説明
外傷重症度スコア(ISS) けがの深刻さを測る方法。1974年にベイカーさんたちが考案。体の部位別にけがの程度を数値化し、全体の深刻さを計算する。
体の部位区分 頭と首、顔、胸、お腹と骨盤の中にある臓器、手足と骨盤、皮膚の6つの部位に分ける。
簡略損傷尺度(AIS) それぞれのけがに1から6までの点数を付ける(6が最も重傷)。ISSの計算に利用される。
ISSの計算方法 6つの部位の中で、AISの点数が高い3つの部位を選び、それぞれのAISの点数を2乗し、合計する。
ISSの活用例 治療方針の決定、病院の受け入れ態勢の判断、災害時の緊急治療の必要性の判断など。
ISSのメリット けがの深刻さを客観的に評価できるため、医療現場での混乱を防ぎ、適切な治療提供につながる。

計算方法と解釈

計算方法と解釈

負傷重症度スコア(ISS)は、けがの深刻さを評価するための重要な指標であり、救急医療現場や災害医療などで広く活用されています。ISSの算出は、体の各部位に割り当てられた外傷スコア(AIS)に基づいて行われます。AISは、けがの程度を1から6までの6段階で評価し、1は最も軽く、6は最も重い状態を表します。

ISSの計算は、以下の手順で行います。まず、頭部、顔面、頸部、胸部、腹部、脊椎、上肢、下肢、体表といった体の各部位について、AISを決定します。次に、AISの最も高い3つの部位を選び出します。それぞれの部位のAISの値を2乗し、それらを合計することでISSが算出されます。例えば、AISが最も高い3つの部位が、胸部(AIS=5)、腹部(AIS=4)、下肢(AIS=3)であった場合、ISSは5の2乗(25)と4の2乗(16)と3の2乗(9)の合計、つまり50となります。

ISSの値は0から75までの範囲をとり、値が大きいほど、けが全体の重症度が高いことを示します。ISSが75に近いほど、救命の可能性が低くなるといった傾向を示す研究結果もあります。ただし、全ての部位のAISが6の場合、ISSは75ではなく、計算不能と定義されます。これは、全ての部位が最も重症な状態では、ISSによる重症度の比較が意味をなさないと考えられるからです。このような状況は、広範囲の重度のやけどを負った場合などに起こりえます。ISSは、患者の治療方針の決定や、医療資源の配分、災害時のトリアージなどに役立つ重要な指標ですが、あくまで参考値であり、他の臨床所見と合わせて総合的に判断することが重要です。

ISS算出手順 説明
AISの決定 体の各部位(頭部、顔面、頸部、胸部、腹部、脊椎、上肢、下肢、体表)について、AIS(1〜6の6段階)を決定する。 胸部: AIS=5、腹部: AIS=4、下肢: AIS=3、その他: AIS≦3
AISの上位3部位の選定 AISの最も高い3つの部位を選び出す。 胸部(AIS=5)、腹部(AIS=4)、下肢(AIS=3)
AISの2乗和の算出 上位3部位のAISの値をそれぞれ2乗し、合計する。 5² + 4² + 3² = 25 + 16 + 9 = 50
ISSの算出 2乗和の合計値がISSとなる。 ISS = 50
ISSの解釈 ISSの値は0〜75の範囲。値が大きいほど重症度が高い。ISS=75は計算不能と定義。 ISS=50は重症

死亡率との相関

死亡率との相関

負傷の重症度を示す指標である傷害重症度スコア(ISS)は、多発外傷を負った方の生死に関わる確率と深い関わりがあることが明らかになっています。ISSは、体の様々な部位の怪我の程度を数値化し、合計することで全体の重症度を評価するものです。この数値が高いほど、つまり怪我の程度が重いほど、残念ながら亡くなる危険性も高まる傾向にあります。

具体的には、ISSの数値が上がるにつれて、死亡する確率も比例して上昇します。そのため、ISSは医療現場において、患者の容態が今後どうなるかを予測する上で、非常に重要な判断材料となっています。医師はISSの値を参考にすることで、患者一人ひとりに最適な治療方針を決定することができます。例えば、緊急手術の必要性や、集中治療室での管理の必要性などを判断する際に、ISSは客観的な指標として役立ちます。

また、ISSは入院期間の長さとも関連があることが知られています。ISSが高い患者ほど、入院期間が長くなる傾向にあります。この情報は、病院側が医療資源を適切に配分する計画を立てる際に役立ちます。例えば、病床数や医療スタッフの配置などを計画的に行うことができます。さらに、患者が社会復帰するための支援体制を構築する上でも、ISSは有用な情報となります。入院期間が長引くことが予想される患者には、より集中的なリハビリテーションや社会復帰支援が必要となるからです。

ISSは医療現場だけでなく、交通事故や災害医療など、様々な場面で活用されています。交通事故の現場では、救急隊員がISSを用いて負傷者の重症度を迅速に評価し、適切な搬送先を決定することができます。また、大規模災害が発生した場合には、ISSを用いて負傷者の重症度を分類し、優先的に治療を受けるべき患者を迅速に選別することができます。このように、ISSは客観的なデータに基づいて患者の状態を評価することを可能にし、より適切な医療を提供するために欠かせない指標となっています。

ISS(傷害重症度スコア) 死亡確率 入院期間 医療判断への影響 その他活用例
高い 高い 長い 緊急手術の必要性、集中治療室での管理の必要性などを判断 交通事故現場での重症度評価、大規模災害時の優先治療患者の選別
低い 低い 短い 軽症治療

発展と応用

発展と応用

負傷重症度スコア(ISS)は、1974年の提案以降、幾度もの見直しを経て、現在ではAIS-90 更新版98に基づいて計算されています。ISSは、様々な体の部位の負傷の重症度を数値化し、最も重症な3つの部位のスコアの二乗の合計として算出されます。この計算方法により、全身の負傷の重症度を客観的に評価することが可能となりました。

ISSは、単独で使用されるだけでなく、他の重症度評価方法にも組み込まれ、その応用範囲を広げています。例えば、外傷重症度スコア(TRISS)法は、ISSに加えて、年齢や負傷の仕組みといった情報も用いて、患者の生存率を予測します。TRISS法は、ISSを土台として、より詳細な予測を可能にする手法と言えるでしょう。ISSは、こうした発展を通して、多くの外傷を負った患者の治療成績の向上に大きく貢献してきました。

ISSは、今後も更なる改良が加えられることで、より正確な重症度評価が可能になると期待されています。例えば、個々の患者の体質や合併症といった要素を考慮することで、より個別化された重症度評価が可能になるかもしれません。また、ISSを用いた調査研究によって、多くの外傷がもたらす病気の仕組みの解明や、新しい治療方法の開発が進むことも期待されます。ISSは、今後も外傷医療において重要な役割を担い続け、患者の救命率向上や社会復帰支援に貢献していくと考えられます。

項目 説明
ISS(負傷重症度スコア)の定義 AIS-90 更新版98に基づき、最も重症な3つの部位のスコアの二乗の合計。体の部位の負傷の重症度を数値化し、全身の重症度を客観的に評価。
ISSの計算方法 最も重症な3つの部位のスコアの二乗の合計。
ISSの応用 単独使用に加え、他の重症度評価方法(例:TRISS法)にも組み込まれ、生存率予測などに利用。
TRISS法 ISS、年齢、負傷の仕組みを用いて患者の生存率を予測。ISSを土台として、より詳細な予測を可能にする手法。
ISSの将来 個々の患者の体質や合併症を考慮した、より個別化された重症度評価、
ISSを用いた調査研究による病気の仕組みの解明や新しい治療方法の開発などが期待される。
ISSの貢献 外傷を負った患者の治療成績の向上、救命率向上、社会復帰支援に貢献。

今後の展望

今後の展望

いくつもの怪我を負った人の深刻さをはかる大切な尺度である損傷重症度スコア(ISS)は、これからもっとよくなることが見込まれます。ISSは、体のどの部分がどれくらい傷ついたかを数値で表すものですが、体の働き具合や他に病気があるかどうかなどは考慮されていません。そのため、これらの要素も取り入れた、より幅広く深刻さをはかれる方法を作る必要があります。

また、ISSは主に大人が対象として作られた尺度なので、子供やお年寄りにもきちんと使えるように、もっとよく調べる必要があります。ISSは、多くの怪我を負った人の命を救うために大きく役立ってきました。しかし、より多くの人のためになるように、もっと改良していく必要があります。例えば、体の状態が刻一刻と変わる救急医療の現場では、最初の状態だけでなく、その後の変化も評価できるような仕組みが求められます。また、ISSは体の損傷の程度を数値化する指標であり、損傷部位の組み合わせによるリスクまでは評価できません。複数の臓器に損傷がある場合、損傷部位の組み合わせによって、生存率に影響が出ることがあります。ISSに加えて、損傷部位の組み合わせによるリスク評価も今後の課題と言えるでしょう。

これからの研究によって、ISSがさらに発展し、より効果的な治療が行えるようになることが期待されます。具体的には、AIを活用することで、画像診断から損傷の程度を自動的に判定する、といった技術革新も期待されます。また、個々の患者の遺伝情報や生活習慣なども考慮することで、より個別化された治療戦略を立てることができるようになるでしょう。ISSの改良と新たな技術の開発によって、多くの怪我を負った人にとって、より質の高い医療が提供される未来を目指していく必要があります。

課題 詳細 改善策
ISSの限界 体の働きや合併症を考慮していない より包括的な評価指標の作成
年齢による適用性の問題 主に成人を対象としている 子供やお年寄りへの適用性研究
動的な変化への対応不足 初期状態のみ評価、変化を反映できない 経時的変化を評価できる仕組み
損傷部位の組み合わせリスク評価不足 損傷部位の組み合わせによるリスクを評価できない 損傷部位の組み合わせによるリスク評価
技術革新の余地 手動での評価に依存 AIによる自動判定技術
個別化医療への対応不足 遺伝情報や生活習慣を考慮していない 個別化医療への対応