神経ショックと脊髄ショック
防災を知りたい
先生、『神経』って災害と防災になんの関係があるんですか?よくわからないです。
防災アドバイザー
いい質問だね。実は、災害で脊髄を損傷すると、『神経』と呼ばれる状態になることがあるんだ。これは、血圧が下がるショック状態の一種で、自律神経の乱れが原因なんだよ。
防災を知りたい
自律神経の乱れで血圧が下がるんですか?出血とかじゃないんですか?
防災アドバイザー
そうなんだ。だから、出血がないのに血圧が下がっている場合は、『神経』の可能性を考えないといけない。災害現場での迅速な判断が重要になるんだよ。
神経とは。
災害時に役立つ言葉「神経」について説明します。高い位置の背骨の損傷によるショックは、自律神経の乱れで血管が広がり血圧が下がることで起こります。これは血液の偏りによるショックの一種です。症状は血圧低下と脈が遅くなることで、手足の皮膚は温かく乾いています。怪我によるショックなので、まず出血によるショックでないことを確認することが大切です。治療では点滴はあまり効果がなく、頭を低くした姿勢と血管を縮める薬が効きます。脈が遅い場合は、副交感神経を抑える薬を使います。多くの場合、血圧低下は1日から2日で回復します。一方で、よく混同される脊髄ショックは、背骨の損傷による神経の症状を指します。損傷した場所より下の筋肉の張りが弱くなり、感覚がなくなり、尿が出なくなります。脊髄の反射である腱反射や皮膚反射も一時的に消えますが、数週間後から徐々に回復し、筋肉の張りも強くなって、動きにくくなります。
神経ショックとは
神経ショックは、胸の上部よりも高い位置にある脊髄が損傷することで起きる危険な状態です。交通事故などで脊髄を強く損傷すると、自律神経の働きが乱れてしまいます。自律神経は、心臓の動きや血管の収縮・弛緩など、体の機能を自動的に調節する大切な神経です。この神経の働きが乱れると、血管が広がって血液が体の中心部に集まりにくくなり、全身に十分な血液が巡らなくなります。これを血液分布異常性ショックといい、神経ショックはこの一種です。
神経ショックになると、何よりもまず血圧が下がります。これは、血管が広がって血液が体全体に行き渡らなくなるためです。また、脈拍も遅くなります。通常、血圧が下がると脈拍は速くなるものですが、神経ショックでは自律神経の乱れによって脈拍が遅くなるという特徴があります。さらに、皮膚、特に手足の先の皮膚は温かく、乾燥しているのも特徴です。これは、血管が広がって血流が滞っているにもかかわらず、皮膚に近い血管には血液が流れているためです。
神経ショックは、多くの場合、交通事故などの外傷に伴って起こります。そのため、診断が難しく、他のショック状態、特に失血によるショックと見分けることが非常に重要です。失血によるショックでは、皮膚は冷たく、湿っているのに対し、神経ショックでは温かく、乾燥しているという点に違いがあります。迅速で正確な診断と適切な治療が、救命に不可欠です。脊髄損傷が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診することが大切です。
項目 | 神経ショック | 失血性ショック |
---|---|---|
原因 | 胸椎以上の脊髄損傷による自律神経の乱れ | 出血による血液量の減少 |
血圧 | 低下 | 低下 |
脈拍 | 徐脈 | 頻脈 |
皮膚 | 温かく、乾燥 | 冷たく、湿潤 |
神経ショックの治療
神経ショックとは、急激な出来事などによる強い精神的衝撃によって、循環機能が低下し、血圧が下がってしまう状態のことを指します。ショックというと、出血を伴う外傷によるものをイメージしがちですが、精神的なストレスが原因で起こる神経ショックの場合、出血は無く、輸液による水分補給の効果はあまり期待できません。むしろ、過剰な輸液によって心臓に負担がかかってしまう場合もあります。
神経ショックの治療で重要なのは、低下した血圧を上昇させることです。そのために、頭を低くして足を高くするトレンデンブルグ体位をとります。この体位にすることで、血液が重力によって心臓に戻りやすくなり、心臓のポンプ機能を助ける効果があります。また、血管を収縮させる薬を使うことで、末梢血管を狭めて血液を心臓や脳などの重要な臓器に集め、血圧を上昇させる効果が期待できます。
神経ショックでは、脈拍が遅くなることもあります。これは、強い精神的衝撃を受けた際に、副交感神経が過剰に働いてしまうことが原因です。脈拍が遅くなると、心臓から送り出される血液量が減少し、血圧の低下につながるため、副交感神経の働きを抑えるアトロピンという薬が使用されることもあります。
多くの場合、神経ショックによる血圧の低下は24時間から48時間程度で自然に回復します。ただし、症状が重い場合は、入院して経過観察を行う必要があります。また、精神的なケアも重要です。ショックを引き起こした出来事に対する不安や恐怖を取り除き、精神的な安定を取り戻すことで、症状の改善を促すことができます。
項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 急激な出来事などによる強い精神的衝撃によって、循環機能が低下し、血圧が下がってしまう状態 |
原因 | 精神的ストレス |
症状 | 血圧低下、脈拍減少 |
治療 |
|
輸液 | 効果が薄く、過剰な輸液は心臓に負担をかけるため注意が必要 |
経過 | 多くの場合、24時間~48時間で自然回復。症状が重い場合は入院、経過観察。 |
脊髄ショックとは
脊髄ショックとは、脊髄が傷ついた時に起こる、一時的な神経の機能低下の状態を指します。交通事故や転落事故など、強い衝撃によって脊髄が損傷すると、その影響は損傷を受けた場所よりも下の神経に及びます。これは、脳からの指令が脊髄の損傷部分で遮断され、下の神経に伝わらなくなるためです。
脊髄ショックの主な症状として、まず筋肉の力が抜けてしまう弛緩性麻痺が挙げられます。これは、筋肉を動かすための神経の働きが弱まるために起こります。足を動かそうと思っても動かせない、力が入らないといった状態になります。また、皮膚の感覚がなくなるのも特徴的な症状です。熱いものや冷たいものに触れても感じない、痛みを感じないといったことが起こります。さらに、尿が自力では出せなくなる尿閉もよく見られる症状です。これは、膀胱を収縮させて尿を出すための神経の働きが損なわれることが原因です。
その他にも、膝蓋腱反射などの深部腱反射や、腹壁反射などの表在反射といった、通常であれば刺激に対して無意識に起こる反応も一時的に消失します。これらの反射は、脊髄の神経を通って行われるため、脊髄が損傷すると反射が起こらなくなります。
脊髄ショックは、数週間から数か月かけて徐々に回復していくことが多いです。損傷の程度にもよりますが、徐々に反射が戻り始め、筋肉の緊張も高まってきます。ただし、回復の過程で、筋肉が異常に緊張する痙性麻痺という状態に移行することもあります。これは、反射が過剰に起こるようになるためです。また、完全に元の状態に戻ることは難しい場合もあります。脊髄ショックは、名前が似ている神経ショック(出血などによる急激な血圧低下)とは全く異なるため、注意が必要です。脊髄への直接的な損傷が原因で起こるものであり、迅速な診断と適切な治療が重要になります。
項目 | 説明 |
---|---|
定義 | 脊髄損傷による一時的な神経機能低下 |
原因 | 交通事故、転落事故などによる強い衝撃での脊髄損傷 |
メカニズム | 損傷部より下への脳からの指令遮断 |
主な症状 | 弛緩性麻痺(筋力低下)、感覚消失、尿閉、反射消失 |
経過 | 数週間~数ヶ月で回復、痙性麻痺に移行の可能性あり、完全回復は困難な場合も |
その他 | 神経ショックとは異なる、迅速な診断と治療が必要 |
両者の違い
脊髄損傷に伴う二つの病態、神経ショックと脊髄ショック。名前は似ていますが、原因や症状、治療法は全く異なります。両者を正しく理解することは、適切な処置と後遺症の軽減に不可欠です。
まず、神経ショックは、激しい外傷や出血などによって引き起こされる自律神経系の機能障害です。自律神経系は、呼吸や循環、体温調節など生命維持に不可欠な機能を担っています。この神経系が乱れることで、血管が拡張し、血圧が急激に低下します。意識消失や脈拍の異常、皮膚の冷感なども見られます。生命に危険が及ぶため、迅速な輸液や昇圧剤投与などによる血圧管理が最優先となります。
一方、脊髄ショックは、脊髄自体が損傷を受けることで、損傷部位より下の神経機能が一時的に失われる状態です。交通事故や高所からの転落などが原因で起こります。損傷の程度によりますが、麻痺や感覚の消失、排尿・排便障害などが現れます。損傷直後は、脊髄がまるで機能停止したかのように症状が現れますが、時間経過とともに一部の機能が回復する可能性があります。治療としては、麻痺に対するリハビリテーションや排泄ケア、褥瘡(床ずれ)の予防などが必要です。また、損傷部位によっては呼吸機能にも影響が出る場合があり、人工呼吸器が必要となることもあります。
このように、神経ショックと脊髄ショックは全く異なる病態です。神経ショックは自律神経系の異常による血圧低下が中心であり、脊髄ショックは脊髄の損傷による神経機能低下が中心です。名前が似ていることから混乱しやすいですが、迅速で適切な治療を行うためには、両者の違いを理解し、的確な診断を行うことが重要です。
項目 | 神経ショック | 脊髄ショック |
---|---|---|
原因 | 激しい外傷や出血などによる自律神経系の機能障害 | 脊髄自体が損傷 |
症状 | 血管拡張、血圧急激低下、意識消失、脈拍異常、皮膚の冷感 | 麻痺、感覚消失、排尿・排便障害、呼吸機能への影響 |
治療 | 輸液、昇圧剤投与などによる血圧管理 | リハビリテーション、排泄ケア、褥瘡予防、人工呼吸器 |
その他 | 生命に危険が及ぶ | 時間経過とともに機能回復の可能性あり |
まとめ
脊髄損傷は、交通事故や転倒など、様々な原因によって引き起こされる重篤な外傷です。この損傷に伴い、神経ショックと脊髄ショックと呼ばれる二つの深刻な状態が起こることがあります。どちらも脊髄の機能障害に関連していますが、その発生機序や症状、治療法は大きく異なります。医療関係者でさえも混同しやすいこれらの状態について、正しく理解を深めることは、適切な処置と、その後の回復を良くするために非常に大切です。
神経ショックは、強い痛みや精神的衝撃、出血などによって自律神経系が乱れることで引き起こされます。自律神経系は、体の機能を自動的に調整する重要な役割を担っており、この乱れによって血管が広がり、血圧が急激に低下します。意識が薄れ、皮膚は冷たく青白くなり、脈拍は速く弱くなります。神経ショックへの対処としては、まず原因を取り除くことが重要です。出血があれば止血し、痛みがあれば和らげる処置を行います。そして、血圧を維持するために輸液や昇圧剤の投与を行います。
一方、脊髄ショックは、脊髄自体が損傷を受けたことによって、損傷部位より下の神経機能が一時的に失われる状態です。損傷の程度に応じて、麻痺や感覚の消失、排尿・排便機能の障害などが現れます。脊髄ショックの場合、損傷直後から数時間かけて症状が現れ、数週間から数ヶ月続くこともあります。治療としては、損傷による脊髄の腫れを抑えるための薬物療法や、麻痺した筋肉の萎縮を防ぐためのリハビリテーションなどが行われます。また、排尿・排便機能の管理も重要です。
神経ショックと脊髄ショックは、どちらも迅速な診断と適切な処置が必要な深刻な状態です。医療関係者は、症状や発生機序の違いを正しく理解し、的確な対応をする必要があります。患者さん自身やその家族も、これらの状態について知っておくことで、早期発見や適切な対応に繋がるため、日頃から正しい知識を身につけておくことが大切です。
項目 | 神経ショック | 脊髄ショック |
---|---|---|
原因 | 強い痛み、精神的衝撃、出血などによる自律神経系の乱れ | 脊髄自体の損傷 |
発生機序 | 自律神経系の乱れによる血管拡張、血圧低下 | 損傷部位より下の神経機能の一時的な喪失 |
症状 | 意識消失、皮膚の冷感・蒼白、速くて弱い脈拍、血圧低下 | 麻痺、感覚消失、排尿・排便障害 |
発生時期 | 損傷直後 | 損傷直後から数時間後 |
持続期間 | 比較的短時間 | 数週間~数ヶ月 |
治療 | 原因除去(止血、鎮痛)、輸液、昇圧剤 | 薬物療法(脊髄の腫脹抑制)、リハビリテーション、排尿・排便管理 |