防げる死を防ぐために

防げる死を防ぐために

防災を知りたい

先生、「予防できる死亡」ってどういう意味ですか?災害で亡くなった人はみんな助からないんじゃないんですか?

防災アドバイザー

いい質問だね。災害で亡くなる方の中には、適切な医療処置を受けられていれば助かったかもしれない方が含まれているんだよ。その方々を「予防できる死亡」と呼ぶんだ。例えば、怪我の程度がそれほど重くないのに、治療が遅れてしまったために亡くなってしまうケースなどが考えられるね。

防災を知りたい

なるほど。でも、災害時は混乱しているから、すぐに適切な処置を受けられないこともあるんじゃないですか?

防災アドバイザー

その通り。だからこそ、災害医療では、治療の優先順位を決める「トリアージ」などが重要になるんだ。限られた医療資源の中で、より多くの命を救うために、様々な工夫が必要になるんだよ。

preventable deathsとは。

災害時に、適切な医療処置が行われていれば助かったであろう命、つまり防げたはずの死について説明します。具体的には、実際に災害が起きた際に亡くなった方のうち、医療の手当てが適切に行われていれば助かったと考えられる人数を指します。災害医療では、この防げたはずの死をできるだけ少なくすることが重要です。そのためには様々な医療対策が必要ですが、特に負傷者の重症度に応じて治療の優先順位を決める「トリアージ」をはじめとする、重要な3つの対策が重要となります。

災害と防げる死

災害と防げる死

災害は、私たちの暮らしに大きな被害をもたらし、多くの尊い命を奪います。家屋や財産が失われるだけでなく、愛する家族や友人との永遠の別れを強いられることもあります。しかし、災害によって失われる命の中には、適切な処置が行われていれば助かった命もあるのです。こうした「防げたはずの死」、つまり予防可能な死亡を『防げる死』と呼びます。災害医療において、この『防げる死』を減らすことは最も重要な目標の一つです。

災害が発生すると、建物や道路が崩壊し、救助活動や医療活動の妨げとなります。また、停電や断水によって、医療機器の使用が制限されることもあります。さらに、被災者の数が医療従事者の数をはるかに上回る場合も多く、限られた医療資源をどのように活用するかが生死を分ける重要な要素となります。このような状況下では、迅速かつ的確な判断と行動が求められます。どのようなけが人がどのくらいいるのか、どのような医療処置を優先的に行うべきなのか、的確に状況を把握し、効率的に医療資源を配分していく必要があります。

災害現場で一人でも多くの命を救うためには、災害医療の知識と技術の向上が欠かせません。医療従事者だけでなく、私たち一般市民も、災害医療に関する知識を深めることが大切です。例えば、応急手当の方法や、災害時の避難方法、地域防災計画の内容などを知っておくことで、自分自身や周りの人の命を守ることに繋がります。また、日頃から防災訓練に参加したり、防災用品を備蓄しておくことも重要です。災害はいつ起こるか分かりません。だからこそ、平時からの備えが、『防げる死』を減らし、災害による被害を最小限に抑えることに繋がるのです。

災害と防げる死

命を救うための備え

命を救うための備え

災害はいつどこで起こるかわかりません。大きな地震や台風、集中豪雨など、私たちの暮らしを脅かす災害は近年増加傾向にあります。医療現場は災害時に混乱し、多くの困難に直面します。負傷者が病院に殺到し、医療体制はたちまちパンク状態に陥ります。医療従事者は限られた資源の中で、最善を尽くしますが、必要な医療機器や医薬品、そして人員が不足する事態も起こりえます。このような極限状態の中で、一人でも多くの命を守るためには、私たち一人ひとりの事前の備えが重要になります。

まず、救急処置の方法を身につけておくことは大変重要です。怪我をした人を目の前にした時、救急車が到着するまでの間、適切な応急手当を行うことで、命を救うことができるかもしれません。止血の方法や人工呼吸、心臓マッサージといった基本的な処置を学んでおきましょう。地域の消防署や自治体などが主催する講習会に参加するのも良いでしょう。また、自宅や職場に救急箱を常備し、定期的に中身を確認することも大切です。包帯や消毒液、痛み止め、常備薬など、必要なものを揃えておきましょう。救急箱の中身は家族構成や持病に合わせて調整する必要があります。

さらに、地域の防災訓練に積極的に参加し、災害発生時の避難経路や避難場所を確認しておくことも重要です。近所の人たちと協力し、助け合いの体制を作っておくことも大切です。ハザードマップで自宅周辺の危険箇所を確認し、家族で避難計画を立てておきましょう。連絡方法や集合場所などを事前に決めておくことで、混乱を防ぎ、迅速な避難行動をとることができます。日頃から災害を想定し、準備をしておくことで、いざという時に落ち着いて行動することができます。『防げる死』を減らすためにも、今からできる備えを進めていきましょう。

災害への備え 具体的な行動
救急処置の習得
  • 止血、人工呼吸、心臓マッサージなどの基本的な処置を学ぶ
  • 地域の消防署や自治体などが主催する講習会に参加する
救急箱の常備
  • 自宅や職場に救急箱を常備し、定期的に中身を確認する
  • 包帯、消毒液、痛み止め、常備薬など、必要なものを揃える
  • 家族構成や持病に合わせて中身を調整する
防災訓練への参加と避難計画
  • 地域の防災訓練に積極的に参加し、避難経路や避難場所を確認する
  • 近所の人たちと協力し、助け合いの体制を作る
  • ハザードマップで自宅周辺の危険箇所を確認する
  • 家族で避難計画(連絡方法、集合場所など)を立てておく

重要な『三つのT』

重要な『三つのT』

大きな災害が起こったとき、医療を必要とする人がたくさん出てきますが、使える医療資源には限りがあるため、少しでも多くの命を助けるには、どのような順番で治療や手当を行うか、適切な判断が必要です。そのために重要なのが『三つのT』です。

最初の『T』は、選別のことです。災害現場では、医師や看護師などの医療従事者が、けがや病気の程度に応じて治療の優先順位を決めます。これを『選別』といいます。限られた医療資源の中で、より多くの命を助けるため、一刻を争う重症の人から治療を行うようにします。選別は、災害医療において大変重要な役割を担います。

二番目の『T』は、運び出しのことです。災害現場から病院などの医療機関へ、けが人や病人を安全かつ迅速に運ぶことがとても大切です。特に、重症の人は一刻も早く適切な医療機関に運ぶ必要があります。運び出しには、救急車だけでなく、ヘリコプターや船、場合によっては自衛隊の車両なども使われます。スムーズな運び出しを行うためには、道路状況の把握や搬送ルートの確保などが重要です。

最後の『T』は、手当のことです。病院などに運ばれたけが人や病人は、医師や看護師による適切な治療を受けます。迅速で的確な手当を行うことで、命を救うだけでなく、後遺症が残るのを防ぐことにも繋がります。災害時は医療機関も大きな被害を受けている可能性があり、限られた物資や人員の中で治療にあたらなければなりません。

この『選別』『運び出し』『手当』の三つの『T』は、どれも欠かすことのできない重要な要素です。災害医療に携わる人はもちろんのこと、私たち一般の人々もこの三つの『T』の重要性を理解し、日頃から災害に備えておくことが大切です。

重要な『三つのT』

地域社会の連携

地域社会の連携

災害時には、医療関係者だけでは十分な対応をすることができません。地域社会全体で協力し、それぞれの役割を理解し、助け合うことが、多くの命を守るために不可欠です。

まず、地域住民一人ひとりができることは、災害に対する日頃からの備えです。具体的には、自宅に非常食や飲料水、救急用品などを備蓄しておくこと、避難場所や連絡方法を家族で確認しておくこと、近隣の住民と顔見知りになり、助け合える関係を築いておくことなどが挙げられます。また、自治体などが主催する防災訓練に積極的に参加し、応急手当の知識や避難行動の方法を習得しておくことも大切です。

行政機関も重要な役割を担います。災害医療体制の整備として、医療機関の連携強化や医療資材の確保、避難所の医療提供体制の構築などを進める必要があります。また、災害発生時には、正確な情報を迅速に住民に伝えるための情報伝達体制の確立も重要です。

消防や警察は、災害現場での人命救助を最優先に活動します。倒壊した建物からの救出や、火災の鎮圧、被災者の搬送など、迅速かつ的確な対応が求められます。また、災害発生直後には、現場の状況把握や情報収集を行い、他の関係機関と連携して救助活動を進める役割も担います。

これらの機関が平時からの連携を強化しておくことが、災害時のスムーズな対応につながります。例えば、関係機関合同の防災訓練や、情報共有のための連絡体制の構築、地域住民向けの防災啓発活動などを定期的に実施することが有効です。

このように、災害医療は、医療関係者だけでなく、地域住民、行政、消防、警察など、様々な関係者がそれぞれの役割を果たし、連携することで、災害から多くの命を守り、被害を最小限に抑えることができるのです。

一人ひとりの役割

一人ひとりの役割

災害は、私たちの暮らしに大きな被害をもたらす恐ろしいものです。いつ、どこで、どの程度の規模で発生するか予測することは非常に困難です。だからこそ、私たち一人ひとりが災害と災害時に必要となる医療について理解を深め、日頃から備えを万全にしておくことが大切です。

まず、自分の命を守るための知識と技術を身につけておくことが重要です。例えば、怪我人の応急処置を学ぶ講習会に参加し、救急法を習得しておきましょう。また、災害時に持ち出すための防災用品を準備しておくことも欠かせません。懐中電灯、携帯ラジオ、飲料水、食料、医薬品などは、最低3日分は用意しておくと安心です。

さらに、地域社会との連携も重要です。自治体などが主催する防災訓練に積極的に参加し、避難場所や避難経路を確認しておきましょう。また、近所の人たちと日頃からコミュニケーションを取り、災害発生時の助け合いについて話し合っておくことも大切です。顔見知りであれば、いざという時に協力しやすくなります。

災害が実際に発生した時は、冷静さを保ち、正確な情報に基づいて行動することが重要です。テレビやラジオ、自治体のホームページなどで、正しい情報をこまめに確認しましょう。デマや噂に惑わされてパニックに陥ることなく、落ち着いて行動することが大切です。周囲の人と協力し合い、助け合うことで、被害を最小限に食い止めることができます。

災害医療は、医師や看護師などの医療従事者だけが担うものではありません。地域社会全体で取り組むべき課題です。一人ひとりが自分の役割を自覚し、積極的に行動することで、災害によって亡くなる人を減らし、災害に強い社会を作ることができるのです。

災害への備え 具体的な行動
知識・技術の習得 応急処置講習会への参加、救急法の習得
防災用品の準備 懐中電灯、携帯ラジオ、飲料水、食料、医薬品など(最低3日分)
地域社会との連携 防災訓練への参加、避難場所・経路の確認、近所とのコミュニケーション、助け合いの確認
災害発生時の行動 冷静さを保つ、正確な情報に基づく行動、デマ・噂に惑わされない、周囲との協力