FAST：外傷初期診療における迅速超音波検査

FAST：外傷初期診療における迅速超音波検査

FASTとは

FAST（集中的外傷超音波検査）は、事故などで怪我をした方を診察する初期段階で、手軽かつ素早く行う超音波検査のことです。日本語では「外傷のための超音波による集中的評価法」と言います。大きな怪我を負った場合、出血によって心臓やお腹、肺の周囲に血液が溜まることがあります。FASTは、そうした体内の出血を迅速に確認するために用いられます。

この検査では、主に心臓を包む膜の袋（心嚢腔）、お腹の中（腹腔）、肺の周りの空間（胸腔）の３つの場所に液体が溜まっているかどうかを調べます。検査時間は数分程度と短く、患者さんの体への負担も少ないため、救急現場など刻一刻を争う状況でも実施可能です。FASTで血液の貯留が確認された場合は、緊急手術が必要となることもあります。逆に、血液の貯留が認められない場合は、重篤な出血の可能性は低いため、他の検査に進むことができます。

FASTは、携帯型の超音波装置を用いて行います。装置は比較的小型で持ち運びやすく、電源さえあればどこでも使用できます。そのため、事故現場や救急車内など、病院以外の場所でも検査を行うことが可能です。この迅速な検査の実施は、救命率の向上に大きく貢献します。FASTは、医療現場で広く活用されている重要な検査法と言えるでしょう。ただし、FAST単独で全ての出血を診断できるわけではありません。他の検査と組み合わせて、総合的に判断することが大切です。

検査の手順

外傷を受けた人を迅速に診察する際に、超音波検査を用いたFAST（Focused Assessment with Sonography for Trauma外傷に対する超音波検査による集中評価）は重要な役割を担っています。この検査では、体の特定の場所に超音波をあてて、体液の貯留、つまり出血の有無を調べます。出血は重篤な状態につながる可能性があるため、迅速な診断が不可欠です。

FASTでは、決まった順番で体の部位を検査していきます。まず、心臓を包む膜と心臓の間の空間である心膜腔を調べます。次に、肝臓と右の腎臓の間の空間であるモリソン窩を検査します。ここは腹腔内で最も低い位置にあるため、出血が最初にたまりやすい場所です。続いて、右側の胸腔、脾臓の周りの空間である脾周囲、左側の胸腔、そして直腸と膀胱の間の空間であるダグラス窩の順に検査を行います。ダグラス窩は女性の場合は子宮と直腸の間の空間を指し、同じく出血がたまりやすい場所です。

この検査の順番は、体の構造上、出血がたまりやすい場所を効率的にチェックできるように考えられています。もしこれらの場所に体液の貯留が確認された場合、深刻な内出血の可能性が高いため、迅速な処置が必要となります。

FASTは、数分程度で完了するため、短時間で患者の状態を把握することができます。この迅速な診断は、救命処置の開始を早め、救命率の向上に貢献します。また、体に負担の少ない検査であるため、緊急時における負担を最小限に抑えることができます。FASTは、医療現場において、迅速かつ効果的な外傷評価ツールとして広く活用されています。

検査の目的

外傷を受けた患者さんの場合、血液の循環に異常が見られると、出血はどこからでどのくらい出血しているのかを素早く把握することがとても重要です。この迅速な診断を可能にするのが、FASTと呼ばれる検査方法です。FASTは、超音波を使って体の中を調べることで、出血している場所や出血量を推定することができます。

出血が疑われる場合は、一刻も早く出血を止める必要があります。FASTは短時間で結果が分かるため、迅速な止血処置に繋がり、救命率の向上に大きく貢献します。また、FASTは出血しているかどうかだけでなく、その出血によって患者さんがショック状態に陥る可能性があるかどうかを判断するのにも役立ちます。ショック状態とは、全身の組織に十分な酸素が行き渡らなくなる危険な状態で、適切な処置を迅速に行う必要があります。

FASTで得られた情報は、患者さんにとって最適な治療方針を決定するための重要な手がかりとなります。例えば、開腹手術が必要かどうか、輸血が必要かどうかなど、FASTの結果に基づいて判断することができます。FASTは、体に負担の少ない検査でありながら、迅速な診断と適切な治療に繋がるため、外傷を受けた患者さんの救命において非常に重要な役割を担っています。検査時間も短く、患者さんへの負担も少ないため、緊急時における初期診療において非常に重要な検査方法と言えるでしょう。

検査の利点

脳卒中の初期診断に用いられるFAST（顔、腕、言葉、時間）という検査には、いくつもの利点があります。まず挙げられるのは、その迅速さと簡潔さです。FASTは特別な機器や事前の準備を必要とせず、患者のいる場所で手軽に行うことができます。そのため、医療機器や人員が不足している救急現場や災害現場といった状況でも実施可能です。検査にかかる時間も短く、限られた時間の中で患者の状態を素早く把握するのに役立ちます。

二つ目の利点として、患者への負担が少ないことが挙げられます。FASTは身体を傷つけるような侵襲的な検査ではなく、患者に苦痛を与えることもほとんどありません。そのため、必要に応じて繰り返し検査を行うことも容易です。脳卒中は発症からの時間が経過するほど後遺症が残るリスクが高まるため、迅速な診断と治療開始が重要です。FASTは繰り返し行える手軽さから、変化を見逃さず、より適切な処置につなげることができます。

さらに、FASTは初期診療における情報収集に大きく貢献します。医療従事者はFASTの結果から脳卒中の可能性を迅速に判断し、より詳細な検査や治療方針の決定に役立てることができます。FAST単体で確定診断を行うことはできませんが、初期診療において迅速なトリアージを行うための有効な手段となります。FASTによって早期に脳卒中の疑いがあれば、専門医療機関への搬送などの必要な措置を迅速に開始することができます。このように、FASTは迅速性、簡潔さ、患者への負担の少なさという点で優れた検査方法であり、脳卒中の初期診療において重要な役割を担っています。

検査の限界

外傷における迅速超音波検査、いわゆるFASTは、手軽さと迅速さで重宝される検査方法です。一刻を争う外傷現場において、短時間で体内の出血を診断できるFASTは非常に有用です。しかし、FASTは万能ではありません。その限界を理解し、他の検査方法と組み合わせることで、より正確な診断に繋げることが重要です。

まず、FASTでは皮下気腫、つまり皮膚の下に空気が溜まった状態があると、胸腔内に液体が溜まっているかどうかを正確に見極めるのが難しくなります。皮下気腫があると超音波が乱反射し、胸水と誤認してしまう可能性があるためです。この場合、FAST単独での判断は避け、胸部エックス線撮影などの追加検査を検討する必要があります。

また、FASTは全ての症例において胸部エックス線撮影の代わりになるわけではありません。胸部エックス線撮影では、肋骨骨折や肺の損傷など、FASTでは捉えられない情報を得ることができます。そのため、FASTで異常が認められなくても、患者の容態変化に注意深く気を配り、必要に応じて胸部エックス線撮影などの追加検査を行うことが不可欠です。

さらに、FASTでは検出できない病態も存在します。例えば、腸管損傷はFASTでは発見が困難です。腸管は空気を多く含んでおり、超音波が通りにくいためです。他にも、後腹膜腔の出血や横隔膜の損傷など、FASTでは見逃される可能性のある病態があります。

このように、FASTは迅速な診断に役立つ一方、限界も存在します。そのため、FASTの結果だけを鵜呑みにせず、他の検査結果や患者の症状、容態変化などを総合的に判断し、適切な治療方針を決定することが重要です。検査の特性を理解し、適切に活用することで、より質の高い医療を提供できます。

繰り返し検査の重要性

外傷を受けた際に、損傷の有無や程度を迅速に評価するために、超音波を用いた検査が広く行われています。この検査は、集中治療室、救急外来、そして事故現場など、様々な場所で活用されています。検査の中でも、Focused Assessment with Sonography for Trauma（FAST）と呼ばれる方法は、特に重要です。この方法は、お腹や胸の中に液体が溜まっているかどうかを素早く確認できるため、緊急性の高い状況において非常に役立ちます。FAST検査は迅速で簡便な検査方法ですが、一度検査を行って異常がないと判断された場合でも、安心はできません。なぜなら、時間の経過とともに、身体の状態は変化する可能性があるからです。例えば、出血は直後には少量であっても、時間とともに徐々に進行し、量が増えることがあります。また、最初の検査時には見逃されていた小さな出血が、後になって重大な問題に発展する可能性も否定できません。

特に、血圧や脈拍などの循環の状態が不安定な患者さんの場合は、より注意深く観察し、繰り返し検査を行うことが極めて重要です。このような患者さんは、身体の状態が急激に悪化するリスクが高いため、初期の検査結果だけで判断せず、定期的にFAST検査を繰り返す必要があります。最初の検査で異常が見つからなくても、数時間後、あるいは数十分後には状態が悪化している可能性があるため、継続的な観察と繰り返し検査が欠かせません。

繰り返し検査を行うことで、身体の状態の変化を早期に発見し、適切な処置につなげることができます。早期発見は、救命率の向上や後遺症の軽減に大きく貢献するため、たとえ最初の検査で異常がなくても、繰り返し検査を行うことの重要性を忘れてはなりません。医療現場では、患者さんの状態を注意深く見守り、必要な場合には速やかに追加検査を行うことで、最善の治療を提供できるよう努めています。