多発外傷:命を守るための初期対応

多発外傷:命を守るための初期対応

防災を知りたい

先生、『多発外傷』ってどういう意味ですか?

防災アドバイザー

簡単に言うと、体のいくつかの場所に重い怪我をしている状態のことだよ。例えば、頭と足、お腹など複数の場所に同時に怪我をしている状態だね。

防災を知りたい

複数の場所に怪我をしている…なんとなく分かりました。 重い怪我って、どのくらい重い怪我なんですか?

防災アドバイザー

怪我の重さを数字で表す『AIS』というものがあって、3以上の怪我を複数箇所負っている場合を『多発外傷』と言うんだ。多発外傷の場合、それぞれの怪我は関係しあって悪化していくから、一つの場所に集中した治療ではなく、全身の状態を見ながら優先順位を決めて治療していくことが大切なんだよ。

多発外傷とは。

からだの複数の場所にひどいけがをしている状態を『多発外傷』といいます。たとえば、あたま、くび、むね、おなか、こし、てあしといったからだの部分のうち、いくつもの場所に重いけがをしている状態です。ナイフや刃物によるけがよりも、ぶつかったり、おちたりすることによるけがの方が多いです。けがのひどさをはかる方法として、からだのそれぞれの場所のけがの程度をみるAISという点数があります。たいていは、AISの点数が3点以上のけがが複数の場所にある場合を『多発外傷』といいます。それぞれの場所のけがはおたがいにえいきょうしあって、より重症化していくため、それぞれの臓器や場所ごとに専門の科で治療するのでは、いのちをすくうのがむずかしいです。そのため、けがの治療では、はじめから『多発外傷』かもしれないと考えて、からだ全体の状況をみて、どの治療を優先するのかを決めることがとても大切です。そのためにも、それぞれの場所のけがをくわしく調べたり、治療することにこだわらず、いのちにかかわるけがへの処置を最優先でおこなうようにします。

多発外傷とは

多発外傷とは

多発外傷とは、強い衝撃によって体の複数の部位が同時に損傷を受けた状態を指します。交通事故や高所からの転落、自然災害など、大きなエネルギーが体に作用することで発生し、命に関わる重篤な状態となる可能性が高い外傷です。頭、首、胸、腹部、骨盤、手足など、体のどこにでも損傷が起こりうるため、迅速な診断と治療が求められます。

多発外傷の怖いところは、個々の損傷が軽度であっても、複数箇所で重なることで互いに悪影響を及ぼし合い、全身状態を急速に悪化させる点にあります。例えば、肋骨の骨折と肺の損傷が同時に起こった場合、呼吸機能が著しく低下し、酸素不足に陥る危険性があります。また、骨盤骨折を伴う場合、大量の出血が起こり、ショック状態に陥る可能性も高まります。このように、多発外傷は個々の損傷の重症度だけでなく、複数の損傷が複雑に絡み合うことで、より深刻な状態を引き起こすことを理解しておく必要があります。

さらに、多発外傷では、一つの部位の損傷が他の部位の診断や治療を難しくすることもあります。例えば、意識障害がある場合、他の部位の痛みや異常を訴えることができず、隠れた損傷を見逃してしまう可能性があります。そのため、多発外傷を負った患者には、全身をくまなく診察し、あらゆる可能性を考慮した綿密な検査を行うことが不可欠です。早期発見と適切な処置が、救命率の向上に大きく貢献します。そのためにも、多発外傷の危険性と特徴を理解し、事故や災害発生時には迅速な対応を心がけることが重要です。

項目 内容
定義 強い衝撃による複数部位の同時損傷
原因 交通事故、高所からの転落、自然災害など
損傷部位 頭、首、胸、腹部、骨盤、手足など全身
危険性
  • 個々の損傷が軽度でも、複数箇所で重なると互いに悪影響を及ぼし合い、全身状態を急速に悪化させる。
  • 例:肋骨骨折 + 肺損傷 → 呼吸機能低下、酸素不足
  • 例:骨盤骨折 → 大量出血、ショック状態
  • 一つの部位の損傷が他の部位の診断や治療を難しくする。
  • 例:意識障害 → 隠れた損傷の見逃し
対応 迅速な診断と治療、全身くまなく診察、綿密な検査、早期発見と適切な処置

損傷の評価方法

損傷の評価方法

怪我の程度を正確に測ることは、迅速で適切な処置を行う上でとても大切です。そのためには、体のどの部分が、どのくらい傷ついているかを数値で表す必要があります。この数値化に役立つのが、略式損傷尺度、いわゆるAISと呼ばれる方法です。

AISでは、体の各部位の損傷状態を1から6までの段階で評価します。1は軽い擦り傷程度、6は命に関わる重篤な状態を表します。3以上の数値は、深刻な損傷を示唆しており、複数の部位で3以上の損傷が見られる場合、多発外傷と呼ばれます。多発外傷は、それぞれの傷が複雑に絡み合い、命の危険も高いため、より慎重な対応が必要です。

AISを用いることで、傷の程度を客観的に判断できるだけでなく、最適な治療方針を決めるのにも役立ちます。例えば、AISが3以上の損傷が複数箇所に見られる場合は、集中的な治療が必要になりますし、特定の部位に重度の損傷がある場合は、専門的な処置が必要になることもあります。

傷の程度だけでなく、損傷を受けた部位の組み合わせも非常に重要です。たとえば、頭と胸に重い損傷がある場合、呼吸の管理と脳の圧力の管理を同時に行う必要があり、より高度な医療体制が欠かせません。同じAISの数値であっても、損傷の部位によって、救命処置の優先順位や治療方法が変わってくるため、総合的な判断が求められます。適切な治療と救命活動のためには、損傷の程度を数値化し、損傷部位の組み合わせを考慮した上で、迅速かつ的確な判断を行うことが不可欠です。

AISコード 損傷の程度 多発外傷 治療方針
1 軽傷(例:擦り傷) 該当なし 軽度の処置
2 中等度の損傷 一般的な処置
3 重度の損傷 該当
(複数部位でAIS3以上)
集中的な治療、専門的処置、高度な医療体制が必要
4 非常に重度の損傷
5 生存の危機がある損傷
6 致命的損傷

初期対応の重要性

初期対応の重要性

大きな怪我を複数同時に負った場合、最初の処置が生死を分ける大きな決め手となります。一刻も早く、かつ的確な処置を行うことが、生存率に大きく影響します。そのため、最初の段階から多くの怪我を負っている可能性を常に考えながら対応することが欠かせません。特に、現場で活動する救急隊員と、病院で治療にあたる医療スタッフの協力が非常に重要です。

まず、事故現場では、呼吸を確保すること、出血を止めること、そしてショック状態への対応など、命を守るための緊急処置を最優先に行います。その後、すぐに病院へ運び、全身の状態を調べて、より詳しい検査を行います。この時、個々の怪我の診断や治療にこだわるのではなく、全身の状態を最優先に考え、命に関わる怪我への処置を優先することが重要です。例えば、出血の量が多い場合は、まずは止血処置を最優先に行い、その後で骨折などの治療を行うといった判断が必要となります。

病院に到着後も、医師や看護師など、多くの医療スタッフによる組織的な対応が必要です。それぞれの専門知識を生かしながら、患者の状態を常に把握し、適切な処置を迅速に行うことが重要となります。また、家族への連絡や精神的なケアも忘れてはなりません。大きな怪我を負った患者は、肉体的な苦痛だけでなく、精神的な不安も抱えていることが多いため、心のケアも大切な初期対応の一つと言えるでしょう。このように、多くの怪我を負った際の初期対応は、現場での適切な処置から病院での全身管理、そして精神的なケアまで、多岐にわたる対応が必要です。それぞれの段階で迅速かつ的確な処置を行うことで、救命率の向上と後遺症の軽減につながります。

段階 処置 ポイント
事故現場 呼吸確保、止血、ショック状態対応 命を守る緊急処置を最優先
搬送中 病院への迅速な搬送 全身状態の観察
病院到着時 全身状態の検査、命に関わる怪我の優先処置 個々の怪我の診断・治療にこだわらず、全身状態を最優先
病院治療 組織的な医療対応、迅速な処置、家族への連絡、精神的なケア 専門知識を生かした連携、心のケアも重要な初期対応

専門的な治療の必要性

専門的な治療の必要性

大きな怪我を複数同時に負う、多発外傷。命を守るため、そして後遺症を少なくするために、それぞれの分野に精通した医師による専門的な治療が必要不可欠です。

例えば、事故で骨が折れて内臓も損傷した場合、骨を専門とする整形外科医と、内臓を専門とする外科医の両方が必要です。もし頭にも怪我を負っていたら、脳神経外科医も治療に加わります。このように、多発外傷の治療には、各診療科の専門家がそれぞれの知識と技術を持ち寄り、力を合わせて治療にあたる「集学的治療」が重要になります。それぞれの専門家が連携することで、救命の可能性を高め、後遺症を最小限に抑えることに繋がります。

多発外傷の治療は、手術や緊急処置の後も長期にわたる入院が必要となる場合が少なくありません。身体が元の状態に戻るように、リハビリテーションも重要な役割を担います。怪我をした部分だけでなく、他の部分の機能低下を防ぐ訓練や、日常生活に必要な動作の練習などを行います。そして、身体の回復と同じように心のケアも大切です。大きな怪我や入院生活は、患者にとって精神的な負担となります。医療スタッフによる心のケアはもちろん、家族や地域社会の支えも、回復への大きな力となります。

多発外傷は、患者本人だけでなく、その家族にも大きな負担をかけます。治療費や生活費の負担、介護の負担など、様々な困難に直面します。そのため、医療機関だけでなく、行政や地域社会全体で、患者とその家族を支える体制を整えることが重要です。経済的な支援、介護のサポート、社会復帰の支援など、多角的な支援が必要です。多発外傷という困難を乗り越えるためには、社会全体で支え合う仕組みが求められます。

専門的な治療の必要性

まとめ

まとめ

複数の体の部位に重い怪我を負うことを多発外傷といいます。交通事故や自然災害などで起こりやすく、命にかかわる危険な状態です。一刻を争うため、迅速で的確な処置が求められます。

まず、怪我の程度を詳しく調べ、全体の緊急度を判断することが大切です。呼吸ができているか、心臓は動いているか、出血しているかなど、生命に直接関わる部分を最優先に確認し、応急処置を行います。多発外傷は、それぞれの怪我の重さに加えて、複数の怪我がお互いに影響し合い、より深刻な状態となることがあります。例えば、骨盤骨折と合わせて内臓損傷が起きていると、出血がひどくなり、命の危険がさらに高まります。

多発外傷の治療には、外科、整形外科、脳神経外科など、様々な分野の専門医が協力して治療にあたることが欠かせません。それぞれの専門家が連携し、患者さんの状態に合わせた最適な治療計画を立て、実行します。また、治療後も長期的な機能回復訓練が必要となる場合が多く、医療関係者だけでなく、家族や地域社会全体で患者さんを支えることが重要です。

多発外傷は、患者さん本人だけでなく、家族にも大きな負担がかかります。経済的な問題や精神的な苦痛など、様々な困難に直面する可能性があります。社会全体で多発外傷の患者さんとその家族を支える仕組みを整え、必要な支援を提供していくことが求められています。一人でも多くの命を救い、後遺症を最小限に抑えるためには、適切な初期対応と、専門家による集中的な治療、そして社会全体の支援が重要です。

項目 内容
定義 複数の体の部位に重い怪我を負う状態
原因 交通事故や自然災害など
緊急度 命にかかわる危険な状態
初期対応
  • 怪我の程度を詳しく調べる
  • 全体の緊急度を判断する
  • 生命に直接関わる部分(呼吸、心臓、出血)を最優先に確認し、応急処置を行う
特徴 複数の怪我がお互いに影響し合い、より深刻な状態となることがある (例: 骨盤骨折と内臓損傷の合併による出血悪化)
治療
  • 外科、整形外科、脳神経外科など、様々な分野の専門医が協力
  • 患者さんの状態に合わせた最適な治療計画を立て、実行
  • 治療後も長期的な機能回復訓練が必要となる場合が多い
支援
  • 医療関係者だけでなく、家族や地域社会全体で患者さんを支えることが重要
  • 経済的な問題や精神的な苦痛など、様々な困難への対応
  • 社会全体で患者さんとその家族を支える仕組みを整え、必要な支援を提供