命に関わる緊張性気胸:緊急時の対処法
防災を知りたい
緊張性気胸って、普通の気胸と何が違うんですか?
防災アドバイザー
良い質問ですね。普通の気胸は、肺に穴が開いて空気が漏れることで肺がしぼむ状態ですが、緊張性気胸は、その穴が一方通行の弁のようになっていて、息を吸うたび胸腔内に空気が入り込み、吐くときに空気が出られない状態です。そのため、胸腔内の圧力が高まり続けることが大きな違いです。
防災を知りたい
胸腔内の圧力が高まり続けるとどうなるんですか?
防災アドバイザー
肺がしぼむだけでなく、心臓や血管も圧迫されて、血液の流れが悪くなります。血圧が下がり、ショック状態に陥り、最悪の場合、死に至ることもあります。だから、迅速な処置が必要なんです。
緊張性気胸とは。
災害時や防災に関係する言葉である「緊張性気胸」について説明します。気胸の一種で、肺の周りの空気が異常にたまり、肺がしぼんでしまう病気です。この状態になると、肺だけでなく、横隔膜が下にさがったり、心臓が健康な側にずれたり、心臓から送り出される血液の量が減ったりします。そのままにしておくと、血圧が下がり、ショック状態に陥って非常に危険な状態になることもあります。
胸に穴があいたり、肺が傷ついたりすると、そこから空気が肺の周りに漏れ出ていきます。この時、空気が入ってくる時は穴が開いていて、空気を外に出す時には穴が閉じる、まるで一方通行の弁のような状態になってしまうことがあります(弁状気胸)。空気がどんどん肺の周りにたまる一方なので、肺の周りの圧力は上がり続け、緊張性気胸を引き起こします。
特に、人工呼吸器や手動の呼吸補助器具を使っている時は、緊張性気胸になりやすいので注意が必要です。器具を使い始めた途端に、急速に症状が現れることもあります。緊張性気胸は、緊急の医療現場で突然死につながる原因の一つです。処置が遅れると、心臓が止まってしまう危険性もあります。そのため、緊張性気胸の疑いがある場合は、レントゲン検査で確定診断を待たずに、すぐに肺の周りの空気を抜く処置をする必要があります。
災害現場など病院に到着する前の段階では、胸に開いた傷をビニールで覆って、空気が肺の周りに入らないようにするのが良いとされています。
緊張性気胸とは
緊張性気胸は、肺に穴があき空気が肺の外、胸の中に出ることで肺がしぼんでしまう病気の一つである気胸の中でも、特に命に関わる危険な状態です。肺を包む胸膜には、内臓を覆う壁側胸膜と肺の表面を覆う臓側胸膜の二種類があり、通常は肺はこれら二枚の胸膜の間に薄い液体の膜によってぴったりとくっついています。しかし、肺に穴があくと、肺から空気が漏れ出し、この二枚の胸膜の間に空気がたまっていきます。これが気胸です。
緊張性気胸では、この肺の穴が弁の役割を果たしてしまい、息を吸う時に胸の中に空気が入り込みますが、息を吐く時には空気が出てこらず、胸の中に空気がどんどん溜まっていきます。まるで空気の抜けない穴の開いた風船に、ポンプで空気を入れ続けているようなものです。この結果、胸の中の圧力(胸腔内圧)が異常に高くなり、肺だけでなく心臓や血管なども圧迫されてしまいます。
心臓や血管が圧迫されると、全身に血液を送るポンプとしての心臓の働きが弱まり、血液の循環が悪くなります。これは、血圧の低下やショック状態(脈拍が速くなり、冷や汗をかき、意識が薄れていく状態)につながり、最悪の場合、心停止に至ることもあります。
緊張性気胸は一刻を争う状態であり、一刻も早く胸の中の空気を抜く処置をしなければなりません。針を胸に刺して空気を抜く応急処置がとられることもあります。その後、管を胸に挿入し、空気を排出する持続的な排気を行います。根本的な治療には、手術が必要になる場合もあります。早期発見と迅速な対応が、救命に繋がる重要な鍵となります。
症状と兆候
緊張性気胸は、胸腔内に空気が漏れ出て肺が圧迫されることで呼吸困難を引き起こす病気であり、迅速な処置が必要な緊急性の高い状態です。初期症状としては、息切れや胸の痛みなどが見られます。これは、肺が圧迫されることで十分な酸素を取り込めなくなるために起こります。痛みは、圧迫された肺や胸膜の刺激によって発生し、鋭い痛みや鈍い痛みなど様々です。
これらの初期症状に続いて、病状が進行すると呼吸困難が悪化します。呼吸が速くなったり浅くなったり、息を吸う際に肩で息をするような状態になることもあります。さらに、酸素不足が進むと、顔色や唇の色が悪くなります(チアノーゼ)。これは、血液中の酸素が不足することで、皮膚や粘膜の色が青紫色になる現象です。同時に、脈拍は速く弱くなり、血圧も低下していきます。これは、心臓が酸素不足を補おうとして激しく拍動するものの、肺の機能低下により十分な酸素を送り出せないために起こります。
重症化すると、首の血管が腫れあがることもあります。これは、胸腔内圧の上昇により血液が心臓に戻りにくくなることで起こります。また、酸素不足は脳にも影響を及ぼし、意識がもうろうとしたり、最悪の場合には意識を失うこともあります。
特に、人工呼吸器装着時やバッグバルブマスクによる補助換気開始直後に緊張性気胸を発症するケースもあるため、医療従事者は細心の注意を払う必要があります。このような状況では、些細な異変も見逃さず、患者の呼吸状態、顔色、脈拍、血圧などを注意深く観察し、緊張性気胸の兆候を早期に発見することが重要です。迅速な判断と対応が、患者の救命につながります。
症状の進行段階 | 症状 | 原因 |
---|---|---|
初期症状 | 息切れ | 肺が圧迫され、十分な酸素を取り込めないため |
胸の痛み(鋭い痛み、鈍い痛みなど) | 圧迫された肺や胸膜の刺激 | |
呼吸困難(呼吸が速く浅くなる、肩で息をする) | 肺の圧迫による酸素摂取不足の悪化 | |
進行した症状 | チアノーゼ(顔色や唇の色が悪くなる) | 血液中の酸素不足 |
脈拍が速く弱くなる | 心臓が酸素不足を補おうとして激しく拍動するが、肺の機能低下により十分な酸素を送り出せないため | |
血圧低下 | 同上 | |
首の血管の腫れ | 胸腔内圧の上昇により血液が心臓に戻りにくくなるため | |
重症化 | 意識障害(もうろう、意識消失) | 脳への酸素供給不足 |
人工呼吸器装着時やバッグバルブマスクによる補助換気開始直後に緊張性気胸を発症するケース | 医療従事者の注意深い観察が必要 |
緊急時の対処
緊急事態に遭遇した時、落ち着いて行動することが大切です。特に、緊張性気胸は、一刻を争う事態であり、迅速かつ的確な対応が求められます。緊張性気胸とは、肺に穴が開き、空気が胸腔内に漏れ出てしまうことで、肺が圧迫され、呼吸困難や血圧低下を引き起こす危険な状態です。もしも、怪我などで胸に鋭い痛みを感じ、呼吸が苦しいなどの症状が現れた場合、緊張性気胸の可能性を疑い、直ちに救急車を要請するか、医療機関に連絡し指示を仰ぎましょう。
医療機関では、胸腔ドレナージと呼ばれる処置を行います。これは、胸腔にチューブを挿入し、溜まった空気を排出することで、肺の圧迫を解除し、呼吸機能を回復させるための処置です。この処置は、専門的な知識と技術を要するため、必ず医療従事者によって行われます。
救急隊の到着を待つ間、あるいは医療機関への搬送途中において、患者の容態が急激に悪化した場合、一時的な応急処置として、太い針を胸腔に挿入して空気を抜く処置がとられることもあります。ただし、この処置も医療従事者、特に救急救命士や医師といった専門家が行うべきものであり、一般市民が勝手に行うのは大変危険です。誤った処置は、更なる容態悪化を招く恐れがあります。慌てず、救急隊の到着を待ち、専門家による適切な処置を受けることが重要です。日頃から、緊急時の連絡先を確認しておくこと、落ち着いて行動できるよう心構えをしておくことが大切です。
状態 | 症状 | 行動 | 処置 | 注意事項 |
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緊急事態(緊張性気胸) | 胸の鋭い痛み、呼吸困難、血圧低下 | 1. 救急車を要請 2. 医療機関に連絡し指示を仰ぐ |
1. 胸腔ドレナージ 2. (応急処置)太い針を胸腔に挿入して空気を抜く |
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現場での応急手当
災害現場では、一刻も早い救命処置が求められます。なかでも、呼吸に関わる傷は命に直結するため、適切な応急手当が不可欠です。胸部に開放創があり、呼吸のたびに空気が出入りしているのが確認できた場合は、すぐに処置を始めましょう。これは、外気が胸腔内に入り込むことで肺が圧迫され、呼吸困難に陥るのを防ぐためです。
まず、傷口を覆うのに適したものを探します。理想は滅菌されたガーゼですが、災害現場では入手が難しい場合もあります。そのような場合は、清潔なビニール袋などを代用できます。ビニール袋がない場合は、清潔な布やタオルでも構いません。大切なのは、傷口を覆って外気との接触を遮断することです。
傷口に覆うものを当てたら、テープで固定します。この時、四辺すべてを固定してはいけません。三辺を固定し、一辺は開放した状態を保つようにします。四辺すべてを固定してしまうと、胸腔内に空気が閉じ込められ、肺が圧迫される危険性があるからです。開放した一辺から、胸腔内に溜まった空気が排出されるようにします。
この処置は、あくまで一時的な応急処置です。けっして、これだけで安心せずに、できるだけ早く医療機関へ搬送する必要があります。救急隊員や医療関係者に、行った処置の内容を伝えることも大切です。搬送中は、患者の状態を注意深く観察し、異変があればすぐに対応しましょう。また、患者の保温にも気を配りましょう。体温の低下は、患者の状態を悪化させる要因となります。毛布や衣服などで保温に努めましょう。これらの応急処置と適切な搬送によって、救命の可能性を高めることができます。
予防と早期発見の重要性
胸腔内に空気が漏れ出て肺が圧迫される病気、緊張性気胸。これは、肺に病気を抱えている人や、胸にけがをした人がかかりやすい病気です。
日頃から健康に気を配り、定期的に健康診断を受けることで、肺の病気を早く見つけ、適切な治療を受けることが大切です。
例えば、スポーツなどで胸に強い衝撃を受けた時は、すぐに病院に行き検査を受けましょう。早期発見と適切な治療によって、病気が重くなるのを防ぐことができます。
医療に携わる人は、人工呼吸器をつけたり、手動の換気補助を始めたりする時など、緊張性気胸になりやすい場面では、患者の様子を注意深く見て、早期発見に努める必要があります。
具体的には、患者の呼吸が苦しくないか、胸の動きが左右対称か、皮膚や唇の色に変化がないかなどを観察します。聴診器を使って、呼吸音を左右で比較することも重要です。もし、片方の肺の音だけが聞こえにくい、または全く聞こえない場合は、緊張性気胸の可能性があります。
また、患者が胸の痛みや息苦しさを訴えた場合は、すぐに医師に報告し、指示に従って適切な処置を行う必要があります。些細な変化も見逃さないことが、命を救うことにつながります。
医療現場では、常に緊張性気胸のリスクを念頭に置き、迅速で正確な判断と行動が求められます。患者さんの安全を守るため、医療従事者一人ひとりが、高い意識を持って業務にあたることが重要です。
対象者 | 緊張性気胸への対策 |
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肺の病気を持つ人、胸に怪我をした人 |
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医療従事者 |
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