高浸透圧非ケトン性昏睡:糖尿病の危険な合併症

高浸透圧非ケトン性昏睡:糖尿病の危険な合併症

防災を知りたい

先生、『高浸透圧非ケトン性昏睡』って、糖尿病の合併症で、ケトアシドーシス性昏睡と似ているけど、高齢者に多いんですよね?何が違うんですか?

防災アドバイザー

そうだね。どちらも糖尿病の合併症で高血糖による昏睡状態になるけれど、大きな違いはケトン体の有無と血液の酸性度だよ。ケトアシドーシス性昏睡ではケトン体が多く作られ、血液が酸性に傾く。高浸透圧非ケトン性昏睡ではケトン体は少なく、血液の酸性度はあまり変化しないんだ。

防災を知りたい

なるほど。じゃあ、症状にも違いはあるんですか?

防災アドバイザー

症状はどちらも似ていて、口の渇きや吐き気、意識障害などがある。だけど、高浸透圧非ケトン性昏睡は高齢者に多く、脱水症状がより強く出る傾向があるね。だから、治療では水分補給が特に重要になるんだよ。

高浸透圧非ケトン性昏睡とは。

災害時に気をつけたい病気の一つに「高浸透圧非ケトン性昏睡」というものがあります。これは、糖尿病の合併症で、血糖値が非常に高くなることで起こる昏睡状態の一つです。もう一つの高血糖による昏睡である「ケトアシドーシス性昏睡」と合わせて覚えておきましょう。この病気は、体の水分がひどく失われ、吐き気や嘔吐、お腹の痛み、意識を失うなどの症状が現れます。細菌やウイルスによる感染症、手術、たくさんのカロリーを含む点滴、ステロイド剤や血圧を下げる利尿剤などがきっかけで発症することが多いです。ケトアシドーシス性昏睡よりも、お年寄りに多く見られます。血液の酸性度や遊離脂肪酸はあまり変化しませんが、血液や尿の中のケトン体は、検出されないか、検出されても少量です。血液中の塩化ナトリウムや尿素窒素の値は高く、血液の浸透圧は350mOsm/l以上、血糖値は600〜1500mg/dlにもなります。初期症状としては、のどの渇き、疲れ、吐き気、嘔吐などがあり、これといった特徴はありません。意識を失うだけでなく、震えや痙攣など、様々な神経症状が現れることもあります。治療としては、たくさんの水分を点滴(生理食塩水の半分程度の濃度のものや、生理食塩水)したり、インスリンを注射したり、不足している電解質(特にカリウム)を補ったりします。

病態について

病態について

高浸透圧非ケトン性昏睡は、糖尿病の合併症の一つで、命に関わる危険な状態です。この病態は、血液中の糖分が極めて高濃度になることで引き起こされます。名前の通り、ケトン体と呼ばれる物質は作られません。似たような状態にケトアシドーシス性昏睡がありますが、こちらはケトン体が作られることが大きな違いです。

高浸透圧非ケトン性昏睡は、体内の水分が著しく失われることで意識障害に陥ります。血液中の糖分が過剰になると、腎臓を通して糖分が尿中に排出されます。この時、水分も一緒に排出されるため、脱水状態を引き起こすのです。さらに、のどの渇きを感じにくくなるため、水分を十分に摂ることができず、脱水が悪化し、意識が混濁していきます。

この病態は、高齢の糖尿病患者に多く見られます。特に、感染症にかかったり、手術を受けたり、特定の薬を服用したことがきっかけで発症することがあります。高カロリーの点滴やステロイド剤、一部の血圧を下げる利尿剤などが、発症の危険性を高める薬の例です。

高浸透圧非ケトン性昏睡の怖いところは、自覚症状が少ないことです。そのため、患者さん自身が異変に気づくのが難しく、周囲の人が異変に気づき、迅速な対応をすることが重要です。初期症状としては、口の渇きや多尿、倦怠感などが見られますが、これらの症状は他の病気でも見られるため、見過ごされやすいのです。症状が進むと、意識が混濁し、反応が鈍くなり、最終的には昏睡状態に陥ります。もし、糖尿病患者でこのような症状が見られた場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。

項目 内容
病名 高浸透圧非ケトン性昏睡
危険度 命に関わる危険な状態
原因 極めて高濃度の血糖による体液中の水分の喪失
ケトン体 作られない
好発年齢層 高齢の糖尿病患者
誘因 感染症、手術、特定の薬(高カロリー点滴、ステロイド、一部の利尿剤など)
初期症状 口の渇き、多尿、倦怠感
進行した症状 意識混濁、反応の鈍化、昏睡
注意点 自覚症状が少ないため、周囲の人の観察と迅速な対応が重要

症状と兆候

症状と兆候

高浸透圧非ケトン性昏睡は、初期には自覚症状が乏しいため、発見が遅れがちです。最初のうちは、のどの渇きを訴えたり、体がだるい吐き気がするといった、比較的軽い症状が現れます。これらの症状は、日常生活でよくあるため、病気の兆候として見過ごされることが少なくありません。そのため、早期発見の大きな妨げとなっています。

しかし、病状が進むにつれて、度々吐くおなかが痛むといった症状が現れ、さらに意識がぼんやりするようになります。意識障害は、最初は軽い傾眠状態から始まり、徐々に昏睡状態へと進行します。また、手足が突っ張る体が震えるといった神経症状が現れることもあります。これらの症状は、高浸透圧非ケトン性昏睡の深刻な状態を示しており、すぐに病院で診てもらう必要があります。

特にお年寄りは、症状がはっきりと現れにくく、また、体の不調を訴えることが少ないため、発見がさらに遅れる傾向があります。そのため、家族や周囲の人は、いつもと様子が違う、例えば、元気がない、話が通じない、ふらつくといった兆候に気づいたら、すぐに病院に相談することが重要です。早期発見と適切な治療によって、重症化を防ぐことができます。

病状の進行段階 症状 注意点
初期 のどの渇き、体の倦怠感、吐き気 日常生活でよくある症状のため見過ごされがち。早期発見の妨げとなる。
進行期 嘔吐、腹痛、意識障害(傾眠から昏睡)、神経症状(手足の突っ張り、震え) 深刻な状態。すぐに病院へ。
高齢者 症状がはっきりと現れにくい。不調を訴えることが少ない。 いつもと様子が違う(元気がない、話が通じない、ふらつくなど)に気づいたらすぐに病院へ相談。

ケトアシドーシス性昏睡との違い

ケトアシドーシス性昏睡との違い

高浸透圧非ケトン性昏睡とケトアシドーシス性昏睡は、どちらも血糖値が非常に高くなることで意識障害に陥る危険な状態ですが、いくつかの点で異なります。

まず、体内で作られるケトン体の量が大きく違います。ケトアシドーシス性昏睡では、インスリンが不足することで体内の脂肪が分解され、ケトン体と呼ばれる物質が大量に作られます。このケトン体は血液を酸性に傾けるため、血液の酸性度を示すpHが低下し、酸中毒と呼ばれる状態になります。これはケトアシドーシス性昏睡の大きな特徴です。一方、高浸透圧非ケトン性昏睡では、ケトン体の産生はそれほど多くありません。そのため、血液のpHは正常範囲内か、酸性に傾くとしても軽度です。

次に、血液の濃さも異なります。高浸透圧非ケトン性昏睡では、血糖値が非常に高くなります。このため、血液中の水分が血管の外に移動し、血液が濃縮されます。高血糖に加えて、血液中のナトリウムや尿素窒素といった物質の濃度も高くなるのが特徴です。この濃い血液の状態が高浸透圧と呼ばれるゆえんです。ケトアシドーシス性昏睡でも高血糖になりますが、高浸透圧非ケトン性昏睡ほど極端な高血糖にはなりません。

これらの違いは、治療方針を決める上で非常に重要です。ケトアシドーシス性昏睡では、インスリンの投与に加えて、酸中毒を改善するための治療が必要になります。高浸透圧非ケトン性昏睡では、水分と電解質のバランスを整えることが最優先事項となります。それぞれの昏睡状態に合わせた適切な治療を行うことで、命を救い、後遺症を残さないようにすることが大切です。

項目 高浸透圧非ケトン性昏睡 ケトアシドーシス性昏睡
ケトン体 産生が少ない 大量に産生
血液pH 正常範囲内か軽度の酸性 低下(酸中毒)
血糖値 非常に高い 高いが、高浸透圧非ケトン性昏睡ほどではない
血液濃度 非常に高い(高浸透圧) 高いが、高浸透圧非ケトン性昏睡ほどではない
ナトリウム・尿素窒素 高濃度 記載なし
治療 水分と電解質バランスの調整 インスリン投与と酸中毒改善

診断のポイント

診断のポイント

高浸透圧非ケトン性昏睡の診断は、いくつかの重要なポイントを押さえることで的確に行うことができます。まず血液検査が不可欠です。この病気では、血液中の糖の濃度を示す血糖値が非常に高くなります。通常は100mg/dl程度ですが、高浸透圧非ケトン性昏睡の場合は600mg/dlから、場合によっては1500mg/dlという非常に高い値を示します。また、血液の濃さを示す血清浸透圧も350mOsm/l以上と高くなります。これは、血液中の糖が増えることで、水分が血管の外に引き出され、血液が濃縮されるためです。

一方で、ケトン体と呼ばれる物質の検査では、陰性もしくはごくわずかに陽性という結果が出ます。ケトン体は、体がエネルギー源として脂肪を分解する際に作られる物質です。糖尿病の別の合併症であるケトアシドーシスではケトン体は陽性になりますが、高浸透圧非ケトン性昏睡では通常、ケトン体はあまり作られません。これが、この病気を診断する上で重要なポイントとなります。

血液検査の結果に加えて、患者の訴える症状やこれまでの病気の経過なども診断に欠かせません。意識がもうろうとしている、体がひどく水分不足になっているといった症状が見られる場合、高浸透圧非ケトン性昏睡の可能性を高く疑う必要があります。特に、糖尿病の持病がある人にこのような症状が見られた場合は、迅速に医療機関を受診することが重要です。

高浸透圧非ケトン性昏睡は、早期に診断して治療を開始することが非常に重要です。適切な治療を行うことで、救命できる可能性が格段に高まります。そのため、少しでも疑わしい症状があれば、ためらわずに医療機関に相談しましょう。

検査項目 結果 解説
血糖値 600mg/dl〜1500mg/dl 非常に高い値を示す
血清浸透圧 350mOsm/l以上 血液中の糖が増えることで水分が血管の外に引き出され、血液が濃縮されるため
ケトン体 陰性もしくはごくわずかに陽性 ケトアシドーシスとの鑑別点
症状 意識もうろう、脱水症状 糖尿病患者にこれらの症状が見られた場合は迅速に医療機関を受診

治療の方法

治療の方法

高浸透圧非ケトン性昏睡という病気の治療は、体の中の水分が不足した状態を良くすることから始まります。そのため、点滴を使って多量の水分を体内に補給します。この時、体液と同じような成分でできた生理食塩水や、その半分程度の濃度の食塩水を使います。これらの点滴によって、体内の水分量と塩分などのミネラルバランスを正常な状態に戻していきます。

同時に、血糖値が高い状態を改善するためにインスリンを注射します。インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞に取り込ませる働きをするホルモンで、高血糖を下げる効果があります。また、血液検査でカリウムの値が低い場合には、カリウムを点滴で補給します。カリウムは、筋肉や神経の働きに欠かせないミネラルです。水分が不足するとカリウムも失われやすいため、適切に補給することが大切です。

これらの治療は、入院して行うことが一般的です。入院中は、医師や看護師が患者さんの状態を注意深く観察し、必要な処置を行います。点滴の量や速度、インスリンの投与量などは、患者さんの状態に合わせて調整されます。また、血糖値やカリウム値などの血液検査を定期的に行い、治療の効果や副作用をチェックします。

高浸透圧非ケトン性昏睡は、重症になると命に関わる危険性があります。そのため、早期発見と迅速な治療開始が非常に重要です。適切な治療を行うことで、多くの患者さんは回復に向かいます。しかし、後遺症が残る場合もあるので、治療後も定期的な検査と健康管理が必要です。

治療項目 目的 方法 注意点
水分補給 体内の水分不足を改善 生理食塩水または半分の濃度の食塩水を点滴 水分とミネラルバランスの正常化
高血糖改善 血糖値を下げる インスリン注射 血糖値のモニタリング
カリウム補給 カリウム不足を改善 カリウム点滴 血液検査でカリウム値を確認
入院管理 状態の観察と必要な処置 医師・看護師による管理 点滴、インスリン投与量の調整、血液検査

予防と対策

予防と対策

糖尿病から引き起こされる高浸透圧非ケトン性昏睡は、命に関わる危険な状態です。それを防ぐには、日ごろからの予防と早期発見、そして迅速な対応が欠かせません。

まず何よりも大切なのは、血糖値を適切な範囲に保つことです。栄養バランスの良い食事を心がけ、適度な運動を続けることが基本です。また、医師の指示通りに薬を服用することも重要です。高血糖の状態が続くと、血管が傷つき、様々な合併症を引き起こす可能性があります。高浸透圧非ケトン性昏睡もその一つです。

加えて、感染症にも注意が必要です。感染症にかかると、体内の水分や電解質のバランスが崩れ、高浸透圧非ケトン性昏睡を誘発する可能性があります。少しでも感染症の兆候を感じたら、すぐに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。

また、こまめな水分補給も重要です。特に夏場や運動後は、多くの汗をかき、体内の水分が失われがちです。意識的に水分を摂るように心がけ、脱水を防ぎましょう。のどが渇いたと感じる前に、水分を補給することが大切です。

高齢の方は、自覚症状が現れにくい場合があるので、特に注意が必要です。定期的に健康診断を受け、医師の診察を受けることが大切です。また、家族や周囲の人も、高齢者の様子に気を配り、異変に気づいたらすぐに医療機関に連絡するなど、早期発見に協力することが重要です。物忘れがひどくなった、反応が鈍くなった、いつもと様子が違うと感じたら、すぐに相談しましょう。早期発見と適切な治療により、重症化を防ぐことができます。

予防と対策